国連気候変動パリ会議、世界が注目する5つの焦点

 

11月29日、パリ市の公共交通が全て無料になった。パリの地下鉄では国連気候変動パリ会議のポスターが随所に貼られている。中国国家主席の習近平氏もフランスに訪れ、パリ会議の開幕イベントに出席する。中国の最高指導者が国連気候変動会議に出席するのは初となる。言うまでもなく重要な会議である。

世界の気候変動対処の重要な節目となるパリ会議で、2020年以降の国際社会がいかに責任を担うかが決まることになる。会議交渉の背後には、各国の利益的な思惑があり、いかに公平で合理的なものにするかが、各国が注目するところである。

焦点一:予定通りに「歴史的」新協議をまとめられるか

「習近平主席が述べる重要な発言は、積極的な推進作用を及ぼすだろう」。29日、中国気候変動事務特別代表で国家発展改革委員会の副主任である解振華氏は、国連気候変動会議中国コーナーでの取材に対し、「各国がそれぞれ満足できる結論に達することを期待している」と述べた。

これまでの国連気候変動会議の流れをさかのぼると、毎回の会議は意見の相違、妥協、コンセンサスの連続だった。1992年に「国連気候変動枠組条約(以下「条約」)」が調印され、1995年から毎年1回、条約締結国大会が開かれている。「条約」は「京都議定書」に発展し、バリ・ロードマップから「コペンハーゲン合意」へ至った。その後、カンクン会議から今年のパリ会議まで、世界は変化し、気候変動会議も進化している。

「パリ会議は重要な転換点となる」。外交部気候変動会議特別代表である高風氏によると、世界の気候変動対応モデルは「京都議定書」の「上から下へ」の強制的排気ガス削減モデルから、「下から上の」モデルへと変化しているという。現在、160カ国以上が「国家自主貢献」文書を提出しており、各国の自信がうかがわれる。中国代表団主席交渉代表、国家発展改革委員会気候司司長の蘇偉氏は19日、パリでの取材に対し、「国家自主貢献」がパリ会議の重要な構成要素となり、各国の気候変動対応への自信と重要な行動を示すものだと述べた。「準備会議の状況から見て、各国の態度は積極的だが、依然として意見の相違も見られる。重要なのは“共通だが差異ある責任”をいかに体現するかだ」。

焦点二:意見の相違を調整し“共通だが差異ある責任”を体現できるか

「まるでカーレースのように、ある車は遠くを走り、ある車はスタートしたばかり。このとき、統一の尺度で車速を制限するのは不適切だし不公平だ」という比喩で、“共通だが差異ある責任”原則の重要性を説明できる。先進国と発展途上国の気候変動に対する歴史責任は異なり、共通だが差異のある責任/公平性/各自の能力などの重要な原則をまとめることが、発展途上国の共通の願いになっている。

国連政府間気候変動専門委員会はかつて、先進国が2020年までに1990年を基準とした排ガス規制を少なくとも25%~40%削減する必要があり、2020年までに毎年、発展途上国に対し1000億ドルの資金援助をすべきであり、同時に技術移転システムを構築するべきであると提起している。「もしパリ会議でこのような共通認識に達したら、本会議は記念すべき会議になるだろう」と解振華氏は述べる。

焦点三:「摂氏2度」目標は具体化できるか

地表温度の上昇を2度以内に抑えること。これは国際社会公認かつ人類の発展に関わる重要な目標である。現在、160カ国以上が2020年~2030年の排出ガス削減目標を提出している。国連環境計画署が最近発表した「排出ガス格差レポート」の計算によると、削減目標を合わせれば約40~60億トンの排出ガスを削減できるとしている。しかし“摂氏2度”に対応する2030年削減要求から見て、依然として120億トン足りない状態にある。

英ロンドン政治経済学院の教授であるニコラス・ストーエン氏は、この目標を実現するために必ず具体的な行動をとらなければならないと指摘する。2050年までに世界の都市人口は35億~60億人に達する見込みで、簡単に見積もって毎年60兆元のインフラ投資が必要となる。もしこの投資が今後15年間、低炭素のインフラで構築されれば、排気ガス削減に大きな貢献をもたらす。蘇偉氏は、行動と仮説にはまだ隔たりがあるものの、そこには巨大なポテンシャルがあり、各国の技術協力の加速が求められると指摘する。また今回の会議において、中国代表団にも中国工程院や各専門の権威が参加しており、彼らがより多くの知恵で貢献することになるだろうと付け加える。

焦点四:先進国の資金的承諾がみられるか

解振華氏は「資金問題はパリ会議が成功するか否かの重要な要素だ」と指摘したうえで、先進国が承諾することを期待する。加えて、これは気候変動に国際的に対応するための政治的な相互信頼の基礎だと述べる。

今年10月に発表された、経済協力発展組織が出版した気候融資レポートでは、先進国が途上国の行動のために提供する公共・民間資金は2014年に618億ドルに達し、2013年の522億ドルより増加した。しかし承諾した1000億ドルの目標とは大きな差がある。

焦点五:中国はどんな貢献ができるか

パリ会議が開催される前、中国とアメリカは気候変動対応のための共同声明を発表している。アメリカは、2025年までに温室ガス排気量を2005年比で26~28%削減することに初めて言及した。かつてアメリカが承諾した「2020年までに2005年比で17%減少」を刷新した。一方の中国は、2030年を排出量のピークとし、2030年までに一次エネルギー全体に対する非化石エネルギーの割合を20%に引き上げるとした。

世界銀行が発表したデータによると、中国のこの20年間近くの累計エネルギー量は全世界の52%を占める。「さらに直近の2年は、52%以上だ」と解振華氏は述べる。世界の総エネルギーの半分以上を中国が消費しているのだ。中国は200億元の「気候変動南南協力基金」を設立し、他の発展途上国を支援していく。

中国はすでに2030年前後となる二酸化炭素排気量ピーク時期を前倒しするとしている。そのほかにも、2030年の炭素強度を2005年基準で60~65%に減少させる計画である。一次エネルギー全体に対する非化石エネルギーの割合を20%前後にし、森林蓄積量も45億立方メートル増加させようとしている。

閉幕したばかりの中国共産党第18期第5回全体会議では、「緑の発展」など五大理念が提出された。蘇偉氏は、中国では7つの省市で排ガス取引の試験業務が行われており、2017年に全国統一の排ガス取引市場をスタートさせる予定だと述べる。中国経済構造のモデルチェンジとバージョンアップに伴い、省エネや排出削減のポテンシャルも大きくなっていくと指摘する。

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年12月1日

 

 
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