木村 麻莉子
「フィンランドは政治的清廉潔白度が世界一で、人は正直だから好きだ。中国とは正反対の国だね。」と、フィンランドで出会った日本人の友だちが言った。私はこの夏、台湾とフィンランドに行く機会を得た。どちらも素晴らしい所だった。フィンランドでは、美しい建物や自然に心動かされた。フィンランド人の友だちは、サウナナイトやパーティーを開いてもてなしてくれた。
しかし、それ以上に温かいおもてなしを受けたのは、台湾の方だった。私が中国語を勉強していることを知ると、台湾の友達は、単語カードを作って持ってきてくれ、発音練習をしてくれた。バスの中でも、chīやrèの発音が出来るまで、何度も何度も付き合ってくれた。毎日、色んな友達が、昼食と晩御飯におすすめのお店につれて行ってくれ、どんな料理があるのか丁寧に教えてくれた。観光ガイドもしてくれた。晩御飯をおごってくれ、帰国の日にはお土産までくれた台湾の友達もいる。人は親しみやすく、優しかった。お土産で高山茶を買った店の店主は、「学校帰りに、いつでもお茶を飲みに寄っていいよ」。と声をかけてくれた。「中国は世界一、人情の厚い国だ。」と、私はフィンランドで出会った日本人の友達に言った。友達はそれを聞いて、驚いていた。
内閣府が昨年12月20日付で発表した、「外交に関する世論調査」では、中国に「親しみを感じない」とした回答が83.1パーセントで、調査以来最悪の数値を更新したと言う。フィンランドで出会った日本人の友達のように、中国の暮らしや文化を知らず、日本への抗議活動や領土問題、歴史認識の報道を見て、偏ったイメージで中国を捉えているからだ。日本と中国がお互いに親しみの感じる国になるためにはどうすれば良いか。その鍵は、自分にもあると思う。
私の通う東北大学には、たくさんの中国人留学生がいる。中国の文豪、魯迅が留学していたことの影響が大きいらしい。その魯迅が仙台を去り、帰国した後も忘れず、師として敬愛の念を捧げた人に藤野先生がいる。藤野先生は魯迅の解剖学の先生であり、彼のノートを全部朱筆で添削し、色々面倒を見てくれた。このことは、祖国を離れ、異国の土地で自分の他に同胞もない魯迅を感動させた。「かつて、軍国主義の日本は、どれだけ中国に対して害をもたらしたか。魯迅は、その罪悪を心から憎んだが、一人の日本人とは、常にふれあい結びついていたのだった。」新村徹の『魯迅のこころ』に書いてある。
魯迅が藤野先生に感銘を受けたように、日本を訪れた中国人が日本人の親切さや街の美しさに感銘し、日本人と日本を好きになってもらいたい。今の時代、日本を訪れる中国人は多く、私たちの行動が国家の評価につながる。東北大学にもたくさんの中国人留学生がいる。初めて日本に来た人は、日本のことを知らない。中国人留学生にバスの乗り方を聞かれた。整理券に書いてある番号は何か、バスの中の掲示板に書かれている番号は何か、バスの掲示板の文字はなぜ六と九は漢字で書かれているのか、運賃はどうやって知るのか。台湾で、私をもてなしてくれた台湾の友だちや魯迅を愛した藤野先生と同様に、思いやりの気持ちを持って中国人留学生に教えた。
以前、中国人留学生と日中友好に関して話している時、「日本に行く中国人は多いけど、中国に行く日本人、特に若者は少ない。中国には美しい自然があるから見においで。日本人も中国のことを知って欲しい。」と、言われた。実際に中国に行き、この目で見て確かめて、中国に対して正しい理解を身に付けることも鍵であると気づかされた。
日本と中国の交流の歴史は2000年以上もある。今、一部の人が互いに反感を持つが、実際に交流する場になると、お互いに尊重しあう。この先、人と文化交流が盛んになり、お互いに親しみを感じる国になって欲しい。世界一、人情の厚い、隣人なのだから。
人民中国インターネット版 2015 年12月 |