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私にとっての中国

 

岸本 美樹 

私の初めての海外は高校生の時、中国だった。私はこの時に中国に行ったことがきっかけで大学で中国について学ぶことを決めた。

その初めての中国訪問の目的は、囲碁の交流大会のためであった。幼い頃から囲碁を習っていた私は、ある大会で入賞を果たし、囲碁の本場である中国で福岡県代表として現地の選手達と対局する交流大会の参加資格を得た。

当時、私は中国に対してあまりいいイメージを持っていなかった。というのも、私はずっと北九州市に住んでいて、光化学スモッグやPM2・5の影響で運動会が中止になったり、頻繁に訪れる中国人観光客が夜に街で大きな声で話したりしているところを見たりするという経験が何度もあったからだ。また、連日流れるニュースや新聞などのマスメディアは中国に関連する報道で日中関係の悪化や、中国人観光客のマナーの悪さについてなど、中国にマイナスのイメージを持たせるような報道ばかりをし、私は今まで一度も行ったことのない国であったにもかかわらず、中国人はみんなそうなのだという意識が自分の中にうえつけられていたのだ。

そんな中国に対していいイメージを持っていなかった私でも、日本人が持つ中国のイメージに驚いたことがあった。それは中国に行く際、同行してくれた県の職員の方がPM2・5の対策としてマスクを支給してくれたのだが、そのマスクがとても大げさなものだったということである。最近はマスクも機能性を重視した超立体マスクなどが販売されているが、支給されたそのマスクはそれよりも更に大きく、硬く、つければ顔の半分以上が隠れてしまうようなものだった。確かに、それはとても機能性の優れたマスクであって、県の代表として中国に行く私達の安全を考えての支給だったということは理解できたのだが、街につけて出歩くには不向きな上、室内競技である囲碁をしに中国に訪れた私達にこれほどまでに大げさなマスクが必要なのだろうかと感じ、「中国の大気は本当に汚れているそうです。」と話す職員の方の説明を聞きながら、本当にこのマスクをつけなければいけないほどなのか、という疑問が私の頭に浮かんでいた。

私は中国に5日間滞在したが、予想通りテレビのニュースで見るようなひどい黄砂の日はなく、普通のマスクで十分で、その大きなマスクをつけた日はなかった。

もうひとつ中国にいて印象に残ったことがある。それは中国の選手と対局するために、私達と同行してくれていた中国人の通訳の方が、日本語で私達に話しかけてくれている時はとても優しく控え目な声であるのに、中国人の人と中国語で会話している時は人が変わったかと思うくらい声の音量や話す速さが上がっていたことだ。当時は不思議だったが、今は中国語を勉強していて、中国語で会話する時は日本語の時と比べて口を大きく開けてお腹から声を出す必要があると知った。

私が中国に滞在したのは5日間というとても短い期間だったが、私の中の中国に対するイメージは大きく変わっていた。私は、国や人というものは、実際に行って、触れて、理解しなければ、分からないものなのだと感じた。大気汚染がひどい、観光客が大声で会話していてうるさい、などといったマスコミの報道は一部では正しいが一部では間違っている。中国という国がどんな国であって、そこにはどんな人が住んでいるのか、などということは、テレビでわずかな時間に流れる映像や新聞の狭い紙面ではとても全てを表現することなどできない。

私はこれから大学で自ら学び、体験することを通して隣国・中国をイメージや狭い見識からでなく、多角的に理解しようと努力し、交流していくことが重要であると思う。

 

人民中国インターネット版 2016年2月

 

 

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