「二人っ子時代」と向き合う

 

──2人目は産む?産まない?

二人っ子政策が正式に施行された今、出産の主役、出産可能年齢にある女性はどのような選択をするのだろうか?

女性雇用への影響が心配

趙菲菲(仮名) 34歳、結婚歴4年、子どもはなく産むつもりもない。

北京の民間企業で働く趙さんは「現在の中国の制度や仕組みの下で、私はこの政策には賛成できません」と話す。「なぜかというと、社会は女性が2人目の子どもを産むという変化にすぐには対応できず、関連の福祉制度も追いつかないため、女性、とりわけ新卒者の就職に大きな影響を及ぼすのは目に見えているからです」。趙さんは10年余りの仕事経験を持ち、会社では管理職の立場にある。優秀なキャリアウーマンとして、彼女は女性にとって仕事が「独立と尊厳を獲得する能力」だと考えている。

「私が管理している部門のスタッフ定員は5人ですが、一昨年から女性スタッフが相次いで妊娠、出産休暇を取ったため、ずっと欠員状態で、仕事もたまっています。私は彼女たちの仕事を肩代わりしているため、猫の手も借りたいほどです」と趙さんはため息をつく。「それにこれまでのところ、25歳から30歳の女性スタッフの第1子出産後離職率は100%です。正直に言って、もう怖くなりました。今後は採用も慎重にならざるを得ません」

二人っ子政策が発表された時に、趙さんがまず思ったのは、職場の女性差別がさらに激しくなるのではということだった。「女性社員にとって、以前は第1子を出産し終えていることは優位性だったが、現在は第1子を出産しても第2子があります。会社は雇用コストを計算しなければなりません」。会社の管理者は、採用時に二つのことを考慮するようになるかもしれないという。一つは女性の新卒を採用しないことで、もう一つは女性を重要なポストに就かせないことだ。

同じ女性として、趙さんは子どもを産むつもりはないが、出産する女性の選択を尊重し、理解し、女性の出産の権利も断固として守っている。会社の管理者として、「二人っ子政策が全面的に施行されると同時に、国と社会は出産意欲のある女性が職場で差別を受けないよう、女性と会社の利益が損なわれないことを保証する枠組みを提供すべきだ」と考えている。

趙さんは「配偶者として、男性にも女性の出産休暇と同じ長さの育児休暇を強制的に取らせるべきです。妻の出産に合わせて男性も休暇を取らなければならないという平等な制度の下でこそ、男女の雇用は公平になります」と話している。

産みたいが迷っている

張文静(仮名) 33歳、結婚歴5年、3歳の子どもがおり第2子出産には迷い。

北京の外資系自動車メーカーに勤務する張さんは、夜11時ごろまで残業することが少なくない。電話でインタビューできたのも深夜だった。「子どもは1人でもう十分です。心配事が多くて、2人目を産む気にはなれません」と、電話口から疲れたような声が返ってくる。張さんの夫はホームシアターを設置する会社を経営しており、彼の帰宅時間もとても遅い。息子の牛ちゃんは、湖南省に住む趙さんの母に預けている。

子どもの成長には両親がそばにいることが最も重要だとは分かっているが、現実には無理だ。夫婦は2人とも湖南省の出身で、北京で長い間懸命に働いてようやく自分の事業を持ったのだ。2人は結婚後60平方㍍の部屋をローンで買った。夫婦はローンの返済や事業の発展に奮闘しているため、子どもの面倒を見る時間が持てない。張さんはベビーシッターを雇うことも考えたが、月6000元から7000元の高額の費用に加え、見知らぬ人に子どもを預けたくないという気持ちからこの選択肢を排除した。

湖南省常徳市の市街地で、女性が保養しながら、スマホで第2子出産関係の情報を調べている。第2子出産完全自由化政策の情報が発表されてから、多くの女性が異なった方法で第2子出産の準備に取りかかっている(東方IC)

現実のやるせない事情は張さんを疲れさせるが、一方で母親として牛ちゃんに申し訳ないとも感じている。実は、張さんは子どもが好きだ。「どちらも一人っ子ではないので、今回の二人っ子政策は、私たちにとっていい話のはずなのですが、今のような状況でどうして第2子が産めるでしょう?」と張さんは戸惑っている。前述した原因以外にも、2人目の子どもが自分のキャリアを終わらせてしまうかもしれないという大きな心配もある。「最初の子の産休が終わって職場に復帰した後、第一線ではない部署に異動になり、3年間冷遇されたのです」と彼女は振り返る。

しかし、張さんは「国が、第2子を出産する母親に半年間の産休を取れるようにしたり、企業が産休を取る社員のポストを保留するよう規定したり、第2子を持つ家庭の住み替えに対してローンの優遇措置を打ち出すなど、着実で役立つ福祉措置で家庭を応援してくれるなら、私も産みたいと思います」と、心配と同時に意欲も持っていることを明かしている。

自分も成長できる子育て

林慧(仮名) 36歳、結婚歴8年、6歳の長男に続いて第2子を間もなく出産。

北京の国有企業で働く林さんは「私と主人はこの子に心から期待しています」と話すなど、第2子の誕生を心待ちにしている。彼女は仕事がよくでき、長年の努力を経て現在の部署の責任者に昇進した。しかし、彼女には家庭を重視するという伝統的な一面もある。「仕事と家庭が両立できないなら、私は家庭を優先します」と、林さんは幸せな家庭が何より大切だと考えている。

2014年に「夫婦どちらかが一人っ子ならば第2子の出産を認める」という政策が打ち出されると、林さんと夫は第2子を産むことを決めた。夫は一人っ子だが林さんに妹がいるため、以前の政策の下では第2子の出産は認められなかった。「私も夫も家族は多い方が家庭らしいと考えており、ぜひもう1人ほしいと思っていました。静かで寂しい暮らしは嫌なのです」という夫婦は、政策が発表されるとすぐに第2子出産の準備を始めた。

「現在、若い親の多くが第2子を産むかどうかを悩んでいます。金銭や時間、気力がない、1人目の子育てでもう疲れ果ててしまって、2人目ができたらどうなってしまうのかなど、さまざまな心配をしています。でも、私の考えは違います。実は、私は長男の子育てから、第2子を産む勇気をもらったのです」と林さん。

林さんの息子豆ちゃんは今年6歳になる。自分の子育て経験を振り返って、彼女は「息子のそばで一緒に成長できたのはとても幸せです。子育てによって、私も多くのものを得ました」という。例えば、息子に物語を読み聞かせる時だ。息子はいつも彼女をまねて学んでいくため、一つの物語を何十回も読んであげたこともある。「それによって、私の忍耐力も鍛えられました。私の朗読に情がこもっていないと、子どものまねもそっけなくなりますが、声に感情を込めて真剣に読むと、豆ちゃんは私のイントネーションもまねて、とても生き生きと話すことに気付いたのです。私が言いたいのは、それによって子どもの成長を感じられるということです。子どもには魔法の力があります。心血を注いだら、子どもは一層の成長を見せてくれます。同時に、この愛に満ちた相互作用によって自分も成長できます」と話す林さんは感慨深げだ。

子育ての過程で、林さんは大きな達成感を得ると同時に、自信も得たという。豆ちゃんの誕生後、仕事以外の時間はほぼ全て育児に占められた上、しなければならないことは倍以上に増えた。それにもかかわらず、林さんは全てにうまく対応し、家事も以前と変わらずこなしている。自分の潜在能力の大きさに彼女は初めて気付いた。「細かな家事を一つ一つ処理できるなら、仕事は言わずもがなです。豆ちゃんを産んでからより根気強くなり、勇気も出ました。今は、私を困らせるものは何もありません」。この自信が、彼女に第2子出産の勇気を与えた。彼女は、もうすぐ誕生する子どもと共に、自身もさらに成長することを期待している。

 

 

人民中国インターネット版

 

   <<   1   2  

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850