2億人を照らす「都市の夢」

 

 

──制度改革は高速レーンに

都市で「漂」生活を送る人々が居住証を有する「準市民」になるのはまだとても難しいことだが、では「準市民」が正式の「市民」になるまでにはどれくらいの距離があるのだろうか? 外来者が名実ともに都市の「主人」になる機会はあるのだろうか?

居住証制度の施行と同時に、北京や上海などの大都市も外来者の現地戸籍取得をサポートする新たな改革を試みている。

06年、27歳だった劉均さんは上海のある外資系企業に就職し、間もなく上海市の居住証を取得した。「でも、居住証は正式な上海戸籍とは違い、定年後はやはり故郷に戻って老後を過ごさなくてはならないと聞きました。自分の将来についてはいささか不安でした」と劉さんは振り返る。

09年、上海市は「居住証を戸籍に転換する規定」を発表した。これは劉さんに「上海人」になるという希望を与えた。規定によると、上海の居住証取得満7年、この間に上海で社会保険の支払いと個人所得税の納付満7年、中級職称以上の資格を持つなど五つの条件を満たせば、上海戸籍を申請できる。

13年に居住証所有期間が7年間になると、劉さんはすぐに戸籍を申請した。1年後、劉さんは願い通り上海の戸籍を手にし、真の意味で「上海市民」になった。「この制度は公平だと思います。権利と責任の平等、段階的な権利の付与が実現しています」と彼は喜びを語っている。

上海に溶け込みたい外来者の一人、葉辰さん(31)は戸籍申請の必要条件である中級職称を得るため、給料の安い仕事を5年半「耐え忍んで」、ようやく中級職称の資格証明書を手に入れた。今彼は、戸籍申請の関連資料提出のため忙しい思いをしている。「全体的にいうと、この制度に賛成です。戸籍という壁に穴を開け、希望を見せてくれました」と笑顔で話す葉さんは、戸籍を取得したらマイホームを買って彼女と結婚するつもりだという。30代になったばかりの彼にとって将来の生活は期待に満ちている。

上海とはいささか異なり、北京は「ポイントによる戸籍取得(14)」という政策を採用している。外来者の学歴、職称、北京在住期間、北京での社会保険料納入年数などの内容をポイント化し総得点を算出する。毎年、北京市は戸籍申請の基準ポイントを公布し、これをクリアした外来者のみが戸籍を申請できるシステムだ。北京と上海の措置から、都市管理者が、地方出身者の都市福祉ニーズと都市人口コントロールの間に、合理的に発展できる均衡点を見つけ出そうとしているのが分かる。

このほど、北京市は今後5年間の発展計画を発表したが、その中で20年に北京の常住人口を2300万人以内にコントロールすることが示された。つまり、北京の人口増加余地は今後5年間に150万人弱しか残されていないことになる。平均すれば毎年30万人以内だ。このため、北京で暮らす外来者の北京戸籍をめぐる競争は一層激化することが予想される。

これについて、国務院発展研究センター社会発展部の王列軍副研究員は「ポイントによる戸籍取得制度と居住証制度は、いずれも戸籍制度改革措置の一つだが、居住証で享受できる福祉を徐々に増やせば、戸籍そのものの価値と魅力は特になくなるだろう。そうすれば戸籍改革は成功に近づく」としている。

昨年10月、5中全会で、中国の今後5年間の発展に関する「13・5計画提案」が発表された。その中には「人間本位を核心とする新型都市化を推進する。戸籍制度改革を一層推進し、農業から転じ都市で就職・居住する人々が家族ともども都市の戸籍を取得し、都市住民と同等の権利と義務を有するよう促す。居住証制度を実施し、基本的公共サービスが常住人口全てに行き渡るよう力を入れる」という内容が盛り込まれた。今年に入って間もなく、中国の3分の2以上の省・自治区・直轄市が居住証から戸籍取得へ移行する制度設計を明確に打ち出した。各地で考え方に異なる点があっても、中国の戸籍制度改革はすでに高速レーンに入っている。これは、中国が現在推し進める「人間本位」の都市化建設と社会の公平化追求の具体的な実践だ。

【資料】

中国戸籍制度改革は三つの段階で進められてきた。

第1段階:中国戸籍制度の基本的形成と発展段階(中華人民共和国成立初期から1978年まで)。49年から57年まで中国は短期間の住民戸籍自由移転期を経験した。58年からの重工業発展重視戦略、社会主義計画経済と社会資源配給制度の実施に伴い、都市部と農村部で取り扱いが異なる二元化戸籍制度が打ち出され、都市と農村の間の戸籍移転に厳しい規定が設けられた。

第2段階:小都市戸籍制度改革が不断に推し進められた時期。「暫住証」制度の実施が始まった(78年から20世紀末)。78年以降、改革開放戦略の実施や社会主義市場経済の発展に伴い、人口の移動がますます頻繁になった。85年、「都市部一時居住人口管理に関する暫定試行規定」が発表された。流動人口に対する「暫住証」を主とする管理方法が定められた。暫住証制度は都市部と農村部の住民の自由な移動をより容易にしたが、流動人口の権益保護には改善の余地が残された。

第3段階:戸籍制度改革を全面的に深化、居住証制度の改善を絶えず模索(21世紀初頭から今日まで)。2000年から、中国政府は都市と農村の二元化体制の改革を提起し、外来の労働者に対する不合理な制限を撤廃した。地方から来た人々の社会権益を保護する居住証制度が徐々に大都会から全国範囲へと広げられている。現在、居住証制度と各地の戸籍政策を基礎に、流動人口の公平かつ合法な権益享受を保障する戸籍制度改革が進められている。

 

人民中国インターネット版

 

 

   <<   1   2  

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850