菅原 悠希
以前の私は、多くの日本人がそうであるようにメディアの偏った報道に影響され、中国に対して漠然としたマイナスの印象を抱いていた。中国語を履修して以来中国人と触れる機会が増え、特にこの半年間、大学での日中交流やチューター活動、シドニーでの短期留学を通して、沢山の中国人と知り合った。また、戦後70年の節目の今年、70年談話や中国軍事パレードがマスコミで騒がれており、この「隣人」について考える良い機会となった。このように様々なきっかけが重なり、日中関係や両国の歴史問題について学び始めたことで、私の中国に対する見方は大きく変わった。
映画は、単なる娯楽ではなく教科書で学べない大切なことを教えてくれる。ここで、日中の歴史問題について考えさせられた一つの映画を紹介したい。タイトルは「南京!南京!」。「南京大虐殺」を如実に表現したノンフィクション映画である。モノクロの映像や淡々と続く戦闘シーン、リアルな南京の街並みが、当時の残酷な虐殺をありのままに表現しており、私は大きな衝撃を受けた。真実を世界中の人に伝えたいという陸川監督の熱い思いが伝わった。この映画の最大の特徴は、ある一人の日本兵の目線で話が展開し、彼の苦悩や葛藤、優しささえも描いているということである。この点で、日本人を感情のない残虐な「鬼」とし、中国軍の勇ましさを謳歌するばかりの抗日映画とは明らかに違っていて、しかしだからこそ、多くの人に良くも悪くも衝撃を与えた。この映画を受け入れようとしない中国人も少なくない。近年中国人による対日抗議が報じられていたように、「彼らの日本人に対する認識は依然として『鬼』に止まり、現在の本当の日本に対しては全く耳を貸さない」と中国の友人に聞いた。しかし、「南京!南京!」に出演した江一燕が「日本の若者に72年前の罪を背負わせるのは不公平だ」と言ったように、日本の犯した残虐な行為に対して正しい認識を持ち、友好関係を築こうとしている中国人が増えているのも事実である。杭州で催された映画の試写会では、日本人俳優に対して称賛の声が多くの観客からあがったという。
「南京!南京!」が映画として成功したかといえば、必ずしもそうではないが、過去の苦難をありのままに世界に発信し、人々の心に刻み付けるという点で、この映画は大きな意味を持つ。実際、日本の教科書や映画には歴史美化されているものが多いと感じる。我々は、このような虚構の歴史や、メディアの情報を鵜呑みにして他者を批判するような不毛なことをしてはならない。歴史認識と国民感情を分けて考え、互いの良さを認め合うべきだ。その一つの手段としてこの映画は大変優れているため、多くの人にこの映画を見てほしいと強く思う。当初この映画は日本では上映できなかったが、陸川監督の強い希望と、「史実を守る映画祭実行委員会」の努力により、つい最近小範囲に上映することができた。このような映画は終点ではなく、より正しい認識を待たせる起点として、今後も増えてほしい。
ここで少し話を変えて、私自身の話をしたい。私がこれまでに知り合った中国人たちからは反日思想など全く感じなく、むしろ、日本に興味をもって熱情的に学んでいる彼らの姿に感銘を受けた。一部の日本人が行った過去の行為に対する非難を日本人全体にぶつけるのは間違っているし、我々日本人も‘中国人’と一概に評価してはならない。しかし、訪日の中国人観光客は増えている一方で、訪中の日本人観光客は激減しているのが現状だ。我々日本人は、史実を正しく認識した上で中国人との交流を積極的にもち、日中友好への一歩を踏み出さなければならない。
現在私は、身の回りに見える日中友好を広げたいと志し、中国語圏への交換留学を目標に日々勉強中だ。この作文を書いたことで、自分の考えを整理すると同時に、自分がこれから何をしたいのか改めて確認できたように思う。
人民中国インターネット版 2016年3月 |