フィリピンの南海政策、自主性は残されているか

 

フィリピンのドゥテルテ大統領は5日、南中国海仲裁案でフィリピンに有利な裁決が出た場合、戦争ではなく中国と交渉する意向があると表明した。フィリピン外相は、一部の外国政府がフィリピンに有利な仲裁結果が出た場合により強硬な姿勢を示すことを願っているが、「この提案に反対する」と表明した。また「裁決がフィリピンにとって有利であれば、何が起きるか」という、より重要な問題についても言及した。

南中国海仲裁案は、最も影響力ある国際的な事件の一つとなっており、一般的な国際仲裁への注目度とは比べようもない。南中国海のいくつかの島礁がどのような海洋権益と関わるかではなく、この仲裁が大国の地政学の駒になり、南中国海情勢が今回の仲裁によりかつてないほどエスカレートする恐れがあることが注目されている。

仲裁の違法な性質は、米国と日本などの同盟国の支持によって変わるものではない。中国が南沙諸島の主権を持つことを実質的に否定する裁決が下されれば、中国がそれを受け入れることはない。主権を守るためどのような課題を克服し、どのような犠牲を強いられようとも、中国はためらわずこれを見据え、受け入れるだろう。

米国が勢力を集め南中国海における中国への軍事的プレッシャーを強化しようとも、中国社会は政府が国の各種軍事能力を動員し対応することを支持するだろう。そうなれば、南中国海が世界で戦略的に最も危険な地域になることもありうる。これは中国人が願わないことだが、外部勢力がこのような局面を押しつけるならば、国も民族も後退することはない。

中国が領土主権を守っているため、問題のこの性質が厳かに浮かび上がっている。戴秉国氏が指摘した通り、我々は米国の空母を恐れないばかりか、空母より恐ろしい米国の戦略兵器であっても尻込みすることはない。

中国は無論、米国が自宅の玄関前で戦略的駆け引きを展開することを望まず、カリブ海でやってもらった方が当然よろしい。しかし不幸なことに、米国はこの厳しい局面を南中国海で展開した。

米国の南中国海における戦略的目標は、中国台頭の戦略的空間を狭め、中国の海洋進出の犠牲を拡大することだ。フィリピンやベトナムなどは、米国のこれらの目的のため利用される。両国の中国との衝突は、米国の利益に最も合致する。南中国海が世界の危険地域として固定されるに伴い、各種戦略的要素がここに集まるようになる。そうなればフィリピンは自主性を手にし、自国の意志により中国との関係を調整しようと思っても、それは難しくなるだろう。

海外には、仲裁案に軍事的プレッシャーをかけ、西側の輿論が一体となり中国に圧力をかけるという幻想がある。彼らはベトナムやフィリピンが圧力を受け崩壊するか考えるべきだ。なぜ中国が服従を強いられる側なのか?領土係争には、たいてい2つの手段しかない。一つ目は戦争、二つ目は交渉と協議だ。圧力で結果が出た例などあるだろうか?中国は交渉により多くの周辺諸国と領土問題を解決している。我々は他国を恫喝しておらず、圧力や恫喝を受け入れることもない。

アキノ政権は利口ぶり、米国と協力し仲裁案をこしらえたが、実際には中国と係争を解決する自主性を南中国海の大国の駆け引きという渦の中に捨てており、自国を束縛している。

ドゥテルテ大統領は、中国との関係改善の願いを何度も示しているが、その行動には限りがある。フィリピンはすでに操舵室を出ており、米国が舵手になっている。

中国はドゥテルテ大統領が主導権を少しでも取り戻し、フィリピンの実益を重視し、中国との交渉に戻ることを願っている。しかしドゥテルテ氏がどれほどできるかに関して、多くの中国人学者は楽観視していない。

米国が南中国海問題で、中国と理に基づき話し合うことはない。西側輿論は中米のすべての係争において、ついつい米国側に立っている。長期化する見通しの南中国海の大きな駆け引きを、いかに米国と展開すべきだろうか。中国人のこの概念は、徐々に明瞭になってきている。

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年7月8日

 

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