南中国海仲裁裁判所、その経緯を整理する |
フィリピンのアキノ政権が一方的に申し立てた、南中国海仲裁案のいわゆる仲裁結果が12日、発表された。これは中国によって「最初から最後まで法律の衣を被った政治的茶番劇」と批判された。南中国海仲裁案仲裁裁判所の経緯を整理すると、中国側が「政治的茶番劇」と批判するのも無理はないことが分かる。 国際的な法廷にあらず 国連は13日に公式ウェイボーを使い、オランダ・ハーグ平和宮にある国際司法裁判所が国連の主な司法機関であり、平和宮の別の「入居者」である常設仲裁裁判所は国連とは何の関係もないことを強調した。 南中国海仲裁案のいわゆる裁決結果が12日に発表されると、多くの人は裁決がオランダ・ハーグで下されたことから、南中国海仲裁裁判所が国際司法裁判所に属する「国際的な法廷」と勘違いした。実際には国連が説明しているように、南中国海仲裁裁判所と国際司法裁判所の間には何の関係もない。 南中国海仲裁裁判所と常設仲裁裁判所の関連性も低い。1899年に創設された常設仲裁裁判所には「裁判所」という三文字があるが、真の常設裁判所ではなく、紛争解決にサービスを提供する国際組織だ。中国を含む100以上の加盟国がある。 フィリピンのアキノ政権は2013年1月、中比の南中国海の係争をめぐり一方的に仲裁を申し立てた。時の国際海洋法裁判所長、日本国籍の柳井俊二氏がフィリピン側の申し立ての受け入れを決定した。5人からなる南中国海仲裁裁判所が同年6月、中国側の強い反対を顧みず設置された。その後、常設仲裁裁判所が本件の事務局として選ばれた。 中国の劉振民外交副部長は13日の記者会見で、「常設仲裁裁判所は南中国海仲裁案の事務を担当し、仲裁裁判所は法廷審問で常設仲裁裁判所のホールを使用した。両者の関係はそれだけだ」と述べた。南中国海仲裁裁判所と国際司法裁判所に何の関係もないことは明らかだ。常設仲裁裁判所は仲裁に行政サービスを提供するだけであり、南中国海仲裁裁判所は絶対に国際裁判所ではない。 観点を変えた専門家 南中国海仲裁裁判所のいわゆる裁決結果によると、その仲裁人はガーナ、フランス、ポーランド、オランダ、ドイツの出身者だ。 海洋法に詳しい中国海洋法学会の黄碩琳副会長は中国新聞社のインタビューに応じた際に、「仲裁に参与した5人には、国際海洋法裁判所の裁判官と元裁判官が含まれるが、うち4人が欧州出身だ。1人のガーナ国籍の裁判官も欧州に長期滞在している。彼らは南中国海の実情とアジアの複雑な地政学を理解していない。さらに深刻なのは、12日に発表されたいわゆる裁決結果が、これらの専門家が持っていた観点と逆転したことだ」と述べた。 「一部の専門家は南中国海の10以上の天然の島を島嶼と認定できることを知りながら、仲裁の際にはこれらの島嶼を一律否定した。これは非常に驚きだ。いわゆる裁決結果の公正性が疑われる」 黄氏はまた、国連が国際司法裁判所の仲裁費用を負担するのと異なり、南中国海仲裁案の費用は当事者である双方が負担すると指摘した。「中国側の断固反対により、フィリピンは2人分の金を出した。彼らはフィリピンの金を手にしながら仲裁したが、これは最終的に一方に肩入れし事実を無視した、いわゆる仲裁結果と大きく関連している」 5人だけの意見 中国側は、異論の多い不公平な南中国海仲裁裁判所が国際法を代表せず、世界の法治と正義を代表することもなく、いわゆる裁決結果が「いかなる法的拘束力」も生まないことを強調してきた。黄氏は、いわゆる裁決結果は「5人だけの意見」と見ている。この臨時でかき集められた、疑わしい点ばかりの素人芝居に、どのような代表性と権威、それから信頼性があるというのだろうか? 仲裁案、それによる悪意ある喧伝と政治的操作により、世界の法治に法律違反、規則破壊、悪影響という典型的な悪例を残した。これは南中国海問題を、緊張と対抗の激化という危険な境地に引きずり込んだ。黄氏は「南中国海仲裁裁判所は、中国が国連海洋法条約締約国として、領海線をめぐる係争を排除する声明を発表したこと、それから中比が協議により南中国海の係争を解決することで合意したことを無視した。逆に南中国海の仲裁を中国側に押しつけることで、国連海洋法条約の非常に悪い先例を作った」と指摘した。 黄氏は「いわゆる裁決結果は中国側の主張を悪意を持って無視し、完全にフィリピンに肩入れしている。これは南中国海情勢を乱すだけで、中比の係争解決に資することはない。そのためこの5人の意見は国際社会を代表せず、法的拘束力を持たない是非を混同した意見でしかない」と強調した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年7月14日
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