南中国海問題で方針を急転換した米国、理由は?

 

中国の王毅外交部長は25日夜、ケリー米国務長官との二国間会談を終えた後、南中国海問題について協議したと記者団に明かした。ケリー長官は、米国はフィリピンが一方的に申し立てた仲裁案の内容に特定の立場を持たず、フィリピンが中国との対話を回復し、二国間対話・交渉により現在の問題を解決することを明確に支持すると表明した。

米国はこれまで南中国海問題で策を弄し続けてきた。航行の自由を口実に空母打撃群、戦略爆撃機、戦闘機、電子戦機などを南中国海に派遣しており、さまざまな場において中国に違法な南中国海仲裁案を受け入れるよう求めており、さらには南中国海問題を国際化させようとしている。上述した声明は、これまでの政策から急転換したと言える。これにはどのような原因があるのだろうか?筆者は次のように考える。

まず、中国の毅然かつ断固たる反応により、米国は南中国海が好き勝手に振る舞える場でないことをはっきり認識した。南中国海の仲裁結果が出る前後、中国はその違法な性質を明らかにし、かつロシア、インド、カンボジアなど90数カ国の理解と支持を得た。中国海軍・空軍は今月5日から11日にかけて南中国海地域で軍事演習を実施し、非常に適切なタイミングで日増しに成長する武力を見せつけた。有名な海洋権益学者の胡波氏は、「東アジアの海域において、中米双方の取り組みの程度には明らかな差がある。米国が注げる力は限りがあるが、距離的に近い中国は最も優秀な兵力のほぼすべてを集結できる」と指摘した。つまり米国の第7艦隊とその太平洋司令部が直面しているのは、中国人民解放軍のミサイル部隊、空軍、海軍などによって構成される総合的な力だ。中米の総合的な実力差の縮小、中国軍の作戦効率の向上に伴い、長期的に見ると米国は同海域における優位を維持しがたくなる。今回の軍事演習は、このような見通しをこれ以上はないほど明らかに示した。この情勢下、米国の立場がやや軟化した。

次に、情勢の変化により米国は従来の立場の見直しを強いられた。米国は先ほど、南中国海問題をめぐり中国を念頭に置く行動を続け、暗雲が立ち込めようとしていた。ところが間もなく、情勢に急展開が生じた。まずロシアとインドは南中国海問題について中国と共同声明を発表した。それから南中国海の仲裁結果が発表された後、数十カ国が共同声明を出しこの結果に反対を表明した。ASEAN外相会議にいたっては、南中国海の仲裁結果を直接「無視」した。日本など少数の国を除き、米国の南中国海問題に関する立場は孤立に陥った。これは事前に想定できなかったことだ。この厄介な局面を迎え、米国はこの問題にこだわり続ければ、米国のイメージをさらに損ねることになると認識した。損切りの心理により、米国は南中国海問題の横暴なやり方を引っ込め始めている。

それから、同盟国の「裏切り」により、米国は南中国海仲裁案の結果について、大げさに騒ぎ立てられなくなった。周知の通り、フィリピンは米国のそそのかしにより南中国海問題の違法な仲裁を申し立てた。しかしながら新たに就任したドゥテルテ大統領の同問題に関する観点は、本件を起こした張本人のアキノ前大統領とは異なる。ドゥテルテ大統領は、対中関係の改善により外部の安全環境を改善でき、さらに中国からの投資を獲得し、差し迫った国内問題に対処する余裕が生まれると判断し、中国に友好的な姿勢を示した。大統領選では、フィリピンは中国により温和な態度を取ることができると述べた。中国の趙鑒華大使と会談し、中国が就任後初の外遊先になると強調し、中国が故郷のミンダナオ島で鉄道を建設することに期待するなどと述べた。一方で米国がフィリピンに提供している経済援助は微々たるもので、数千万ドルのみという説もある。これは2014年度の貧困率が54%、失業率が25.4%のフィリピンにとっては、焼け石に水だ。そのためフィリピンは黄岩島で漁船の闖入という小さな動き以外、南中国海問題でさらなる行動に出ていない。ドゥテルテ氏はさらに、中国と二国間会談を行い、南中国海の仲裁結果を棚上げにすると表明した。「中国には金があり、米国にはないから」だという。これは米国が覇権を維持するためのコスト増と、国力の相対的な衰退の間に存在する、大きな矛盾を十分に示している。

最後に、オバマ大統領の任期満了が近づき、米国が南中国海問題で大きな行動に出る可能性が低くなっている。これも米国が南中国海問題の沈静化を図る一つの理由だ。筆者はここで、有名学者の張文木氏の言葉を、米国の指導層に送りたい。「国家戦略はある意味、国の命を損ねるのではなく延命する学問だ。国に負傷を強い、命がけの喧嘩をさせることを避ける学問だ」朝鮮戦争以降、米国はこの真髄を真剣に理解しようとしていないようだ。(筆者:馬堯 上海外国語大学国際関係・公共事務学院客員研究員)

 

「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年7月28日

 

 

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