杭州サミット、G20体制の転換の契機に |
ここ数年、世界はグローバル・ガバナンスの大変革期を迎えている。 中国とインドをはじめとする新興諸国の台頭やサイバースペース、気候変動といった地球規模の問題が顕在化するなか、主要20カ国・地域(G20)とBRICS (ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)に代表される新たなガバナンス体制が構築されるようになった。 世界金融危機への対応を話し合うため誕生したG20サミットは今、ポスト金融危機のガバナンス体制の変革という重要な時期を迎えている。 グローバル・ガバナンスは、安全保障分野と経済発展分野とに大きく分けられる。杭州サミットでは、こうした核心的な問題について、ガバナンス面から掘り下げて議論し、G20をポスト金融危機に対応するための体制から、国際的な経済協力などグローバル・ガバナンスに向けた取り組みを促進する主要フォーラムへと転換・高度化させる場とすることが求められる。 一方で、世界と共同歩調をとり、橋渡し的な役割を担うとともに、世界をリードすることが、G20体制の転換と高度化を実現するためのカギとなろう。 それにはまず1点目として、杭州サミットにおいて、G20に国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実施に向け共同歩調をとらせることで、グローバル・ガバナンスにおけるG20の合法性と有効性を引き上げる必要がある。 G20参加国・地域の総人口は世界の3分の2を占めるほか、国土面積は世界の60%、GDPは世界の85%、貿易総額は世界の80%を占めるにもかかわらず、国際連合加盟国数のわずか10%でしかない。よって、G20のガバナンスが普遍的であり有効であるためには、G20以外の国連加盟国から認められ支持を受ける必要がある。 2016年は国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs)の実施元年にあたる。杭州サミットでは、SDGsの実施に向けた行動計画を策定する必要があるが、このほか、サミットで提起される青写真や行動計画、ガイドライン、成長戦略、指導原則、協力提案についてもSDGsと合致させねばならない。 次に2点目として、今サミットでは中国とG20に先進国と途上国との間の橋渡し的な役割を担わせ、新興国と途上国にグローバル・ガバナンスにおける発言権と代表権を拡大させる必要がある。 中国は先進国と経済的に緊密な連携をとるとともに、途上国とも様々な経済協力にあるが、中国経済そのものも先進経済体と発展途上経済体の両方の特徴を具備しているため、南北間の対話や経済協力に取り組むうえで優位性を持っている。 G20は、先進国と新興経済体が対等な立場で参加する場であり、新興市場や途上国が利益を主張し、意思決定に参加するうえで有利になる。このため、杭州サミットを途上国の代表権と発言権が最も強まる会議にすることが望ましい。 3点目として、杭州サミットにおいてG20のガバナンス力を全面的に向上させ、グローバル・ガバナンスにおけるG20の統率力を発揮させる必要がある。 今サミットのテーマである「4つのI」(Innovative、Invigorated、Interconnected、Inclusive=革新、活力、連携、包括)は、将来にわたり世界的なガバナンスの発展と協力の推進を率いていく理念とアジェンダになるであろう。 一方で、国連のSDGsに合致させるにしろ、南北間の協力を推進するにしろ、ガバナンス力を如何に向上させるかがカギとなろう。これがグローバル・ガバナンスの成果を直接決定づけるものだからだ。 よって、G20の特徴と優位性に鑑みると、協調性と調整能力、行動力と実行力、変革力と創造力の3点を重点的に伸ばすことが望ましいと思われる。(作者:張貴洪 復旦大学国連研究センター執行主任、上海国連研究会事務局長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年8月24日
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