「目で確かめる中国」

 

長橋侑生

 「私はもう50年後の日中関係はどうなっているのか、ということを年齢の関係で決して見ることができないんです。しかし皆さんはきっと見ることができると思います。」このように語りだした星屋秀幸さんの表情を今でもはっきり覚えている。私たちが50年後に見る日中はどのようなものだろうか。

 私たちは、鄧小平氏の提案によって目覚ましい発展を遂げた現在の中国しか知らない。しかし、星屋さんは79年留学当時のとても貧しい状態であった中国を知っている。それは純粋に本当に素晴らしいことであって、私は自身がもう目で確かめることのできない中国の現状に真っすぐ立ち向かってきた星屋さんを尊敬する。

 私の考えはとても楽観的であって、否定する方ももしかしたらいるとは思う。しかし私は日本と中国は今後更に関係が改善され、アジアにおいて最高のパートナーとなる未来を想像する。「できないことなんてない。」今回の訪中で頭に浮かんだのはこの一言だった。

 日本には中国に対して良いイメージを持つ人がまだまだ少ない。これは情報源がメディアであること、そして「生」の中国を感じたことのない人が多いことが問題であると思う。私も以前まではその中の一人だった。もっと言えば、初めての訪中を終えた後もまだ、「その中の一人」だった。私の初めての訪中は高校2年生の時。4年前のことである。

 現地の人の言葉を聞き取れない私は、日本人よりも少し大きな声で会話をしている中国人を見てはいつも、また喧嘩をしているのかと誤った認識をしていた。大気汚染が進み、霧のようなものが立ち込める北京の空に嫌気を感じ、帰国後、成田の青く澄んだ空を見て涙したこともあった。しかし、それは中国に対する知識が欠けていたからだ。訪中を重ねるにつれ、私の認識は変わっていった。中国語がある程度聞き取れるようになり、北京の街に響く声の中に中国人ならではの優しさを見つけたり、都市部の大気汚染の現状に真剣に向き合う中国人に出会ったりした。嫌いだった、北京の空に浮かぶ塵のようなものが、今回の訪中の夜にはそれらが心なしかキラキラと、何か美しいもののようにさえ見えた。これが、何も知らなかった自分と今の自分との違いだと思った。物事に損得を付けるのは良くないことだが、私にとってはやはり、知らないことは損である。だから、ただ座ったままメディアを眺めている日本人に伝えたい。実際に触れて確かめてみないと本当の中国を知ることはできない。そして「知らない」という世界がどんなに狭いのかということを。


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