鑑真や魯迅の足跡を訪ねて心温まる旅―第3回Panda杯入賞者の中国見聞 |
温かい民間交流 入賞した青年たちの訪中期間中には、さらに北京で中国人民大学の中国の青年たちとの交流が行われた。日本人の中国に対する印象に話が及んだ時、訪中団の中で中国に来たことのある数人の入賞者は、みな「親切」という言葉を挙げた。数日間の旅行中にも、日本の青年たちはさまざまな面でこの言葉を実感することになる。 特に10月31日の夜、夜行列車で揚州に向かう予定であったが、多くの団員は出発前に夜行列車はうるさくないのか、眠れるのか、など随行員に聞き、心配そうな様子だった。確かに周囲には知らない中国人が寝ている寝台列車で夜を過ごすという旅行は、訪中団すべてのメンバーにとって、全く新しい経験であっただろう。しかし意外なことに、日本の青年たちと同じ車両に乗り合わせた中国人旅客は、英語と簡単な中国語、身振り手振りまで交えて、一緒におしゃべりを楽しんだのだった。 書道を愛する井ノ下千夏さんは、寝台上段にいたおばさんと筆談で仲良くなり、二人は書道という共通の趣味があったため、王義之や『蘭亭序』などについて語り合った。別れる時に、彼女は日本から持ってきたチョコレートと絵葉書を取り出し、書道についておしゃべりしたおばさんに贈った。おばさんはチョコレートは受け取らなかったが、絵葉書は受け取った。彼女は「あなたのような若い娘さんたちがこれから揚州で遊ぶなら、途中でお腹がすいたらどうするの。やっぱりとっておいて、自分たちでお食べ」と言い、その言葉には、まるで自分の家族に言っているようないたわりの心が感じられた。今回の温かな出会いは井ノ下さんにとって、とても素晴らしい思い出となった。 北京での授賞式では、中国外文局の周明偉局長が青年たちに賞状を授与する際、「さらに活動の規模を広げ、交流の頻度をあげ、Panda杯全日本青年作文コンクールの参加者を集めて、全く新しい、長く続く中日友好団体としてほしい」と関心と期待たっぷりに語り、青年たちとの10年後の再会を熱く約束した。 訪中期間中、日本の青年たちは魯迅の「地上にはもともと道はなく、行く人が多くなれば、それが道となる」という名言の持つ、深い意味を感じた。その実、中日友好の道は今もなお、鑑真和上、遣唐使、魯迅、星屋秀幸氏、中国人民大学の学生、ひいては寝台列車で出会ったおばさんらの勇気、知恵、いたわりの心を持つ人々の絶えざる開拓と心をこめた擁護により、歩めば歩むほど長く、広く、堅固なものとなっているのである。
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