2017年1月、アルプスにあるスイスの小都市ダボスで、年に1度の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)が開かれる。例年通り、経済、政治、企業の英知をダボスに集結し、世界経済について議論が交わされるが、今回のトピックは、中国の国家元首が初めて出席し、開会式で基調演説を行うことだ。2017年のフォーラムのテーマは「迅速に対応する、責任あるリーダーシップ」(Responsive and Responsible Leadership)だ。グローバル化に逆行する動きが現れ、貿易投資保護主義が台頭するなか、世界経済ガバナンスについて中国が重視するのは「役割発揮」だ。「リーダーシップ」ではなく、「役割発揮」にすぎない。「役割発揮」を重視してこそ、時宜にかなった行動ができ、発展を図ることや、力強いガバナンスの達成も可能となる。
世界経済が疲弊し、通貨安競争が進むなか、中国は大規模な金融緩和措置を単に強い景気刺激策とすることに反対し、構造改革と改革深化を堅持している。
中国は「供給側の構造改革」を提起し、「過剰生産能力の削減、在庫の削減、デレバレッジ、 企業コストの引き下げ、脆弱分野の補強」の5つの課題を設定した。中国の全面的な構造改革推進は、ひとまずの成果を収めた。2016年、中国は依然として世界で経済成長率が最も高い国の1つだった。産業構造の改善が進み、サービス業の経済成長率への寄与度は58.5%に達した。消費需要が経済の安定成長促進をけん引し、1-9月の最終消費支出の経済成長への寄与度は71%に上った。
中国の構造改革は科学技術のイノベーションでも成果が上がった。2016年の「インターネット・トレンド」年次レポートでは、「中国はインターネット市場のリーダーとなった。市場規模や商業的イノベーションの上でいずれも優位性があり、海外での認知度も高い。世界のインターネット企業で時価総額上位10社のうち4社が中国企業だ。中国の企業は世界の技術革新に積極的に取り組んでいる。2015年に世界で特許申請数が最も多かった企業で、1位は華為、2位はクアルコム、3位は中興通訊だった。中国企業は管理モデルや戦略計画でも未来を模索し創造しようとしている。
中国は市場化改革を進めるとともに、国際通貨制度改革に積極的に参画している。2015年8月11日、中国は人民元為替レート基準値形成メカニズムを整備し、為替相場の決定における市場の役割を拡大させた。2016年10月1日には、人民元が正式に国際通貨基金(IMF)特別引出権(SDR)の構成通貨となった。人民元は市場の需給が為替相場を決定する方向に向かって着実に進んでいる。
中国は、国際秩序の強化、整備、改革にも積極的に取り組んでいる。世界最大の発展途上国として、グローバリゼーションの過程で現れる「貧富の格差」とグローバルガバナンスで現れる両極化と対立という現象をめぐり、中国は積極的に新興国の団結を支援し、先進国との橋渡しを行うことで、世界の協力と互恵関係の構築に取り組んでいる。発展途上国が別の途上国を支援する南南協力や、BRICS、G20拡大協力メカニズムなど、発展途上国の立場から飛躍し、国際秩序の構築や改革から生まれる有益な仕組みの構築に参画している。
中国は、今の国際秩序における危機が構造的な危機であると深く認識している。内的要因の面で言えば、今回の経済危機の本質は、各国の経済構造のねじれが表面化した結果だ言われている。2008年の金融危機後、米国を起点に、従来とは異なる量的緩和措置を利用した経済回復が常態化し、真の構造改革、正攻法での対策が非常に少なくなった。外的要因の面で言えば、国際秩序崩壊の根本的要因は先進国の発言権が大きすぎることにあり、発展途上国が受け身に甘んじ、参画意欲を失っていることにある、と言われている。特に近年は、先進国が景気悪化でグローバルガバナンスの絶対的な支配権を喪失し、世界が多様化に向かっている。発展途上国にもまた世界の共同統治に参画する力や意欲が無いため、世界は断片化を招き、グローバルガバナンスは分裂崩壊の危機に直面している。
このような時に、「リーダーシップ」が特別に深い意味を持つ。
中国が強調するのは偏狭な政治的行動ではなく、変わりゆく世界の枠組みの中で大国としての責任を負うことだ。
中国の目指す「リーダーシップ」は、「リーダー」を探し求めるのではなく、ある種の自発的で、落ち着きがあり、しなやかさの中に強さのある「力」を構築することだ。
「リーダーシップ」は、空理空論ではなく、実務に励むことだ。権謀術数をめぐらす力ではなく、役割を引き受ける力を意味する。リーダーシップに必要なのは一艘の船だ。同じ船に乗り、力を合わせて困難に立ち向かってこそ、難局を乗り切ることができるのだ。
これが、グローバルガバナンスに提起する中国の新たな考えだ。(筆者:中国国家発展改革委員会国家協力センター・チーフエコノミスト・万喆)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年1月17日
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