かつての裴寨(はいさい 河南省辉县市張村乡裴寨村)は、ほとんど毎年のように干ばつに見舞われていた。春季は雨が少なく、貯蔵水が不足する時には、付近の村から水を借り集めなければならなかった。夏にはたまに大雨が降るが、それでは水不足問題が解決できないばかりか逆に水害の危険を招いていた。裴寨は地勢が低く、20年前には洪水に襲われ、危うく村が全壊するところだった。以前は村人の飲用水は深さ30メートルほどの浅井戸に頼っていたが、その水質は悪く、アルミの湯沸しポットを使っていると、ひと月もたたないうちに内側は水垢だらけになってしまった。また、浅い層の地下水は汚染を受けやすいため、人口が500人の村で、食道ガンなどの病気で命を奪われる人が毎年四、五人いた。
2005年、裴春亮さんは村民委員会の主任になると、個人で83万元の資金を出して530メートルの深井戸を掘り、村人に衛生的な飲用水を提供した。また彼は860万元を出資して100キロ先の石門ダムから水を引き、農業水利施設を整備した。この工事のために村人は力を合わせた。男たちは労働力を提供し、高齢者は食事を作り、子どもたちも弁当を運ぶなどの手伝いをし、3年間の工期で5000立方メートルの貯水池を完成させた。水は地下に埋めた1100メートルのパイプを通して村の耕地まで送られた。村人はこの心を潤す貯蔵池に「心田池」と名づけた。ただ、「心田池」の貯水量は季節的な影響を受けるため、効率的な農業のためにはさらに水源が必要だった。村の党委員会は数回の実地調査を行った末に、村にある天然の深い溝を利用し、100キロ先の三郊ダムから水を引き、さらに雨水を収集し、ダムを建設することを決めた。
裴寨ダム建設計画は村の党支部が村人を指導して集中的に討論を行った結果で、天然の溝を掘り下げ急傾斜の壁を採用するというものだ。工事は夏に行われたが、厳しい試練が情熱に燃える村人たちにふりかかった。ある日、予防措置が不足したため、大雨で30~40メートルの鉄筋のダムの土台が壊れてしまったのだ。数カ月の苦労が一瞬で失われたのを見た村民たちにはとたんに気抜けしたり、ダムの施工方法が間違ったかと疑念を抱いたりした。もう諦めようと思う人すらいた。
「村のリーダとして、自分が動揺しないだけではなく、村人たちを落ち着かせなければいけない」と考えた裴さんは、実地調査後のプランに問題がないという自信を持ち、村の党員や幹部を動員して一軒一軒回って村民を説得した。このダムは完成してから3年が経ったが、漏水などの問題は一度も起きていない。
工事開始時の情景を思い出すと裴寨村の党員たちは胸が一杯になる。ダムの建築費用は6000万元(約9億8313万6000円)かかった。そのうち約100万元が社会各界と裴寨の村人からの寄付金で、72元8角(約1192円)は張村郷の中心小学校の生徒の小遣いだった。封筒から出てきた数枚のコインを見た裴寨村党支部の幹部たちは、感動で目を潤ませた。
2013年12月、裴寨ダムが竣工した。村人は爆竹を鳴らして祝った。ダムの長さは2300メートル。貯水量は80万立方メートル。これによって、裴寨村と周辺の村の3万人の飲用水問題と約2万ムー(1ムーは6.667アール)の耕地の用水問題が解決した。ここから裴寨村の経済発展はいっそうスピードアップしただけでなく、エコ農業と農家観光業がこの勢いに乗って飛躍的発展を遂げたのだった。(胡周萌)
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