村人の生活を豊かにした裴春亮氏

 

裴竜会さんと奥さんは裴寨コミュニティーの商店街で表通りに面した2階建ての店舗を購入した。1階でマタニティー&ベビー用品を取り扱い、2階で赤ちゃんを入浴させる。田舎の店だとは信じられないほど、店内の照明が専門的で、商品棚も整えられている。「年収は少なくとも15万元(約251万円)。南方で船のアルバイトをしていたときより、今のほうが何倍もいいんだ」と裴さんは言う。

彼が経営しているような店は河南省輝県の裴寨商店街に約600軒ある。昔、この辺りは農村の荒地にすぎなかったが、今ではビルが立ち並ぶにぎやかな街となった。商店街のそばには農民たちが住んでいる一戸建て住宅の団地がある。また、小学校やバスケットボールコート、広場など都市のインフラ設備は全てそろっている。これらの変化は、裴春亮氏という人物抜きでは語れない。

先に豊かになった農民企業家

裴春亮氏の最初の仕事はれんが工場のアルバイトだった。真面目な働きぶりのおかげで、社長が彼の給料を30元(約500円)から40元(660円)に上げてくれた。彼は稼いだお金を使って、安陽技術学校で家庭用電気機器の修理技術を学んだ。卒業後、彼はテレビを所有する人が少なく、修理の需要はさらに少ないということに気付いた。

仕事がなくても生計を立てなければならない。コストが低く、なるべく即金で支払われる商売をしたいと思った裴春亮氏は理髪店をしようと思った。農村では、つけで理髪することは許されないからだ。しかし、理髪店の親方は自分の仕事が奪われることを心配して、彼に教えることを渋った。それならと、裴春亮氏は毎日親方に水を運んだ。そうして十数日が経ち、感動した親方は彼を弟子とした。

あのころは皆、理髪店で雑談することが好きだった。この辺りで写真を撮れる人がいないと聞いた裴春亮氏は、撮影の技術を独学し、写真を撮ってあげたり、現像してあげたりした。こうして彼は昼に理髪と写真撮影、夜にテレビの修理をして、どれも頑張っていた。

一生懸命に働いた結果、裴春亮氏はやっとお金を少しためることができた。クルミやサンザシなどを買い付けに来たよその土地の人が食事をする場所がないと聞き、彼は家を借りてあんかけ面(河南省の郷土料理)を売り始めた。一番多い日には、400元(約6600円)も売り上げた。裴氏は子どものころから志がある人で、ペンとノートをいつも持ち歩いていて、電柱に貼られた広告までメモする。「あのころ、ビジネスチャンスはどこにでもあった。残念ながら多くの人には見つけられなかったけれど」と裴氏は語る。

その後、彼は故郷で料理店を経営し、北京へ行って大理石を販売し、また友達と一緒に鉱山を採掘し、セメントを販売し、ついに立派な農民企業家となった。

裴春亮氏は言う。「事業を始めたころ、一つの道理を知った。真面目に仕事をしてさえいれば、成功しないことはない」  

恩返し

「服があったら凍えている人に与え、ご飯があったら飢えている人に与えなさい」という母親がいつも教えてくれた言葉を胸に、ふるさとの人々の恩に報いるため、裴春亮氏は裴寨村の主任に就任した。彼は自分のお金を使って、村のダムを建設し、村人を率いて高効率農業を発展させ、品質の良い無公害野菜を栽培し、モデルとなるビニールハウスを作った。彼はまた商店街の建設を計画し、サービス業を発展させ、商店に経営のプラットホームを提供した。

裴春亮氏の下で、貧困から脱却した裴寨村は豊かな村として有名になった。村人1人当たりの平均年収は2005年の1000元(約1万6600円)未満から2015年の1万1000元(約18万2400円)に増加した。彼の指導の下、学校やバスケットボールコート、広場が建設され、山間部に住む村人たちも都会人並みの暮らしを送れるようになった。

10年後の今日、当時の選択を後悔していないかと記者に聞かれたとき、裴春亮氏は「山を下りて、たくさんの素晴らしい人と出会って、彼らから新しい思想を学んだ。それを裴寨に持ち帰って、新しい農村の発展と建設に生かしている。プレッシャーは少なくないが、前に向かう原動力と誇りの方が大きいので、後悔していない」と答えた。

未来を考える

村人たちが衣食住に困らなくなった現在、裴春亮氏が最も関心を寄せているのは医療と教育の問題だ。

彼は、裴寨村の集合住宅街に健康の知識を宣伝する看板を掛け、高血圧や糖尿病などよく見られる病気の基礎知識を紹介している。また、毎年輝県病院の医師を招いて、村人たちに健康診断を無料で提供し、健康に関する常識を説明してもらっている。このほか、スポーツ施設を増やして、村人に運動を薦めている。しかし、「これでもまだまだ足りない。都市部と農村部の格差を縮めるにはまだ長い道のりがある」と裴春亮氏は言う。

学校を中退した経験があるせいか、強い男である彼も、農村出身の学生が苦しんでいる姿を見て幾度となく涙を流した。裴寨小学校の条件がよくなった今でも、「村の子どもたちに外の世界をもっと見せなくては」と記者に言っていた。

毎年の夏休みと冬休みに、コミュニティーの党委員会によって招かれた都市部の大学生が、子どもたちに踊りや歌などを教えたり、外の世界を紹介したりする。「新卒の大学生に山間部の学校の教師になってもらうことはとても難しい。できるだけ子どもにチャンスを作るしかない」

全国人民大会の代表として、裴春亮氏は次のように語った。「2017年の両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議のこと、日本の国会に相当)で、引き続き農村の健康と教育の問題を提案したい。Eコマースとインターネットの知識を農村に取り入れ、山間部に広めて、農民たちをインターネットに触れさせる。水資源の問題なら、自分たちの努力で何とか解決できる。しかし、農村では教育と医療資源がまだ不足しており、これらの問題はやはり政府により多くの注目と支持を求める必要がある」(焦源源)

 

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