国家間関係が困難な時こそ、文化における共通点を求めるべき

――陳凱歌委員に聞く

王朝陽 王焱=文

今年は中日国交正常化45周年に当たり、両国で多数の文化イベントが行われるが、小説『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』を素材にした両国共同制作の映画『妖猫伝(空海 KU−KAI)』は特に注目を浴びるものに違いない。雄大な長安城で詩人・白楽天と日本から遣唐使として渡ってきた僧侶・空海が協力して、人間の言葉を操る黒猫の真相に迫る。これは日本の著名作家・夢枕獏氏が描いた唐王朝だ。6年にわたる準備を経て、全国政協委員である陳凱歌監督はこの歴史ロマンあふれる物語をスクリーンに映した。なぜこの作品が陳監督を魅了したのか。中日間の映画協力をどのように見ているのか。本誌記者が陳監督にうかがった。

――『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』は日本の作家が唐の時代を背景にして創作した小説ですが、そのどこに引き付けられ、映画化しようとお考えになりましたか。 

陳凱歌 小説を読んでから、長い時間をかけて考えた上で、やっと映画化しようと決意しました。小説のストーリー、登場人物、そして夢枕獏先生が作品の中で示した唐代文化に対する愛情に心を動かされたと言ってよいでしょう。夢枕獏先生は私の親友でもあります。若いころ、バックパッカーとして東京から西安へ旅をしたとき、西安の市街地に入った途端に、思わず涙を流したそうです。撮影の準備には、6年もかけましたが、唐代の繁栄ぶりを再現するために湖北の襄陽に唐城撮影基地を作りました。夢枕先生を見学に招くと、復元された長安の姿を見て彼はまた涙を流しました。そこで、私はこう思いました。日本人の心の中で、少なくとも日本の一部の知識人の心の中で、唐はその文化の根源となる存在なのだと。 唐代そのものも魅力的です。唐には並々ならぬところがあります。例えば、この映画に登場する歴史的人物の阿倍仲麻呂は晁衡という中国名を持っており、唐王朝の高官を務めたことがあります。なぜ外国人が唐王朝の中央政府で働けたのでしょうか。当時の中国の開放度合いを反映した好例だと思います。

――『妖猫伝』の撮影中に、日本人俳優との協力についてどのように感じましたか。 

 日本人俳優の方々との協力は非常に順調でした。彼らにとって最大の難題はせりふの臨時修正でした。中国語での撮影だったため、俳優は全員、中国語のせりふを話さなければならなかったからです。これは彼らにとって少し難しいことでしたが、登場人物をよりうまく演じるために、彼らは頑張って克服しました。空海役を演じた染谷将太さんはわずか24歳の若手俳優です。準備期間を含めて中国に5カ月間滞在しました。奥さんの出産があったにもかかわらず、撮影終了までずっと日本に帰りませんでした。映画に対する一途な気持ちも、役柄になりきるためのこだわりも、非常に尊敬すべきだと思います。また、阿部寛さんと松坂慶子さんというベテラン俳優のおふたりも出演しています。出番はそれほど多くありませんでしたが、非常に真剣に演じていただきました。

――撮影準備をしているこの6年間に、中日関係は何度も波乱に見舞われましたが、お仕事に何か影響はありましたか。 

 全くありませんでした。しかも、国家間関係が困難なときこそ、文化における共通点を求めるべきだと思っています。芸術作品を観衆の皆さんに捧げたいというのが私たちの最初の目的ですが、もしこの映画が中日関係の発展に少しでも役立つなら、もっと素晴らしいことだと思います。

 

人民中国インターネット版 2017年3月13日

 

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