「共存」への新たな一歩に

 

日興リサーチセンター株式会社理事長 山口廣秀(談)

「一帯一路」国際協力サミットフォーラムが、今年初めて開かれると聞きました。各国や地域からさまざまな考えの人々が集まり、今後どのようにこの壮大な構想を発展させていくかについて、各方面からの議論がなされることでしょう。会議によって今後の方向性が見つかることは、望ましいことですし、その成果に期待しています。

互いに理解し合う

アジア広域におけるインフラ整備の必要性は大きく、その需要に適切に応えていくことは、地域の将来の発展にとって必須のことと私は認識しています。「一帯一路」の提唱は十分に理解できますし、その発想は本当に素晴らしいことと感じています。

しかし、日本あるいは日本の企業がこれにどのように関与していくかは個別の問題だと私は思っています。道路、港湾、鉄道、通信、エネルギー効率、ファイナンスなど、関係国や地域の状況によって異なる要素が多く、その違いを見極めつつ、日本や個別の企業、金融機関、あるいはアジア開発銀行(ADB)などが補完的に力を貸していく形が理想的なのではないでしょうか。「一帯一路」のような大がかりな発想は、確かに理解はできるものの、日本的な考え方に立てば、ひとつひとつのプロジェクトを丹念に点検し、リターンやコストを考えていきながら、必要に応じ、プロジェクトを実行に移していくという方法が自然なのではないでしょうか。

互いに助け合う

AIIBに日本が参加するかどうかについて、さまざまな議論がなされていますが、個人的には、AIIBとADBなどが共有できる目標を設定しながら必要な投資を行い、共に発展していくのが自然な流れかと思います。そのような流れができ、実績を積み重ねていくことで、「お互いに助け合うことのできる存在」になっていく中で、おのずと道が見えてくると思います。いずれにしても、この先、日中間での具体的プロジェクトの実例を積み重ねることが何よりも大事でしょう。

互いに学び合う

中国の人々は少子高齢化、社会福祉、環境対策など、日本の持っている「知見」に関心を持っているようですね。日本は多くの課題を抱える「課題先進国」です。1960年代から現在に至るまで、試行錯誤を続けつつ、ブレークスルーの方法を見出してきました。その経験が、同様の問題を抱える現代中国の参考になるということなのでしょう。

しかし、ことは日本からの一方通行ではありません。例えばアリババをはじめとする先進的なIT関連企業のイノベーションなど、現在の中国から学べることもまた多くあるはずです。中国企業がどのようにイノベーションを生み出し、また、若者が起業意欲をどう高めていっているのかなどは、日本にとっても大いに参考になることだと思っています。日本と中国が互いの知見を交換するために、密接な関係を構築していくことが今後、ますます重要になっていくでしょう。

今年は日中国交正常化45周年を迎える節目であり、経済はもちろんのこと文化面などでもさまざまな意見交換を行い、互いの良いところを大いに吸収し、お互いに成長していくことがいっそう重要になっていくと私は認識しています。日本が中国に学ぶべきことはたくさんあります。中国も日本から多くを学べるはずです。両国関係が微妙な時期だからこそ、お互いを尊重し、良いところを認め合う姿勢が必要といえるでしょう。(写真提供・日興リサーチセンター)

 

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