海口 
海風と騎楼の街の物語

 

目覚めた旧市街の記憶

今年63歳になる黄世発さんは、生粋の海口人だ。彼が子どもだったころの情景はこうだ。「当時は朝、空がぼんやりと明るくなるころ、漁船が海甸溪から港に戻ってくると、母は籠を持って博愛路にある東門市場に行って新鮮な魚やエビを家族に買ってきてくれました」。黄さんは騎楼に深い思い入れがあり、生涯を通じて騎楼と切っても切れない縁を結んだ。現在、彼は海口南洋騎楼研究会の会長という肩書きを持ち、一貫して騎楼の研究と保護に尽力している。

 中山路は孫中山がこの通りで休んだことから名付けられた。現在、海口の古い街並みのうち最も保存が完全な騎楼の古い街並みだ

時の流れに伴い、かつて繁栄を誇った騎楼の古い街並みは、年月が経って、人口密度がとても高くなったため、徐々に衰退し、壊れ、そして消えてしまうまでになった。2007年3月、海口市政府は騎楼の古い街並みに対して修復目的の改造を行うことを決定した。これは黄世発さんと彼の同僚の主要な仕事ともなった。「騎楼の古い街並みの昔の姿を再現するため、われわれは大量の資料を調べ、多くの家庭を訪問しました。歴史に責任を負う態度をとりながら、本物の歴史的遺物を保存しようと最大の努力を尽くしました。例えば、あの彫刻の模様ですが、完全にオリジナルと同じ材料を使い、全て手作業で壁に彫っています」。こうした数年の努力を経て、13年、中山路の騎楼歴史文化エリアが正式にオープンした。  

今でも騎楼の古い街並みをそぞろ歩くと、依然として昔日の美しさを感じることができる。欧州様式のはりや柱、とがった屋根、彫刻のある窓や雨戸から、濃厚な南洋の雰囲気が迫ってくるかのようだ。細かな部分の灰塑(漆喰彫刻)や彫刻れんがの飾りは、中国式の伝統的な美的感覚と海南地方の特色を十分に表している。立ち並ぶレトロな雰囲気の商店の前では、お年寄りがのんびりと日光に当たって新聞を読んでいる。編み笠をかぶり、てんびん棒をかついだ商人が声を張り上げて新鮮な果物を売っている。並んで延びる長い通路では、観光客がゆったりと歩きながらショッピングをしている。手をつないで歩く若者たちは時折、足を止めて写真を撮っている。鮮やかで生き生きとした生活の風景が、光と影の変幻する騎楼で一幕また一幕と途切れることなく上演されている。100年前と同じように。

 

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