海口 
海風と騎楼の街の物語

 

米粉と「老爸茶」

その地方の風土と人情は、簡単で素朴な街中の小吃(軽食)に反映されることが多い。海南の小吃といえば、海南米粉を挙げないわけにはいかないだろう。海南人の「粉」好きの程度は、どの街にも数えきれないくらいの米粉店があるほどだ。有名なものに、海南腌粉(汁なしのまぜ米粉)、抱羅粉(抱羅鎮の汁ありの米粉)、陵水酸粉(陵水県の海鮮が多い汁なしのまぜ米粉)、後安粉(後安鎮の汁ありの米粉)など十数種類がある。海口の人々の一日は、ほぼ毎日、一口の海南腌粉から始まる。白く細く柔らかい米粉にゴマ油をかけ、細切り肉やモヤシ、タケノコの細切り、揚げピーナッツ、ネギのみじん切り、香菜などを散らせば、複雑で濃厚な味わいがあり、みずみずしく爽やかで滑らかな口当たりだ。学生でも社会人でも、はたまた退職した高齢者でも皆、朝早くからこの味を求めてやって来る。  

まったりとした午睡の後、海口旧市街の裏通り。道に面した簡素な店内に、年季の入ったテーブルがいくつか置かれ、数人が座って談笑しながらお茶を飲んでいる。これが海口の最も特色のある風景、「老爸茶」だ。「老爸茶」とは、お父さんやお母さんたちが集まってお茶をするという意味からきている。昔南洋に行った華僑が持ち帰ったこの習慣は、今では完全に海口の人々の日常生活に溶け込んでいる。1ポットのコーヒーといくつかの点心を注文した来店客は、それらをつまみながらさまざまな話題に花を咲かせる。しゃべり過ぎて口が乾いたら、一口飲むかゆったりと一服ふかすかして、ちょっと点心を食べてからまた続けてしゃべりだす…。こんな風に昼過ぎから夕方まで、半日全く動かないこともある。こんなにゆっくりとしたリズムで暮らしていれば、生活のストレスが全くないのではないかと思えてくる。決して豊かではないかもしれない。しかし、彼らは心の自由がより大切だと思っているのだ。

 海南で有名な4種類の米粉料理の一つの 「海南腌粉」

週末になると、海口の人々は家族を連れて万緑園に行くのが好きだ。ここは海口最大の臨海熱帯庭園で、園内には1万本近いヤシの木を主とする熱帯と亜熱帯の植物が植えられている。過ごしやすい環境のため、「渡り鳥高齢者(冬季に北方から来て南方で越冬する高齢者)」と呼ばれる特殊なグループが集まってきている。李さん(69)と奥さんは万緑園で自転車に10キロ乗ったところだった。ふたりはそれぞれ湖南と陝西の出身。仕事の関係で北京と上海にそれぞれ10年、それから香港に25年定住している。昨年、奥さんが退職したため、ふたりは海口に来て越冬することに決めた。「海口は空気がきれいだし、香港のように混雑していないし、住んでみたら本当に快適でした」。李さんはそう言ってこちらに手を振ると、またふたりで自転車に乗って去っていった。

 万緑園で自転車に乗る「渡り鳥高齢者」の李さん夫妻

 

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