軽快な針運びで緻密に描く

 

針と糸が彩る芸術的人生

長沙市の車站北路にある湖南省湘繍研究所は、素朴で上品な雰囲気が至る所に感じられ、入り組んだ回廊が続き、灰色の壁にはツタがびっしりと生えていた。湘繍の芸術大家である成新湘さん(44)は一日で最も明るい時間を選んで、針に糸を通し、下を向いて丁寧に作業をしていた。

 創作に取り組む湘繍芸術大家の成新湘さん

彼女の素早い指使いに伴って、金色の絹糸が上へ下へと行き来すると、1頭の生き生きとしたトラが表面に現れた。ころころとした目玉はまるで動いているようで、体毛は流れているように細かく表現されている。「これは湘繍独特の針使いで、鬅毛針といいます」と成さん。「この運針法では、針目を放射状に広げ、一方は分散させ、もう一方は密集させます。こうすると本当の毛のように、一方は体内に入り、一方はふさふさしているように見え、『毛が体の中から生えている』という真に迫った効果を出せます」

1989年、16歳の成新湘さんは湖南省湘繍研究所に入り、刺繍をする生活を始めた。2年間の見習いで、成さんは体系的な基礎訓練を受けた。何度も刺し傷を負い、何度も縫い直すという経験をした後、ついに生き生きとした鳥や現実と想像が入り混じった草花を刺繍で描き出した。徐々に彼女はこの仕事を愛し、自分の思いと気持ちを布の上に刺繍で表現するようになった。

現在、湘繍に28年携わってきた彼女はすでに湘繍の芸術大家となっている。湘繍の伝承について成さんは、「湘繍の精巧な美しさに引かれる人は多いですが、本当に落ち着いて刺繍を学ぶ人は少ない。大家はだんだんと高齢になります。若い専門的な人材がこの技を受け継いでいく必要があります」と話す。これに関して、湘繍研究所と湖南工芸美術職業学院は協力して教育活動を展開している。2008年、湘繍クラスの最初の卒業生が湖南省湘繍研究所に就職し、成さんはその教学管理と技術指導の仕事を担当した。

作業部屋を出ると、広く明るいホールで数十人の若い女性たちが静かに刺繍をしていた。成さんは、湘繍という貴重な無形文化遺産がより良く保護され、伝承されていくことが願いだと語る。彼女たちはまさにその希望なのだ。

 扇子や手提げバッグなど、近年、湘繍は文化クリエイティブブランドを立ち上げ、工芸品を生活に取り込み、市場の好評を博している

 

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湖南省湘繍研究所

所在地/長沙市芙蓉区車站北路39号

交通/路線バス101番、202番、602番で「五里牌北」停留所下車、道路を挟んで向かい側

電話/(0731)82291061

時間/8:30~17:30

料金/無料

 

 

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