注目のBRICSアモイ会議 「一帯一路」との連携は

 

文=江原規由

9月に、中国福建省厦門(アモイ)市で開催される第9回BRICS(注1)首脳会議(以下、BRICSアモイ会議)は、今後の世界情勢、とりわけ、世界経済の行方をみる大きな視点が提起されるのではないでしょうか。5月、北京での「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」国際サミットフォーラム、6月、カザフスタン・アスタナでの上海協力機構(SCO)加盟国首脳理事会第17回会議、7月、ドイツ・ハンブルクでの主要20カ国・地域(G20)サミット、そして、9月、BRICSアモイ会議と、世界の衆目が集まる首脳会議が続いています。こうした首脳会談における主要テーマはそれぞれ違いますが、その最大公約数を求めるとすれば、現下のグローバルガバナンス、とりわけ、世界経済秩序のあり方にあるといってよいでしょう。

強まる世界における意義

中国では、BRICSアモイ会議がBRICS協力体制第2の黄金の10年間を迎える節目の年に開催されるとして、「過去10年間、BRICS協力は経済と政治の両輪駆動を堅持し、南南協力の新たなルートを切り開いた」と、格別な意義を強調しています。アモイ会議のテーマは、「BRICSのパートナーシップを深化させ、さらに明るい未来を切り開こう」です。習近平国家主席は、G20ハンブルク・サミットに出席した折に、BRICS首脳非公式会議を主催し、アモイ会議のテーマに関して、BRICS協力に新エネルギーを注入し、グローバルガバナンスを整備するため「新たなプラン」を提起し、世界経済の発展のため「新たな貢献」を行うとし、「グローバルガバナンスがさらに公正かつ合理的な方向に向かうよう努力し、新興市場と途上国に安定、開放、包容、互恵の発展環境を創造するために尽力する」との総括講話を行いました。グローバルガバナンスの方向、新興市場・途上国の創造と発展といったキーワードに、今の世界におけるBRICSの意義が認められます。

世界経済貢献度は50%超

新興市場国と途上国の重要な代表とされるBRICSは世界人口の44%、面積の30%近くを占め、過去10年間に、世界の国内総生産(GDP)に占める比率を11%から16%へ、また、対外貿易では7%から12%へと増やしてきています。今や、世界経済の成長率に対する貢献度は50%を超えるとされています。特筆すべきは、BRICSが世界最大の金の生産・販売国であり、世界全体の外貨準備の半分近くを有していることです。

世界最大の途上国を自認し、約130カ国・地域の最大の貿易パートナーである中国にとって、BRICSという枠組みでグローバルガバナンスの形成と世界経済の発展をリードする新たな道を共に協力して開拓する意義は決して小さくないといえるでしょう。

現在、グローバルガバナンスの形成に大きく関わっている主要国として、例えば、先進国首脳会議(G7)、G20などが指摘できます。今後、世界第2位の経済規模をもつ中国をはじめとするBRICS5カ国(世界の原料基地・ブラジル、世界の資源基地・ロシア、世界のOFFICE・インド、世界の工場・中国、アフリカの玄関口・南アフリカ)は、G20のメンバーでもあり、今後、グローバルガバナンスの形成や経済秩序の構築で発言力を発揮すべき機会が増えて来ると考えられます。

こんな見方もあります。2014年と翌年、BRICS外貨準備基金(CRA、1000億㌦)とBRICS新開発銀行(NDB)がそれぞれ創設され、さらに、15年12月には、中国が13年に提唱し、中国、ロシア、インドが3大株主となり、80カ国が参加するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が発足しました。こうした状況を、国際通貨基金(IMF)と世界銀行を軸とする現下のグローバル金融秩序に対する問題提起となるとの見方です。CRAとNBDには、例えば、途上国の経済インフラの整備、貧困、環境、都市化対策などの地球規模の課題に取り組む上で、IMFや世界銀行、さらには、アジア開発銀行(ADB)との補完関係の構築・協力強化が求められているのではということです。

とはいえ、CRA、NDBそしてBRICS自体がまだ歴史も浅く、加盟国も少なく、また、課題も少なくないのが現実です。こうした環境の中で、世界の期待にどう応えてゆくのか、世界のBRICSへの関心が集まっているといえます。

積極的に加盟国を拡大へ

ところで、「BRICS+」という考え方があります。これは、「友達の友達は友達だ」という発想が根底にあるとされています。今後、BRICSをどう発展させていくかということです。この場合の第2の友達としてよく引き合いに出されるのが、メキシコ、ナイジェリア、エジプト、アルゼンチン、インドネシアの5カ国です。アフリカ、中東各1カ国、ラテンアメリカ2カ国、アジア1カ国と、地政学的にバランスのとれた国々といえます。ロシア科学院経済研究所のゲオルギー・トロラヤ所長によると、今後、この5カ国と緊密な経済政治パートナーシップを構築してゆくことが、BRICSがグローバルガバナンスの形成で発言力を発揮する上で大きな力となるとしています(参考消息網7月21日)。この5カ国がBRICS入りするかどうかは、各国の成長とBRICSとの関係の行方によると考えられます。このほかにも、中国、ロシア、インドが加盟しているSCO(注2)と同じく、BRICSにも議決権を有しないオブザーバー国や対話パートナー国を設置するなど、新たな門戸開放によって、参加国を増やす方向にあるのではないでしょうか。なにより、BRICSと100カ国余が参加・支持する「一帯一路」構想との連携が、今後、どう展開するのか、BRICSと世界との関係をみる大きな視点です。

「BRICS+」はほかにもあります。例えば、今後5年間、BRICS5カ国の映画監督が毎年1作品を共同制作することを決定、その初の協力映画となる『Where has the time gone?』が、6月に、「2017中国成都BRICS映画祭」で上映されました。同じく、6月には、広東省広州でBRICSスポーツ大会が開催、さらに、BRICSのシンクタンク、民間社会組織、メディア、青少年に関するフォーラムや各種文化交流などが開催されており、BRICSは経済政治関連以外の分野でも協力と活動のネットワークを拡大しつつあります。

中国外交部(外務省)は、中国はBRICS議長国在任中に取り組むべき以下の4つの重点事項を表明しています。①経済協力を主軸に人と文化の交流の新局面をさらに切り開く②グローバルガバナンスの整備を後押しする③人的・文化的交流を発展させる④より広範なパートナーシップを構築し、BRICSコミュニティーを拡大発展させる。

かつて、一部にBRICSは色あせたとの指摘もありましたが、今日、相対的に色あせているのは先進国経済の方ともいえます。習主席は、世界経済の発展のため「新たな貢献」を行うと公言しています。果たして、そのために、どんな「新たなプラン」が提起されるのか、BRICSアモイ会議は、まさにその試金石といってよいでしょう。

 

注1 BRICSとは、B=ブラジル、R=ロシア、I=インド、C=中国、S=南アフリカの5国カ国。2006年6月、ロシアのサンクトペテルブルクでの経済フォーラム期間中に開催された5カ国経済大臣会議で基礎が固められたとされる。

注2 3カ国のほかカザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタンなどの8カ国による多国間協力組織。面積と人口では世界最大の地域協力組織。

 

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