(財)国際貿易投資研究所(ITI)チーフエコノミスト 江原規由
10月18日、日本のニュース報道のほとんどで、第19回党大会での習近平総書記の報告がトップニュースとなった。22日の衆議院選挙を間近に控えているにもかかわらず、メディアが同報告を大きく取り上げたのは、日本の中国に対する関心の高さを雄弁に物語っていよう。同じことが、世界についてもあてはまるのではないか。党大会のプレスセンターによると、報道記者に配布する党大会報告は、なんと、計12カ国語版を用意しているとのことだ。世界と中国の距離がますます身近になったことはなかったのではないか。
3万2000余字という膨大な報告は、『礼記』の“不忘初心,方得始終”に始まり、“大道之行,天下為公”の一節で結ばれている。古代の知恵を現代に生かすという中国の歴史を重んじる姿勢が認められる。
さて、報告で最も注目したいのは、中国の発展条件を2段階に設定したところである。2段階とは、2020年までに実現する全面的小康社会を基礎に、①社会主義現代化の基本的実現期(2020年から2035年)と、②社会主義現代化強国の建設期(2035年から2050年)である。この発展条件は、「二つの百年の夢」の実現期と重なるが、この中国の夢は、中国だけの夢ではなくなっているのではないだろうか。2035年までには、中国は世界最大の経済規模を有しているであろう。また、今の世界最大の発展途上国の地位にとどまっているとは限らない。中国には、新たなグローバルガバナンスをどう構築してゆくのかが求められているのではないだろうか。
過去5年間、世界における中国のプレゼンスは大きく向上した。今や、世界経済の成長率に対する寄与率は30%以上と、世界で最も貢献している。さらに、世界第1位の生産大国、貿易大国、観光大国でもあり、今や世界第2位の対外投資国となっている。明らかに、“中国から世界への時代”が到来している。こうした中国が果たした成果と経験が内外で還元されることを、世界はますます期待してこよう。この点、報告で人類運命共同体の構築を推進していくとしている点は、まさに、時代の潮流、世界の要請に沿っているといえる。今日、人類運命共同体の構築を公言できる国は中国をおいてほかにはないといっても過言ではない。さらに、都市化の進展、貧困層の撲滅、民生向上、人材交流など、報告で言及された数々の中国の経験は、今後、発展途上国を中心に世界各地で実践されていくに違いない。
中国と世界との関係を見る上で、目下、「一帯一路」ほど注目されている事業はないであろう。報告では、4カ所で言及されている。「一帯一路」は、提唱以来4年になるが、すでに世界的認知を得ている。その理念は5通(政策溝通、設施聯通、貿易暢通、資金融通、民心相通)であり、その精神は「共商・共建・共享」である。国家の繁栄と人民の幸福、そして、世界的規模でウインウインを実現するための「中国方策」と「中国知恵」が「一帯一路」に込められている。報告では、「一帯一路」の推進で、国際協力のプラットホームを打ち立て、共同発展のエネルギーを増やすとしている。中国が目指す合理的で公平なグローバリズムの改革、そして、人類運命共同体の建設に向けた中国の揺るぎない姿勢が「一帯一路」に認められる。新たなグローバリズムを創造する、可能性を秘めた「世紀の大事業」といえよう。
人民中国インターネット版 2017年10月25日 |