気質と性格育てる場 | ||
茶館に人々が引き付けられる理由はお茶だけではない。ここでは「竜門陣(四川の方言でおしゃべりの意味)」もすることができる。四川では「おしゃべりする」ことを「摆竜門陣」という。「摆」とは中国語で「敷く、広げる」という意味だ。「竜門陣」という言葉の起源は唐初期の名将・薛仁貴(614~83年)が征東の際に敷いた布陣にさかのぼる。明代や清代になり、四川の各地で民間の芸人が行う講談や芝居で最も取り上げられたのが薛仁貴の話であり、この世間に伝わった話は薛仁貴が敷いた布陣のように真偽不明で聞く者を不思議に思わせた。月日が流れ、「竜門陣」は今では生粋の成都人にとって「ほらを吹く」の代名詞にもなっている。 成都人と北京人は中国で最もおしゃべり好きといわれる。どちらも1日中口を閉じて生活することができないほどおしゃべりだ。成都の「竜門陣」のように北京にも「侃大山(おしゃべり)」という方言があるが、「竜門陣」はそれとは異なり、話をできるだけ詳しくまた大げさに話すだけではなく、生き生きとした様子で味わい深い内容を語り、しかも話が尽きないのだ。たとえ普通の話でも尾ひれを付け、寄り道をしなければ気が済まない。 「摆竜門陣」したければどうしても茶館に行かなくてはならない。それはなぜか。おしゃべりに花を咲かせるならばお茶が欠かせないからだ。お茶がなければ口が乾いて舌が鈍り、聞く者の興味も大幅に減り、話が続かなくなる。だが、お茶があればだいぶ違う。お茶には唾液の分泌を促し、脳を活性化させる効果があり、お茶を一杯飲めば頭がさえて舌も回り、よどみなくしゃべれる。それに茶館は昼夜問わず開いており、くつろげる環境と自由な雰囲気があり、聞く者はより興味を引かれ、話す者はさらに話に熱が入り、茶館の「竜門陣」は自然とにぎやかになっていく。 ふた付き茶器も「竜門陣」も長い時間の中で成都という都市の文化に深々と根付いた。成都人にとって茶館でお茶を飲む行為はこの上なく自然な習慣で、世間の生活の中で故郷を懐かしみ、個人と社会をつなぐ絆の現れだ。茶館は人々の生活の中で変化していったが、成都で最も体験しやすい生活の中の芸術であることは変わりない。
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