文/福井ゆり子 翻訳/編集＝銭海澎

夏休みが明けると、空港の免税店の袋だったり、名の通った地方の銘菓のものだったり、大きな袋を手に出勤する人をよく見かける。オフィスに着くと、同僚から「北海道のお土産です。どうぞ！」とお菓子を手渡される。一斉の休み明けなどには、ちょっとお茶を淹れにいっている間に、机の上にお土産のお菓子の山ができていることもある。

每当暑假一结束，我就总能看到手里提着机场免税店包装袋、或是地方名牌糕点等大包小裹来上班的人。到了办公室，同事递给我一份点心说：“这是北海道的特产，请您品尝！”如果恰逢大家集中休假归来，仅仅泡杯茶的功夫，桌上就会堆满宛若小山一般的糕点礼品。

これは、日本のオフィスでよくある風景だが、どうしてそこまで律儀に全員にきちんと配らねばならないのか、外国人には不思議に映るかもしれない。これは「休暇で留守にしている間、自分の仕事をフォローしていただきありがとうございます」という感謝の気持ちを込めたものであり、楽しかった休暇のおすそ分けという意味もある。

这是日本办公室里的常见风景。但在外国人看来或许不可思议：为什么所有日本人都会严守这一礼节呢？其实这是在表达一种谢意：“感谢您在我休假期间帮我分担工作。”以及想和同事一起分享自己的愉快假期。

和を重んじる日本人にとって、お土産は一部の人だけに渡すというのは好ましくなく、全員に行きわたる必要がある。一人ひとりへ渡すため、個別包装になっていて、所属部署の人数分以上の個数があることが必須だ。そうした事情から、観光地の土産物店には、その土地の名の入った個別包装のお菓子の箱がずらりと並ぶことになる。

对于重视“和”的日本人来说，特产不会只送给一部分人，而是要给到部门所有人。因为要送到每一个人手中，所以要独立包装，数量要超过所属部门的人数。出于这种考虑，景点的特产店里都会将各种印有当地名称的独立包装的点心礼盒摆成排供顾客选购。

土産をみやげと読むのは当て字で、一説には宮笥（みやけ）から来たもので、宮笥とは、神から授かった箱のこと。それが後に転じて各地の特産品（＝土産）がみやげと読まれるようになったという。江戸時代、伊勢神宮へのお参りが庶民の間で大流行し、一生のうち一度は伊勢参りに行きたいというのが庶民の夢であった。

“土产”是“みやげ”的借用汉字，有说法认为，此读音源自读作“みやけ”的“宫笥（sì）”，即被神赐予的盒子。后来转而成为各地特产(土产)的读音。江户时代，百姓中很流行去伊势神宫参拜，有生之年要去伊势神宫参拜一次，是日本百姓的梦想。

しかし、費用も時間もかかり、簡単には行けないため、伊勢参りに行く人は、周囲の人を代表して行くという形になることが多く、人々からお餞別（せんべつ）注１をもらって出かける。

然而，因为旅程需要花费金钱和时间，不是所有人都能轻易实现的，所以去参拜的人，大多是接受了人们的临别馈赠之后，代表身边人前去参拜的。

そのお礼として、神社のお守りやお札（ふだ）注２を持ち帰ったのが「土産」の起こりだ。後に交通手段の発達により、現地名物のお菓子なども持ち帰ることが可能になり、観光地に行くと名物菓子を買って周囲の人のお土産にするという習慣が生まれた。

作为还礼，他们会带回神社的护身符或神牌，这就是“土特产”的起源。此后，随着交通发达，还可以带回当地的名牌糕点等，于是就衍生出每次去景点旅游，都要买些名牌糕点带给周围人做礼品的习惯。

ちなみに、「手土産」というと、人を訪ねていくときに携えてゆく自分の地元の特産品などを指す。また、お土産は普通もらって嬉しいものだが、「置き土産」という言葉になると微妙だ。「鳥の置き土産」といえば糞のことだし、「○○君の置き土産」というと、〇〇君が残していった厄介事のことだったりもする。

顺便说一下，“手土产”是拜访他人时携带的自己所在地的特产等。此外，尽管通常收到礼物会很开心，但“遗留土产（临别纪念品）”这个词的含义就比较微妙了。如果说“鸟的遗留土产”，实际上指的就是鸟粪，说“某人的遗留土产”，就意味着是某人留下的烂摊子、麻烦事。

注釈

注１：お餞別とは遠くに離れていく人に渡す金品のことで、お金であることが多い。お餞別をもらった場合、戻ってきた時には返礼としてお土産を渡すのが一般的。

“饯别”就是赠给去远方的人的贵重物品，多为金钱。接受“饯别”，在返回的时候通常也要带回一些土特产作为还礼。

注２：神社から下賜されるもので、神札ともいい、紙や板などに神社の名前が書かれている。お札が家庭を守ってくれるものであるのに対し、お守り（守札）は身につけて個人的に神の守護を願うもの。

神社赐予的东西，也叫“神牌”，即在纸上或者木板上写上神社的名字。“神牌”是用来保护家庭的，与之相对，“护身符”是随身携带祈求神灵保佑自己的。