写真=長舟真人 文=萩原晶子
自宅や職場とは別の場所に「自分のスペース」を持つ上海人が増えている。アート作品、料理、DIY作品、コーヒー、お酒、本など、自分の好きなもので友人知人をもてなす空間だ。多くが古い住宅街のなかにあり、もちろん看板もなく、評判が良くても「大衆点評」などの口コミアプリには掲載されない。そして、そんなスペースにはねこがいることも定番になっている。
両親も健在だという14歳の豆豆
上海市内に2店舗を構える茶館「喫茶去」のオーナーも、そんなプライベート空間を設けている。場所は、1930年代に京劇役者の梅蘭芳や作家の張愛玲も暮らしたという愚園路。文化財住宅が並ぶ一角の路地の奥深くにあり、対外開放はしていないが口コミで人気が広まっているという。
お茶を飲みながら、NaiNaiと奥里の激しいやりとりを眺める
この店で気ままに暮らしているのが、14歳の豆豆、10カ月のNaiNai、6カ月の奥里だ。どれも友人の家で生まれたねこだそう。対外開放している一般店舗の「喫茶去」に一時的に移動しているねこもいるそうだが、レギュラーとしてお店にいるのはこの3匹。全員オスだ。
髪型みたいな模様と青い目が特徴のNaiNai
いちばん人気は最年長の豆豆。理由は、やはり長くお店にいるので常連たちと仲良くなっているからとのこと。彼に会うためにやってくる人もいるそうだ。どっしりとした風格の豆豆と対照的なのが若い2匹。客の荷物を熱心に点検したり、テーブルに飛び乗ったり、2匹で取っ組み合いが始まったりと、常に若ねこのパワーが全開。血の繋がりのない高齢のおじいさんと、中高生の男子がいっしょに暮らしているようなものだと考えると、見ていて飽きることがない。
ヘビのように細長い奥里。店員いわく「単位は一匹ではなく一条(一本)」
お店で出しているのは、ビンテージのプーアール茶や白茶など通好みの中国茶。平日の昼間なら、貸切り状態の静かな店内でのんびりとお茶とねこを楽しむことができる。利用する場合は、対外開放している「喫茶去」で住所などの確認を。
ねこの音以外は無音。静かな空間でのんびりできる
喫茶去
上海市宝慶路10号2幢2階
※紹介した店舗は愚園路の某所にあります。