于浩 中国企業と協力し革新実現

2020-06-09 10:11:55

王衆一=聞き手

 

于浩 リコーソフトウェア研究所(北京)有限公司董事長兼総経理

ハルビン工業大学工学博士。2013年、リコーソフトウェア研究所(北京)有限公司総経理に就任。18年、リコー(中国)投資有限公司聯席総経理に就任。中国中国語情報処理学会常務理事、中国人工知能学会自然言語理解専門委員会副主任。

 

リコーの販売収入の約70%はコピー機やプリンターなどのOA分野に集中している。しかし、昨年11月に上海で開かれた第2回中国国際輸入博覧会では、リコーは出展内容をOAに限定せず、その優れた製造技術、入念な環境エネルギー技術、精密な医療技術で人々の耳目を一新させた。

今月号からスタートする新コーナー「トップインタビュー」では、王衆一・本誌総編集長が中国国内の日系企業や日本関連機構の責任者との対話を通じ、政治や経済、文化など各分野における両国の最新の変化を紹介する。

第1回はリコーソフトウェア研究所(北京)有限公司董事長兼総経理、リコー(中国)投資有限公司聯席総経理の于浩氏に中国での事業について聞いた。

 

――昨年11月の輸入博でリコーの展示ブースは、おととしの4倍に拡大し、相当数の見学者が訪れました。

 于浩 リコーはおととしの輸入博に参加し、かなりの効果があったため、その時すぐに翌年の輸入博に引き続き参加することを決め、中国で最も市場を開拓できる製品を持ってくるよう準備しました。ブースの面積を拡大し、プリンターのほかにエネルギーや環境、医療分野の新業務と新製品を重点的に紹介しました。

 

――輸入博は今年も開催されます。リコーは人々の目を輝かせるどのような製品を持ってくるのでしょうか?また、于総経理は「閉幕しない輸入博」というコンセプトについてお話しされていたと思いますが。

 于 中国で「閉幕しない輸入博」をつくることが必要だと私は確かに話したことがあります。昨年11月に輸入博に参加した後、12月に江蘇省昆山市でイノベーションセンターを正式にオープンしました。ここはリコーの最新製品を展示するだけでなく、ほかの企業との共同イノベーションの拠点となり、私たちのイノベーションと中国市場をより密接に結び付けます。中国企業や協力パートナー、消費者がここを見学し、検討し、テストし、必要であれば私たちは第2次、第3次の開発を共に行います。こうすれば中国市場のニーズに合致した新製品を機を逸せずに研究開発できます。

 これはリコーの山下良則社長が主張する「現場主義」のさらなる実践です。山下社長は現場のまたその現場へ行くことを繰り返し強調しています。現場主義はもちろん中国の現地での開発とイノベーションを含み、中国の現地での生産を含みます。中国は世界最大の市場の一つです。中国市場のニーズはどこにあるのでしょうか? 現場主義がなければ中国市場のニーズに合った製品を生産できません。中国市場では、研究開発であれ経営判断の決定であれ、往々にして外国企業よりスピードがずっと速いですから、これに追い付くにはやはり現場主義を実践する必要があります。昨年の輸入博でリコーは山下社長のほか、上層部の7人が会場に来ました。

 人々の目を輝かせるどのような製品があるかといえば、私が思い付くのはリコーが紡績業で推しているインクジェットプリンター技術です。ご存じのように捺染はきれいな水を大量に必要とし、汚水の排出が非常に大きな環境問題になっています。リコーのインクジェットプリンター技術はこの問題を解決しました。

 

――イノベーションについてお話しされましたが、中国の技術革新を観察すると、多くの概念は北京のハイテクの中心である中関村から現れ、深圳で生産されています。于総経理は昨年12月に「中関村100企業家クラブ」に参加され、中関村の代表者ともいえます。私の知る限り、日系企業の総経理がこのように呼ばれることは多くありません。

 于 私たちのソフトウェア研究所は中関村にあり、普段から周囲の研究開発企業との交流が比較的多く、彼らを引率して日本のリコー本社を見学したこともあります。中関村のイノベーションはIT中心で、ITは最終的に製造やサービスと結び付ける必要があります。そうでなければイノベーションの目的を実現できません。リコーはちょうど先進的な製造技術を持つ企業なのです。

 企業は短所を補うことでバランスの取れた発展を実現するのだと多くの人が言います。しかし、自身の長所をしっかり伸ばし、ほかの企業に短所を補ってもらうことによって問題をよりよく解決できると私は思います。リコーの製造能力と中関村のIT開発は、ちょうど相互補完の関係にあります。私自身、懸命に中関村の企業家の関連活動に参加し、多くの企業家や起業家と知り合いました。

 懸命に中国の企業家や起業家と協力していけば信頼を得られます。リコーは日系企業で、現場主義を実践しています。真剣に自分の本質的な仕事をすれば、必ず中国企業の評価を得られます。

 

リコーの太陽光発電所の無人スマート点検システムを体験し、ドローンの撮影した画像をゴーグルで確認する山下良則リコー社長(左)(写真提供・リコーソフトウェア研究所(北京)有限公司)

 

――中日の人と人の相互信頼、国と国の相互信頼は現在ますます重要になっています。

 于 相互信頼は協力とウインウインの基礎で、互いをしっかり理解すれば疑念を抱かないでいられるようになります。この2年間、中日の民間感情は好転し、相互理解の基礎ができました。

 過去、日本の技術はほぼ中国よりも進んでいましたが、現在の中国には非常に先進的で優れた技術があります。相手を再認識し、相互信頼メカニズムを構築することが以前のどの時代よりもいっそう重要になりました。企業も同様で、私たちは昆山のイノベーションセンターで開放・イノベーションモデルを実施し、あらゆる企業との協力を望んでいます。協力についていえば、相互信頼がなければ一緒に協力できませんし、また、開放・イノベーションの大胆な模索がなければ中国におけるリコーの発展と成長も語れません。

 

総編集長のつぶやき

日系の大企業で董事長や総経理を務める中国籍の社員は少ない。言い換えれば、日系企業の現地化、あるいはリコーの用語で言う「現場主義」の役割の発揮にはまだ非常に大きな余地がある。于総経理の「閉幕しない輸入博」のコンセプト、北京の中関村での中国企業との協力、昆山のイノベーションセンターで進める開放・イノベーションモデルが強く印象に残った。

 

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