世界の注目集めたこの5年「一帯一路」構想や反腐敗

2017-12-27 13:45:20

 

2012年11月に開催された中国共産党第18回全国代表大会(党大会、18大)からの5年間、中国から世界が受けた強烈な印象は何だったのでしょうか。反腐敗キャンペーンの大々的展開、中国が資本の純輸出国(対外投資の規模が外資導入のそれを上回ること)になったこと、そして、「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」構想への世界的支持の拡大、さらに、中国がBRICSなどの首脳会議の場でグローバルガバナンス改革の必要性を提唱していることなどが上位にランクされるのではないでしょか。

国有企業を100社以下に

反腐敗キャンペーンは、今も継続中ですが、未曾有の規模だったと考えられます。「打老虎拍蒼蝿猟狐(トラを打ち、ハエをたたき、キツネ、タヌキを狩る)」との表現がよく紙面をにぎわせたものです。未曾有とは、例えば、「打大老虎(腐敗調査を受けた省部<大臣クラス>以上の高官など)」が137人に及んでいること8項規定で調査・処分された人が24万4000人に達したことなどが指摘できます(注1)。腐敗はどの国にもありますが、短期間にこれほど大胆かつ大規模に展開した反腐敗キャンペーンはなかったのではないでしょうか。中国では、同じく過去5年間に「創新」が大々的に提唱され世界の関心を呼びました。創新とは「新しいものを生み出す」ことですが、反腐敗キャンペーンはそのための大手術でもありました。目下、国有企業の大改革が進行中です。例えば、200社近くあった中央直轄の国有企業が吸収合併などにより、今や、100社を切っています。こちらも、反腐敗キャンペーンと同じく未曾有の規模であり、中国の社会主義市場経済の新たな発展への大いなる布石といえます。

世界第2位の対外投資国に

中国商務部(日本の省)によれば、中国が資本の純輸出国となったのは14年でした。昨年の対外直接投資(非金融類)は、「一帯一路」沿線国への投資が増えたことなどを背景に、前年比441%増(1701億1000万㌦)と大幅増となりました。ちなみに、「一帯一路」沿線52カ国への中国企業の投資(今年1~8月)は、同期の中国対外投資の12・5%を占めています。また、今年6月、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、世界投資レポートの中で、中国の対外投資が1830億㌦(前年比44%増)となり、外資導入額(1340億㌦)を大きく(36%)上回り、初めて世界第2位の対外投資国になったとしています。最近では、自転車シェアリングの中国モデルが世界各国に輸出・実践されるなど、中国企業の海外展開(走出去)は、新たな展開をみせつつあること、さらに、「一帯一路」構想、国際産能協力(注2)の進展が期待できることから、今後も世界経済の行方に大きく影響すると考えられます。

改革開放政策の国際化の面

13年に習近平国家主席によって提起された「一帯一路」構想には、改革開放政策の国際化の側面があります。その改革開放政策は、手短にいうと、外資導入による経済発展戦略でした。まず、外資導入のための拠点づくり(経済特区や経済技術開発区等)とインフラ整備を先行させ、関連政策がこれに続きました。「一帯一路」構想でも、主要事業が沿線国のインフラ整備(都市化)であること、外資導入拠点として中国と当該国との協力による海外経貿協力区(「一帯一路」沿線20カ国余に56カ所)が設置されているなど共通点が多々認められます。改革開放政策は中国一国の政策ですが、「一帯一路」構想には60カ国余が参加しています。「一帯一路」構想を改革開放政策の国際化とするゆえんです。改革開放政策には課題もありますが、世界経済にとってはるかにマイナス面よりプラス面が大きく、同じことが「一帯一路」構想にも期待できるとみる識者は少なくありません。

BRICSの拡大を目指す

5月に開催された「一帯一路国際サミットフォーラム(北京フォーラム)」、9月に福建省廈門(アモイ)市で開かれたBRICS首脳会議に世界の目が集まりました。注目すべきは、習主席が北京フォーラムの基調講演で「一帯一路」FTA(自由貿易協定)の構築を対外的に初めて公言したこと、BRICS首脳会議の講話でグローバルガバナンスの改革を推進し新興市場国と途上国の発言権を高める必要性を強調した点です。保護主義や反グローバリズムの台頭など、今、世界は大きな変革の節目を迎えています。北京フォーラムやBRICS首脳会議は、こうした風潮へのアンチテーゼ発信の場ともいえるのではないでしょうか。その成果として、例えば、中国が提案した「共商、共建、共享」(共に協議し、共に建設し、共に分かち合う)の「共に」の協力姿勢を前面に押し出している「一帯一路」構想の指導原則が、今年911日、第71回国連総会の決議に盛り込まれました。反グローバリズムとは対極にある「一帯一路」構想が世界的認知を得て、支持を獲得しつつあるということになります。

また、BRICS首脳会談では、「BRICS」(拡大BRICS)への言及が目立ちました。9月にこんな発表がありました(注3)。30年の経済大国上位10傑(PPP方式による)は、中国、米国、インド、日本、インドネシア、ロシア、ドイツ、ブラジル、メキシコ、英国の順となり、BRICS4カ国が10傑入りしています。「BRICS」の「+」を新規加盟国とみた場合、今後、インドネシアとメキシコが、さらに、12位のトルコ、13位のサウジアラビアなどが、「」となる可能性が考えられます。今や、BRICSの経済規模は、国内総生産(GDP)にして、世界全体の23%、貿易総額は16%、対外投資額では12%ですが、世界経済の成長率への寄与率は50%です。「BRICS」ともなれば、寄与率はさらに高まります。新興市場国と途上国を代表するとされるBRICSが、アモイ首脳会議でグローバルガバナンスの改革に言及するのは時流といえるのではないでしょうか。

「世界の公共財」として開放

まだ、言及されてはいませんが、「一帯一路」もあるでしょう。この「+」にはいろいろありますが、筆者は、習主席が国家間交流の指導原則とした「伙伴関係(パートナーシップ)」(注4)もこの「+」になると考えます。すでに、中国は約90カ国・国際機関と世界的規模の伙伴関係ネットワークを構築しています。伙伴関係の最大の特徴は共同声明をもって構築・格上げされる点です。拘束力を伴わず、信頼関係に基づいて構築されるという点で、当事国の事情、都合をより反映できる融通性があり、妥協と譲歩による交渉の成果として構築されるFTAとは一線を画しています。「和をもって尊しとなす」の東洋の知恵が伙伴関係の真骨頂といってよいでしょう。中国は、「一帯一路」を「世界の公共財」とし、門戸を世界に開放しています。先述した「一帯一路」FTAは、伙伴関係に介在した、これまでにない新たな発想に基づいたものになるのではないでしょうか。

中国に起こっている変化は、隣国日本にもますます密接に関わってきています。近年話題となった「爆買い」もその好例といえます。過去5年間に中国のGDPは規模にして日本の2倍以上になりました。新たな日中関係を構築する時代を迎えているといっても過言ではないでしょう。

 

注1 キツネ、タヌキ狩りとは国外逃亡者の逮捕。8項規定は党員、公務員などへの綱紀粛正策。中国経済網総合(7月24日)、『経済日報』(8月29日)。

注2 中国企業主導ないし先進国企業との連携で第三国(「一帯一路」沿線国等)に投資する形態。産業輸出ともいう。

注3 プライスウォーターハウスクーパースの発表。参考消息網(9月5日)

注4 戦略、全面、協力、競作、全天候、全方位、互恵、創新、友好の組み合わせ(全面戦略伙伴関係等15種類)からなる。日本とは未構築。

 

人民中国インターネット版

 

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