深刻な中米貿易摩擦の影響 米国自ら戦後国際秩序の変更意図

2018-05-31 13:47:55

文=陳言 

 もし世界が昨年のドナルド・トランプ大統領登場後の施政理念に対して、不確定さを感じていたと言うならば、今年、トランプ大統領が挑発した中米貿易摩擦は次第に確定的な出来事に変わってきている。中米が2カ月後に本当に相手側に対して1500億㌦の商品に高額関税政策を実行するのかどうか、これは5月になっても不確定だろう。私たちが今日確定できるのは、第2次世界大戦以後の国際秩序にまもなく重大な変化が生じるかもしれないということである。 
 第2次世界大戦後の国際秩序は米国を中心として構築されたというべきだろう。国際関係の面では国連があり、国際経済の面では世界銀行、国際通貨基金(IMF)と世界貿易機関(WTO)がある。私たちが今日見ているのは、トランプ大統領が躍起になって、これらの米国主導の国際秩序を混乱に陥れている、ということである。彼がどのような新秩序を構築しようとしているのか、現在、彼自身も知らないだろうし、米国共和党員も明確ではなく、政治、経済分野の評論家が話していることはいっそう信用できないだろう。

 

日米貿易戦争が残したもの 

 多くの読者の皆さんは、おそらく1957年以後の日米貿易摩擦、貿易戦争について、筆者よりも記憶が鮮明だろう。 
 戦後復興期の日本は、57年前後になると、米国の繊維市場に対する挑戦を開始し、日米繊維摩擦が発生し、70年代初頭になってやっと基本的に終わりを告げた。しかし、それまでに、日米鉄鋼戦争が起き、最も激しかったのは60年代末期から70年代末期の期間だった。70年代初期、鉄鋼戦争が最も激しかった時期に、日本製カラーテレビの対米輸出は、先方の市場に衝撃を与え、カラーテレビ戦争ののろしが四方八方から上がり、その後20年に及ぶ日米カラーテレビ戦争が火花を散らした。米国議会議員が激怒してハンマーで日本製カラーテレビをたたき壊す壮烈な場面の写真は深い印象を与えた。鉄鋼戦争が収束するや否や、日米自動車戦争が開戦し、80年代を通して、この戦争が両国経済関係の主旋律になっていた。ほぼ同じ時期、80年代末には日米半導体戦争、日米電気通信戦争という二つの新しい戦場で戦いが始まった。全面的な日米貿易戦争はこの時期が最も壮観だった。 
 日本が世界第2の経済国だっただけに、日米貿易戦争はますます拡大した。この戦争の結果、日本の産業、経済は破壊されることもなく、逆に日本の産業の技術向上が促され、新たな技術的レベルアップと世界市場に進出する新しい原動力がもたらされた。 
 もう一つ説明しておかなければならないのは、米国がどのように本国産業を保護しようとしても、日本と貿易戦争を展開した分野、関連企業が最終的に再度繁栄を取り戻すことはなかった点である。米国の繊維、鉄鋼、家電、自動車、電気通信設備が世界の最前列に並ぶことはできなかった(半導体を除く)。米国は外部との貿易戦争を通じて、国内産業のモデルチェンジの時間を稼ぎ、依然として世界的な主要製造業を保有しながらインターネット革命を実現させ、グーグル、フェイスブック、アマゾン、ツイッターなどの一連の世界トップレベルの企業が頭角を現し、その他の国の従来型産業に対する絶え間ない挑戦によって生まれた刷新能力は、最終的には巨大な成果を獲得した。 

 

日米貿易戦争とはけた違い 
 40年余りにわたった日米貿易戦争は、基本的に日米間の出来事であり、国際社会はその結果を静観しただけで、口出しできるところは多くなかった。 
 中米貿易は中国税関の統計によると、昨年の輸出入総額は3兆9500億元、中国の輸出入総額の14・2%を占める。そのうち対米輸出は2兆9100億元、米国からの輸入は1兆400億元で、対米貿易黒字は1兆8700億元である。税関統計によると、中国は輸出ではパソコン、スマートフォンや玩具などが強い。一方、輸入では半導体が主で、天然ガスや鉄鉱石などの資源もある。 
 かつての日米貿易摩擦は数十億㌦で、最多でも数百億㌦規模だったが、現在、中米貿易摩擦は数千億㌦に達し、日米摩擦の時の日本とはけた違いだ。日米貿易摩擦当時、日本企業が生産した産品、部品などは主として日本の中小企業が提供したもので、対米輸出したブランドも完全に日本製だった。今日、中国から米国に輸出されているパソコン、携帯電話の大部分は米国ブランドであり、米国企業が中国で生産しているもので、部品を提供している企業は中国にとどまらず、米国の在中国企業や多数の日本、中国台湾の企業が含まれる。中米貿易は世界貿易の一部なのだ。 
 中米貿易の差額は極めて大きいが、もし単純に中国が米国からお金を儲けていると考えれば、中韓貿易では中国側が赤字であり、中国大陸部と台湾との貿易は、2016年の1年間に、大陸部は台湾のために1000億㌦の黒字を提供しているが、この問題はどのように解釈すべきなのか? 
 米国は中国大陸部に太い棍棒を振りかざしているが、最も緊張しているのは中国台湾である。米国は中国の電気通信設備産業を攻撃しているように見えるが、最終的に損失の大部分は台湾企業が負担するか、あるいは台湾企業が稼げなくなるかもしれない。グローバル化した生産体制はトランプ大統領が引っかき回した結果、すぐに混乱が始まった。

  

米国の体力が低下した現れ 
 グローバル化した生産、消費体制には確かに問題が起きており、現在、推進すべきなのは改革と調整だが、トランプ大統領の「戦争パターン」は世界各国の共鳴を得られまい。 
 東西冷戦時、両陣営の対決に見えたが、各陣営の内部は多面的だった。冷戦後にグローバル化現象が出現し、あらゆる事柄が多面的になった。グローバル化の影響下、資本は最も稼げる場所に移動するが、商品価値を生み出す労働力は多くの国で国内の具体的な地域に限定されている。それによって一つの国家の中に貧富の格差が拡大する現象はますます強烈になった。国家は資本からいかにして税収を上げるか?国の管理の範囲内で分配の基本的な合理性とおおよその公平を実現することが、政治家が真っ先に解決すべき問題である。 
 多面的なグローバル化がもたらした問題を見ると、有無を言わさず真っ先に国際機関から脱退し、一対一の交易体制を採用し、再度、本国とその他の国との関係を確立するという、トランプ大統領の手法はかなり単純である。トランプ大統領の単純、粗暴なやり方は米国の国力が急降下し、国際関係の処理に対する無策の具体的な現れだと思われる。

 

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