EV時代到来で新たな協力 中国企業と連携模索する静岡県

2018-10-31 19:04:28

陳言=文

 「北京秋天」。1年のうちで北京は秋が最も爽快で、天気は特に良く、果物は非常に甘美なので、安倍晋三首相が北京訪問を10月に設定したのは、最も良い時期を選択したといえる。

 中日経済関係は中米貿易摩擦がますます緊迫している今、かなり顕著な改善が見え始めている。中日両国は共に自由貿易の原則を擁護する国である。現在、世界的な貿易システムは多少動揺しているが、最終的には貿易拡大路線を歩んでいて、中日両国が原則を堅持していることが、世界各国の賛同を得ているのは間違いない。

 

EVは産業協力の新推進力

 日本車の米国および他国での販売情況は衆目の一致するところであり、ここでは多くの説明を要しないだろう。ところが、日本車メーカーは対中出資が欧米企業に比べて遅く、同時に韓国企業のような集中力もなく、長い間いまだに中国市場でナンバーワンを手に入れたことがない。韓国車メーカーの態勢に混乱が見えた後も、依然としてドイツ系企業、米国系企業との競争に苦戦している。

 電気自動車(EV)時代の到来は、日系自動車の中国における販売戦略の遅れていた局面に大きな変化を引き起こしている。

 2018年8月27日、日産ブランドのEVシルフィゼロエミッションが広州花都工場で生産され始めた。日産の新工場はすでに計画を達成し、中国における生産能力の3割増を実現していく。中国で最も売れ筋の日産車はシルフィであり、現在、この車のEVバージョンを売り出し、価格は16万6000元で、日本国内の販売価格に比べて安く、中国産EVと比べても、十分な競争力を持っている。

 トヨタ、ホンダも中国におけるEVの生産と販売を加速している。トヨタは広州新工場の年間生産量を20万台とし、その上、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)の生産も可能だ。また、従来の広州、天津工場は生産量をそれぞれ12万台増やし、同社の中国における生産量を40万台以上増加する。ホンダは19年に武漢工場を正式に稼働する外に、広州工場を強化する計画を持っている。同社の中国で最高の売れ筋のスポーツタイプ多目的車(SUV)は、今後、EVバージョンも売り出す構えだ。

 一方、商社もEV向けの投資に着手した。日本メディアの8月30日の報道によると、伊藤忠商事は第三者割当増資方式によって、EV企業の奇点汽車に出資する。

 注意深い読者はおそらく8月28日の報道によって、中国電力企業連合会と日本のチャデモ(CHAdeMO=急速充電方法の商標名)協議会が充電技術共同開発関連の協定に調印したことをご存じだろう。20年前後に、中日両国はEV急速充電規格の統一を実現する。両国が充電規格の統一を実現すれば、世界シェアの95%が中日統一規格を直接受けることになり、実際上、世界規格となる。

 EV時代が到来し、日本企業の中国における投資、統一規格策定などの面で、当面の不利な状況は一挙に変わる。「カーブで追い越す」戦略の結果、日本が中国における自動車生産および販売大国の地位を獲得することは間違いない。

 

部品製造で新たな協力模索

 筆者は、静岡県の浜松地域イノベーション推進機構次世代自動車センターを訪ね、望月英二センター長にお会いする機会があった。同氏は自動車エンジン設計の著名な専門家で、自動車がエンジンからモーターに転換しつつある今、彼はためらわずに同センター長を引き受け、どのように日本の既存の技術と生産能力を使うべきか考え、次世代自動車発展と同時に、中国企業との協力関係を構築しようとしている。

 自動車の新製品を生産する際に、実験用部品の製造は非常に重要な役割を果たすが、EV時代になっても情況は変わらない。良い試作車を生産して、初めて合格車を試験生産できる。日本企業はこの方面で強みを発揮してきた。

 望月氏は、中国を訪れ工場を視察する際に、自動車産業に限定せず、見ることができる工場は全て見て回った。そして、自動車、電子部品を問わず、中国企業の進歩は速いが、日本は半世紀以上の試行錯誤の経験のおかげで、依然として多くの分野で先んじていることに気が付いた。

 「問題は、日本が持っている試作技術が、いまだに中国企業に知られていないところにあります。また、中国市場の試作品に対する需要が、いまだにスムーズに日本に伝達されていません。日本と中国が協力できる分野は多いのですが、好ましい協力関係は始まっていません」と、同氏は中日技術交流、情報チャンネルがスムーズでないことを嘆いていた。もしこのような交流が頻繁に行われれば、中国はEV、小型無人機(ドローン)などの新産業を含めた技術のレベルアップを迅速に実現できる。また、日本企業もこうした新しい協力関係によって、業務を拡大する機会を探し当てられる。

 EVという新勢力が突然現れ、中日企業に新しい機会をもたらした。これらの機会を生かすためには、新組織を構築し、新しい運営方式を導入すべきだ。

 

注目の静岡県産業振興財団

 もし浜松地域イノベーション推進機構が次世代自動車の分野でブレークスルーの模索を準備しているとすれば、静岡県のもう一つの公益財団法人「静岡県産業振興財団」の手法も、非常に人目を引く。

 静岡県はスズキ、ヤマハなどの著名な企業の発祥地であり、今でも医療研究開発、機械産業、農業を主産業とする大きな県だ。県内の多数の中小企業は現地の大企業を支えているだけでなく、日本産業の重要な部品サプライヤーだ。ここ数年、日本の経済成長は回復傾向にあるが、どのようにして県内企業に既存の枠を打破させて新しい発展を実現するか、静岡県は産業振興財団を設立し、特許庁も国家的な角度から一定の支援を行っている。

 この財団の事業プロデューサー、増山達也氏は、特に推薦している20件余りのプロジェクトを筆者に細かく紹介してくれた。その中には、無添加高濃縮ジュース、地酒、子どもに英会話を教えるロボット、自転車用品などに塗る夜光塗料などが含まれる。静岡県は県内の技術をパッケージにして、対外的に積極的な宣伝を始めたが、逆に言えば、中国企業は自分たちが必要としている技術を財団経由で、日本側の協力企業を探すことが完全に可能になったということだ。

 中日経済関係が急速に改善している今、両国間に情報交流の新ルートを構築し、両国経済交流の新コンテンツ、新方式の模索にはすでに時間的な猶予はない。

 

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