5G研究開発でも底力 変わらぬファーウェイの世界的優位

2019-05-08 20:26:07

文=陳言 

ファーウェイ(華為技術)の創業者兼最高経営責任者(CEO)である任正非氏は、米国などの国々によって同社の第5世代移動通信システム「5G」が攻撃や排除にさらされている問題に言及する際、悩みや苦痛があるような表情を少しも見せない。技術に関する研究開発上の困難や国際情勢の不確実性に直面して、同社はいささかも油断をしない構えだ。ファーウェイにとって来たるべき困難がやって来ただけのことであり、ほとんど困惑していないようだ。

任氏は公式の場に出ることが少ないが、ある会議に姿を見せて意味深長な発言を行った。「ファーウェイは城壁に突破口を設定して、それに照準を合わせて突撃し続けなければならない」。この突撃という言葉は、技術面における不断の研究開発によって、技術的および国際環境上のいかなる困難も克服する、という意味だと理解できる。

 

 

国際特許の出願件数は世界一

 ファーウェイの注目ポイントは、日常使っているスマートフォンの他に、情報通信技術(ICT)ソリューションの分野でサプライヤーの地位にあることだ。ファーウェイは通信事業者、企業、端末、クラウドコンピューティング、端末機器同士のソリューションの分野で優位に立ち、通信キャリア、企業、消費者に競争力のあるICTソリューション、製品、サービスを提供している。分かりやすく言えば、技術競争が5Gの分野に集約されている今日において、同社は5Gによって自らのソリューションを実現しようとしている。

 任氏は次のように述べた。「ファーウェイには8万人余りの研究開発スタッフがいて、毎年、研究開発費の2030%を研究とイノベーションに使い、70%を製品開発に投じている。われわれは早い段階から、売り上げ収入の10%以上を研究開発費に使ってきた。今後数年のうちに、年間の研究開発費を100~200億㌦に上げていく」。日本企業を見渡しても、年間1~2兆円の研究開発費を投じている企業は今のところ少ない。

 世界知的所有権機関(WIPO)は3月19日に2018年度のリポートを発表した。これによると、ファーウェイが昨年提出した国際特許出願件数は5405件に上り、全世界の企業の中で1位だった。世界の出願件数の2・1%を占め、中国の出願件数の10・1%だった。

 昨年の国際特許出願件数トップ10企業は以下の通り。ファーウェイ(中国)、三菱電機(日本)、インテル(米国)、クアルコム(米国)、中興通訊(ZTE、中国)、サムスン(韓国)、京東商城(JDドットコム、中国)、LGエレクトロニクス(韓国)、エリクソン(スウェーデン)、ボッシュ(ドイツ)で、中国企業が3社入っている。業界別で見ると、10社のうち三菱電機とボッシュを除く8社がITテクノロジー関連企業だった。

2、3年内に米国追い抜く

 ファーウェイの突然の登場は中国のイノベーションの概念を変え、世界の研究開発も一変させた。

 1987年に深圳で創業した当時のファーウェイは、大多数の企業と同様、もの(電話交換機)を造って売る企業であり、30年後に世界に影響を与えるような巨大企業に成長するとは誰も想像しなかった。

 中国の経済発展そのものが世界の中国に対するイメージを覆した。87年はすでに改革開放から10年近く経過していたが、中国の国内総生産(GDP)はわずか1兆2294億元(3303億㌦)に過ぎなかった。それが2018年には、国際通貨基金(IMF)のデータによるとすでに88兆5634億元(13兆4572億㌦)に達し、人民元ベースで計算すると72倍に成長し、ドルベースだと40倍以上になっている。

 驚異的な経済成長が中国企業に急速な成長をもたらしたことは間違いなく、ファーウェイの出現は経済的必然だった。単純に海外から技術を導入するだけでは、中国国内の経済の発展に対する需要を満足させられない。国内市場の発展速度を上回る態勢で研究開発にまい進したのが、同社と他の中国企業の最大の違いだろう。こうして同社は最終的に中国企業の最前線に立ち、今日では世界企業の中でも超一流と言っても過言ではない地位にある。

 ファーウェイのような企業が率先して研究開発を重視していることから、中国は国際特許出願で「追い付き追い越せ」を実現している。ここでもう一度WIPOリポートを読むと、昨年の全世界の国際特許出願件数は25万3000件で、その内訳は米国=5万6142件、中国=5万3345件、日本=4万9702件、ドイツ=1万9883件。ファーウェイの研究開発投資と、同社のけん引の下で加速する中国企業の研究開発のスピードと投資額から見て、今後2、3年以内で米国を追い抜くのはさほど難しいことではない。

 

 

ファーウェイと深圳地下鉄の提携によって同市の福田交通ターミナルに設置された「5G+人工知能」体験エリアでは、顔認識システムを使って「顔パス」で素早く改札を通過できるようになっている(東方IC

 

欧州ではファーウェイ支持多数

 ファーウェイの猛進撃に直面した米国はさらに厳しい方法でファーウェイに圧力をかける。米国の一部同盟国も、国内の大学が中国企業や中国人学者と交流することに制限をかけるなどの方法で、ファーウェイの影響を徹底的に排除しようとしている。その上で、米国を中心とした5Gシステムを構築しようとしている可能性が高い。

 しかし、研究開発のスピード、研究開発費の成長率、製品販売の増加量、設備投資の増加率において、ファーウェイを上回る企業が現れるだろうか。世界企業に対する筆者の理解に基づいて言えば、今後3~5年間は不可能だと思われる。欧州の大部分の国はそうした見方に立ち、ドイツなどはファーウェイ側に立っている。欧州連合(EU)は今年3月下旬、ファーウェイ排除は加盟国の判断に委ねるとして、米国とは異なる対応を示した。世界的に見ても、その他の国々は5Gの分野でファーウェイ製品の継続使用を決めている。

 こうした状況下で、米国およびその一部の同盟国はファーウェイ以外によって5Gシステムを構築しようとしているが、システムの動作速度、設備造成費用などの面で、中国企業と肩を並べるのは困難だろう。米国が後手に回ることは、ファーウェイに対する抑圧と5G分野に対する保守的な態度によって、現実になってしまうかもしれない。一方、米国に何もかも追随するその他の国々で、ファーウェイをしのぐ企業が出現するかはさらに予測不可能だ。

 中国の技術革新において、ファーウェイは非常に重要な位置を占めている。同社が米国やその同盟国の圧力や排除を受けても正しい道を進み、持続的に研究開発とイノベーションを展開していけば、自身の未来が有望であるだけでなく、中国にも5Gなどの分野での発展について自信を付けることになるだろう。

 
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