感染症対策とデジタル経済で協力 急務の共同防疫メカニズム構築

2021-04-28 10:53:28

陳言=文

3月後半の時点で、日本の新型コロナウイルスの感染者数は下げ止まり状態のようだ。だが欧米などからのワクチン輸入が軌道に乗りつつあり、感染拡大防止の方法はさらに多様で有効になっている。

中国では先月、全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議の「両会」が開催された。新型コロナは一貫してコントロール可能な範囲に抑え込まれている。中国の医薬品製造の数社が新型コロナワクチンを研究・開発し、国内で使用するだけでなく、多くの国に援助している。昨年末には、日本でも中国製ワクチンに関心を持つ人がいたが、新型コロナ発生以前はまれな現象だった。

日本の新聞を読むと、自由で開かれたインド太平洋構想に関する記事をよく見る。一方で、中国が他国にワクチンを援助している行為を「ワクチン外交」と決めつけて報じる記事もかなり目立つ。これは、日本の各種の世論調査における中国に対する国民感情が、依然として非常に厳しいことを裏付けている。

しかし経済の分野では、現下の新型コロナ対策であれ、経済復興時のデジタル方式導入であれ、中日が協力できる分野は非常に多い。また、こうした協力は人為的な障害を乗り越えるだけでなく、中日両国民の相互理解を深める役割を発揮し、両国が今後それぞれ経済を発展させ、アジアや世界のために共同で貢献する基礎となる。

 

中日の新たな防疫協力へ

本誌2月号で、筆者は新型コロナ対策の中日の相違から、両国相互の学び合いと協力の必要性について述べた。今回は角度を変えて、再び中日の新型コロナ対策における協力について述べたい。

インフルエンザウイルスのように、新型コロナウイルスも遺伝子情報を解読し、その変異結果から新たな感染の規模を予測できる。関連する論文を読むと、武漢で最初に見つかった新型コロナウイルスは数カ月後にはほとんど見つからず、「D614G」という欧州由来の変異型が日本でも比較的多くの感染者を発生させた。

全世界でウイルスに対する追跡を行って、その追跡結果を直ちに共有する――これが今回の新型コロナの発生後、国際的な防疫分野で現れた一大変化だ。例えば昨年12月、ジョンソン英首相が速やかに同国国民に、変異株「N501Y」出現の警戒情報を発した。英国のタイムリーな追跡と警告により変異株による猛威は縮小された。

中日両国は人口密度が高く国内交通は便利で、いったん感染症が発生すると感染症の拡大速度は相対的に欧米を上回るので、中日間の感染症情報の協力はより緊急性がある。追跡・早期警戒の面で協力してこそ、中日両国は共に困難を乗り切ることができる。

だが残念なことに、この面での協力がどれだけ行われているか、メディアの報道を見る限りでは多いとは言えないようだ。今回の感染症拡大に限らず、今後の中日防疫協力において両国は速やかに重視し、関連する協力メカニズムを構築すべきだ。

日本はインフルエンザワクチンの研究・開発大国で、インフルエンザに対するコントロールもタイムリーで効果的だ。しかし、新型コロナの発生後、日本の緊急対応はかなり遅く、これまでいくつかの機関などがワクチンの研究・開発を行っているとはいえ、先月初旬までに市場に提供できるワクチンは開発されていない。一方、中国ではすでに数タイプのワクチンが現れている。中日間には、ワクチンの研究・開発面で協力できる大きな余地が残されているはずだ。

 

理系大学生は日本の15倍

従来型の製造業に着目すると、中国は製造大国だが、技術・製品の各方面において、依然として日本との間に差があり、両国の産業には広大な提携の空間が広がっている。

桜美林大学の雷海濤教授は2月に開かれた公開フォーラムで、2019年に中国の大学生の中で理科系の学生数は177万人で、同年の日本は11万人にすぎなかったとし、「中国の理科系の学生数は日本の15倍だ」と指摘した。豊富な人材を持つことが中国の製造業などの急速な発展の前提条件である。

産業面から見て、雷教授の目には日本の企業は次のように映っているのだろう――日本企業は基礎材料や部品の研究・開発では世界の先頭を行き、中国企業は完成品の組み立てやアプリケーションソフトの研究・開発およびインターネットプラットフォームの構築に特徴がある。「中日両国企業は完全にウインウインできる」と雷教授は言う。サービスなどの分野では、日本の「おもてなし」やアニメは両国が今後開拓できる協力分野でもある。

中国の産業は、コア技術・先端技術における対外依存を解決し、労働コスト上昇後の新たな産業の方向を早急に探し出し、サービス業の相対的な立ち遅れを解決する方法を模索しなければならない。また、生産過程で製品の品質を向上させ、より多くの世界ブランドという栄冠を手にしなければならない。こうした面で、日本企業から学ぶべきことはまだ多く、これも中日の企業がより多く、より広い提携に向かう基礎である。

 

遠隔地の病院とオンライン形式で診療会議を行う河南省人民病院の医師たち(新華社)

 

デジタル協力の大きな可能性

今年2月12日の春節(旧正月)の前後から、デジタル人民元の試験的な使用が北京や上海、成都など多くの都市で始まった。デジタル化で中国は世界の最先端を歩んでいる。

新型コロナの拡大はデジタル化の普及に拍車を掛けた。今日の中国人の買い物や診察、受講、旅行、外食は、デジタルサポートなしではほとんど想像できない。筆者は過去1年余りの間に、毎月のように北京から他の省や市に取材に出掛けたが、新型コロナ感染の有無などを表示するスマートフォンの健康コードが外出に支障がないことを保証してくれた。健康コードは、筆者が感染の高リスク地区に立ち入っていないことや、感染者との濃厚接触がないことを示し、これがあれば健康な人としてどこでも行きたいところに行ける。

経済発展が比較的遅れている貴州省で、筆者はデジタル化の行政管理を目の当たりにした。貧困住民に対する補助金の支給はもちろん、山間部のまだ貧困状態にある村民への職業あっせんも基本的にデジタルプラットフォーム上で行い、全てが公開され透明だ。中国企業の信用状況や納税情況などの大部分の情報はネット上でチェックでき、貴州のビジネス環境は大幅に改善されていた。

今後、デジタル経済に対していかなる政策を取るのか。例えば、課税方法やデジタル経済の越境管理など解決すべき問題は多い。中日がいかにして法律面で健全なデジタル経済に貢献しうるか、両国が検討すべき分野は同様に広く大きい。

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