経済安全保障の動きに懸念 今こそ中日の科学文化交流を

2021-05-26 11:02:05

陳言=文

日本に行って日本を見るのと、中国から日本を眺めるのとでは、出て来る結論は全く異なる。新型コロナウイルス感染症の発生以来、筆者はすでに1年半も東京を訪問していない。こんなに長いこと日本から離れたのは、過去30年来初めてだ。いつになったら日本を訪ねることができるのか、今のところ、全く不確実だ。

米国トランプ前大統領が対中ハイテク「デカップリング(切り離し)」を発動して以来、日本は2018年からファーウェイなどの中国企業に対して、米国に匹敵する厳格な「排除」政策を取っている。この傾向は新型コロナが猛威を振るう前から徐々に習慣化していた。国際分業や域内貿易の観点から、日米ができることは大体この程度だと考える人も少なくないが、このままこのすう勢が続けば、世界経済は分離・混乱・再編の段階に入るだろう。

昨年の新型コロナのまん延が世界経済の発展を阻害したのか、それとも世界経済本来の秩序がすでに疲弊しているのか、これはもはや適切な結果を見いだすことができない。世界経済全体が停滞段階に入った後、どのような要素が経済の発展をさらに制約し、またどのような要素が抵抗を打ち破って、さらに世界経済を発展させられるのか。中日関係の新たな変化が注目されている。

 

日本は中国を狙い撃ち?

ファーウェイなど中国企業に対する米国の規制は、世論があおり立て、議会も居丈高になって攻勢をかけたが、実際にファーウェイへの関連半導体部品の輸出規制措置を決めた段階では、まず120日延期した後、さらに120日延期するということが数回繰り返されている。半導体メーカーによってそれぞれ言い分が異なるが、いずれもファーウェイとの取引関係を極力維持しようとし、ファーウェイに対して政策的に即効性のある制限は多くはなかった。

これに対して日本では、政府関係者が方針を発表すると禁止命令を出し、政府の規制が直ちに実行されたばかりか、規制されていない部分でも企業は貝のように口を閉ざし、戦々恐々としている。日本企業は、政府の発言の後には直ちに関連する手が打たれ、法律が作られることを知っているからだ。

日本は昨年4月、内閣官房の国家安全保障局(NSS)に「経済班」を発足させた。日本のメディアは、主な対象として中国に狙いを付けたというにおいをかぎ取った。関連法が鳴り物入りで準備され始めた。特段の事情がない限り、来年中には関連法は発表され、日本経済の国家安全保障戦略が打ち出されそうだ。

筆者は法律の研究には疎いが、日本のメディアが報じる政治家や官僚に対するインタビュー内容から見ると、日本はこれまで通り米国側に立ち、対中方針など各面で、米国と同一歩調をとっている。言い換えれば、ハイテク分野での中国との往来を制限することは、確率の高い出来事に違いない。1972年に中日国交正常化が実現して以後、特に78年に中国が改革開放政策に着手して以降、日本の中国に対する技術移転や対中投資、市場開拓などは、もし日本の経済安全保障の新しい法律ができれば大幅に規制され、かなり深刻な障害を受けるだろう。かつて活発に発展してきた中日経済交流が、高いレベルで持続的に推進する態勢ができれば幸いだ。

かつて日本政府が経済関連の方針、法案を打ち出す際には、日本企業の代表的な経済団体は自らの意見を表明したものだった。しかし今のところ、日本の経済団体が経済安保関連の提案に対して、どのようなオフィシャルな評価を提起したのか、積極的な姿勢で評価するのか否か、これは誰も知らない。確実なのは、日本政府の政治判断は関連法の最終的な立法結果であり、変更はあり得ず、意外性もないということだ。

 

「デカップリング」の影響

「デカップリング」は米国の対中貿易赤字を減少させていないし、製造業企業の米国回帰も見えない。「デカップリング」が中国の中興通訊(ZTE)やファーウェイにもたらした損失は、すでにはっきりと見られる。昨年、ファーウェイが傘下のスマートフォン(スマホ)ブランド「栄耀」(HONOR)を切り離し、ファーウェイのスマホ販売量が減少したのも、デカップリングがもたらした悪い結果だ。

さらに、もし日本で経済安保関連の法案が成立すると、日本企業はどのような断絶に直面するか、その困惑は推して知るべしだ。例えば、宇宙・防衛産業に関わる三菱電機の海外総売上高の中で、中国市場が占める割合は12%で米国は9%だ。中国と米国の市場で販売している製品は異なり、宇宙・防衛産業の分野では中国における市場開拓はほとんどない。だが、経済安保関連の法律が施行されると、たとえ宇宙・防衛産業とは関係がなくても、引き続き中国市場を開拓する可能性は大きな影響を受けることになる。

さらに例を挙げれば、NECや東芝などの日本企業は、経済安保関連の法律の影響を受けて、中国での事業規模を2010年頃のレベルに維持することができなくなっているのではないだろうか。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が発表した関連データによると、07年以降、中国は日本の最大の貿易相手国であり、米国は第2位にとどまっている。日本の世界に対する直接投資の中で、投資残高から得ている収益率では19年時点で中国は17%、米国は5%未満だった。中国は日本企業にとって収益を得る絶好の国家だ。

しかし、日本の政治家は経済安保の法律を通して、中日貿易、日本企業の収益の持続を難しくしようとしている。日本の政治的判断は企業や他国が影響できるものではなく、中日経済交流の新たなパイプ開拓がますます重要になってきている。

 

3月23日に行われた日中科学技術文化センター上海事務所の看板上掲式(写真提供・日中科学技術文化センター上海事務所)

 

メディアは一視同仁で努力を

中国国際輸入博覧会の会場に近い上海・虹橋海外貿易センターに3月23日、一般社団法人・日中科学技術文化センター上海事務所の看板が掲げられ、開設された。同事務所の李建農首席代表は、「上海事務所は結集・選別・提携・支援・共有を理念として、開放の心構えと創造性に満ちた活動を通して、上海に中国と日本企業との間に直接交流と提携の橋を架ける」と語っている。中日の科学文化における不断の交流は、両国の貿易と相互理解を増進する最良の道だ。

中国の一貫した開放体制や世界のその他の国々を上回る市場の魅力、テクノロジーの不断の発展、各分野で世界の先端を走っていること。これらが最終的に経済安保の法律の見直し、中国再評価の動機になるに違いない。

中日メディアは対立を強調せず、理解の増進を主張し、一視同仁の努力を重ねるべきだと思う。

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