EVは経済提携の新天地 上海モーターショーを見て

2021-07-02 11:04:43

陳言=文

1970年代末、中国が改革開放に着手した当時、生活用品の面で日本は全面的に中国を上回っていた。テレビ(カラー)、冷蔵庫、洗濯機は言うまでもなかった。80年代になって、筆者はたまたま日本の友人からボールペンをもらった。その後数年使わずにいたが、日本に留学する時になってそのボールペンで書類に記入した。それから筆者は日本製の各種ボールペンを買い求めるようになった。80年代に筆者が北京で見ていたのはモノクロのテレビだったが、日本に到着するや、数日足らずで友人が車でカラーテレビを運んで来てくれた。それ以来、そのテレビは私の10年近い日本暮らしのパートナーになった。

筆者は今、北京で暮らしている。周りの車に目をやると、日系ブランドがかなりの割合を占め、ハイブリッド車では日系ブランドの天下だ。しかし、電気自動車(EV)はと言うと1台も見当たらない。北京の街を歩いてみても、日本製EVはほとんど見つからない。

80、90年代に日系ブランドが中国の消費市場を席巻していた当時とは大違いだ。中国がEVをメインにした新エネルギー車の普及に全力を上げようとしている今、EVにおける中日提携に将来性があるのか否かは大いに注目に値するテーマだ。

 

両国の間に大きな温度差

データからEVを見ると、中日両国間に大きな温度差があることが分かる。

中国では2019年に新車販売台数にかなりの下落が見られた。これはEVに対する助成政策の期限が切れ、EVの価格が相対的に上昇し、EV販売にブレーキがかかったのも理由の一つだろう。同年の中国における新車販売台数は2576万9000台、そのうちEVは97万2000台で、全体に占める割合は3・77%だった。

一方、日本の状況は全く異なっていた。19年は日本における新車販売台数も下落し、519万5000台だったが、そのうちEVはわずか2万台で、全体の0・38%にすぎなかった。中国の3・77%に比べると、ほとんど無視できるほどだった。

中日のEVに対する姿勢の違いはハイブリッド車の生産技術と関連があるのだろうか?中国でも一部のメーカーはハイブリッド技術を研究しているが、実際に使用されているハイブリッド車は多いとは言えない。これに対して、日本では1995年にハイブリッド車のコンセプトカーがデビューして以来、その生産量は伸び続け、2019年には年間生産量が143万6000台に達し、国内保有台数は1068万4000台に達した。ハイブリッド車は日本で安定的な市場を確保し、十分な生産技術があり、環境問題解決にも一定の役割を果たした。

欧州の自動車販売市場に目をやると、主要国はEVを30年までに普及することを掲げているが、ハイブリッド車に対する需要は大きいとは言えず、関連する投資のニュースもほとんど見当たらない。米国市場にはハイブリッド車の受け入れ余地はあるが、主要な車種ではない。

  ハイブリッド車の巨大な成功によって、日本の企業はこれに続く数年から十数年、この分野で役割を発揮してきた。また、ハイブリッド車は日本におけるEVの発展にも大きな影響を与えた。だが今年現在、日本にEVの将来性があるようには見えない。

しかし、これは日本の自動車メーカーにEVの部品や研究開発、生産技術が欠乏しているという意味ではない。日本にそうしたものを利用する余地が足りないとすれば、中国企業と提携して、まず中国市場開発に乗り出すのが賢明な選択だろう。

 

日本メーカーが新作を展示

今年4月、上海でモーターショーが開幕した。

筆者も駆けつけ、全館を見て歩いた。トヨタは新型EVを出展していた。筆者は自動車専門記者ではないが、トヨタのEVの車体を見て、トヨタが最も素晴らしいデザインを用い、燃料自動車の最新モデルをEVに振り向けていると感じた。これからの市場の見通しと中国で実現できる販売台数に同社は十分満足できるだろう。

上海モーターショーにはホンダや日産なども当然EVを出展しており、ブースの最も人目を引く位置に展示し、中国EV市場に対する意欲をみなぎらせていた。

自動車部品に関しても、日本の自動車メーカーの実力には見るべきものがある。今年1月1日に設立されたばかりの日立Astemoは先進的なEVのエンジンシステムと車両運動制御に関する部品をアピールして展示していた。筆者の印象では、日立製作所と本田技研工業の合資新会社は車載設備とソフトに対して、燃料自動車と異なりEVを含む新エネ車の情報技術(IT)に対する需要が大きく、関連市場のニーズに応えようと全力を挙げつつある。

日東電工もEVに各種原材料を提供する企業だ。上海モーターショーで、同社がスマート化、新エネ自動車、自動運転に関して、電池の通気性フィルムや電機絶縁紙などの新材料を提供できることを示していた。

日本企業が本格的にEV市場参入を検討するのであれば、その関連部品の需要は膨大だが、それには部品メーカーのモデルチェンジが前提条件だ。上海モーターショーに出展していた部品から見て、日本企業の準備はすでに十分だ。日本企業がEV生産に乗り出す時、筆者はこうしたモデルチェンジには大きな困難はないと思われる。もし日本で急速なモデルチェンジが困難な場合、日本企業はまず中国で関連製品をデビューさせ、新市場の開拓を選択すべきだろう。

 

トヨタが4月の上海モーターショーで新EVシリーズの第1弾モデルとして発表したコンセプトカーの「TOYOTA bZ4X」(東方IC)

 

中日経済交流の新モデルに

市場が先行している中国ではEV部品やEV本体のデザインコンセプトなどの面で新たな課題に直面している。これは中国企業によってのみ解決される問題ではなく、日本企業も研究開発を通じて解決すべき問題だ。ここではどこの技術が絶対的に優勢かは問題ではなく、必要なのは研究開発、テスト生産、量産体制など節目節目での国際的な企業間提携であり、当然そこには競争も生まれる。中国のEV市場に参入してみなければ、市場需要の実態を理解できないし、本国のEVメーカーが新たな躍進を遂げるのも難しい。

EV関連の中日提携で新たな中日経済交流のモデルが開拓されるに違いない。こうした開拓は両国関係に大きな影響を与え、経済交流を新たな段階に進ませるだろう。

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