産炭地から新エネ拠点へ 北西部にカーボンニュートラルの鍵

2021-11-26 15:37:26

陳言=文

今年の国慶節連休は10月1日(金)から7日(木)で、多くの人がこれに数日の有給休暇を加えて10日(日)まで長期休暇を楽しんだ。筆者は1日早朝、マイカーを運転し、西へ1100㌔先の寧夏回族自治区の区都、銀川市に向かった。

8年前の2013年にも車で銀川に行ったが、当時と比べるとほとんどの高速道路が3車線になり、2車線区間も道路がかなり拡幅されていた。国慶節休暇に北京から西に向かう人はさほど多くないとみえて、ほとんど一定の速度でスムーズに運転でき、8年前は18時間かかったが、今回は14時間で着き、疲労感は少なかった。

サービスエリアで休憩をはさみながら走り続けたが、北西部に大きな変化が起きつつあり、その変化の中で中国の産業が新たに胎動しているのではないかと感じた。

 

石炭から太陽光、風力へ

北京から西へしばらく走ると、黄土高原に入る。内蒙古自治区や寧夏回族自治区には広大なゴビ砂漠が広がっているが、銀川は広々とした緑地の中にある。

8年前、北京から銀川に向かうルートには黄土と砂漠が広がり、丘のような高さの黄色いはげ山がたまに目に入る程度だったが、今回はこの山が黒くなっており、きらきら輝いていた。山全体に設置された十数㌔にも及ぶ太陽光発電用のパネルだ。このような太陽光発電所は恐らく中国の北西部でしか見られないだろう。

遠くで数え切れないほど多くの風車が回っているのを見ていると、いま上り道か下り道かが分かる。ここは風力エネルギーが豊かな場所なので風力発電機が設置され、大量の風力エネルギーが電力不足の東部に送られている。

8年前には石炭を満載した数え切れない数のトラックが西から東へ向かい、しばしば100両編成近い貨物列車が延々と線路を走っていた。

産炭地では、現代的な設備が整ったエネルギー企業が石炭液化事業を行っている。かつて内蒙古自治区西部の新興工業都市である烏海を通過する際の数十㌔は、車の窓をしっかり閉め、フォグランプをつけなければならないほど大気汚染がひどく、息苦しかった。しかし、今回もずらりと並ぶ火力発電所は見えたが、煙霧は非常に少なく、煙の色は黒から白になり、ガスの臭いもしたが、8年前とは大違いだった。

内蒙古、山西、陝西、寧夏などは数十年間、石炭によって東部の発展に必要な大量のエネルギーを供給してきた。カーボンニュートラルが重視される今日、これらの省・自治区は豊富な太陽光エネルギー、風力エネルギーの利用に取り組み、形式を変えて東部にエネルギーを供給している。こうしたエネルギー転換は始まったばかりであり、さらに大規模、クリーン、リサイクル可能なエネルギーが次第に周辺に向かって広がっており、エネルギー拠点はさまざまなエネルギーを供給する上で、巨大な変化を起こしつつある。こうした変化はカーボンニュートラル時代の要請に呼応し、産業構造の転換に大きな影響を与えている。

 

電力消費量の削減は必要か?

銀川に行く前に、北京で日本企業の責任者と会った。彼らは、一部地域で突如通達された電力使用制限の要請に対し、多くの日本企業は理解できないと戸惑っていた。

広東、江蘇、山東に工場を設置している企業の社長は、「なぜ急に電力消費量を2019年比で1%削減することになったのだろうか?」と疑問を口にした。中国製品の国内市場は今年、19年に比べて大幅に拡大している。また、新型コロナウイルス感染症によって、日本を含む世界各国の市場が中国の生産能力拡大を必要としている。中国の日本企業は今年10月以降、中国市場および世界市場に製品を適時供給しようと考えていた。電力消費量を1%削減する要請はそんな矢先の出来事であり、企業側は脱力感を覚えた。

中国政府が二酸化炭素(CO2)排出量ピークアウトとカーボンニュートラルの実現という目標を掲げてから、商務部(日本の省に相当)、工業情報化部(同)、国家発展・改革委員会は直ちに行動に移した。中国は30年までに段階を踏んでCO2排出量ピークアウトを実現するため、エネルギー消費の増加を規制する一方、減産方式によって企業の生産性を制限しない。エネルギーを効率的に使用し、中国の産業政策に合致した製品を生産している企業に対して、中央と地方政府はその生産活動を奨励する。そのため、日本企業は地方政府と意思疎通を図りながら、とりわけエネルギー使用効率、カーボンニュートラル実現に関連する技術力、経営方針を説明し、調整しなければならない。

CO2排出量ピークアウトとカーボンニュートラルを実現する過程で、技術力が劣り、エネルギー消費量が多く、効率の悪い企業は淘汰されるが、日本企業のような先進企業を制限するのが目的ではない。一部地方で予測不能な電力使用制限の動きが突然起きたのは、考慮不足だったからにすぎない。国務院発展研究センターの元副主任である劉世錦氏は9月22日に開かれたフォーラムで次のように発言した。「CO2排出量のピークアウトとは生産能力を削減することではなく、供給の秩序を混乱させるものでもない」。一連の混乱には歯止めが掛けられ、生産も直ちに正常な状態を取り戻すだろう。

10月4日深夜、筆者は北京市内に車で戻った。例年、国慶節期間中は商業ビルや歴史的建造物などが一晩中ライトアップされていたが、今年は平日と変わらなかった。このような形で節電が行われるとともに、クリーンで持続可能なエネルギーが正常な生産生活を保障する。

 

銀川市の養殖場では、太陽光発電を活用して野菜の水耕栽培と魚の養殖を融合させている(新華社)

 

産業を西へ移動させる力

産業はエネルギー、水資源、労働力が豊富な土地に移動する。銀川から北京への帰路、8年前より高速道路沿いに新エネルギー企業が雨後のたけのこのように建っているだけでなく、さまざまな工場が現れていることに気が付いた。

筆者が初めて銀川を訪れた1980年当時、現地の人口は82万人だった。今回、北京に戻ってから年鑑で調べたところ、2019年に229万人になり、工業による生産体制を支えられる人口を有していることを知った。銀川は水資源が豊富で、日照時間が長く、今後、豊富な電力資源を安定的に供給できる。

エネルギー需要度の高い企業は、工場の開設に当たって銀川などの北西部の都市を検討し、カーボンニュートラルを実現するとともに生産能力を強化できるかもしれない。

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