深海7000㍍の挑戦者 新記録を樹立する潜水員

2019-07-23 13:35:10

 

仲間と共に蛟竜号を操縦して4811下まで潜り、無事な姿を見せる唐さん(右)たち

 

2012年、中国が初めて自主設計開発した7000級有人潜水調査船「蛟竜号」が水深7000を超える潜航を達成し、同型の有人潜水調査船による最大深度世界記録を更新した。17年に蛟竜号は138日間にわたり38回の任務を遂行した。メンテナンスとグレードアップをした後、蛟竜号の長い実験的な潜水活動が終わり、正式に業務に投入される。

 潜水員の唐嘉陵さんは09年から蛟竜号に乗って数々の記録を塗り替え、高難度の潜水任務をこなしていった。彼の今後の目標は1の深海に到達した、世界で3人目の人類になることだ。

 

初めて7000の深海に潜る演習に向けて潜水の準備をする蛟竜号

 

中国初の深海潜水員として

唐さんは四川省遂寧市の一般的な労働者の家庭に生まれた。06年、哈爾浜(ハルビン)工程大学の4年生だった唐さんはインターンシップに参加しようとしていたところ、国家海洋局が大学で有人潜水調査船の潜水員を募集していると聞き、興味が湧いて面接を受けに行った。その年のクリスマスは、普通の若者にとっては単なるめでたい日だったが、唐さんにとっては特別な日だった。当日の夜、唐さんのもとに国家海洋局北海分局から電話がかかってきた。「7000級有人潜水調査船の潜水員面接を通過しました。もうあなたはうちの生徒になれますが、トレーニングに参加しますか?」

唐さんは喜びのあまり声も出せなかった。「数十秒間時間が止まっていたようでした。本当にラッキーでした」と唐さんは語る。

07年に唐さんは養成所で他の見習い潜水員と共に訓練を受けた。当時の蛟竜号がまだつくりの粗い球体で骨組みも完成していなかったため、唐さんは日常的なトレーニング以外に蛟竜号の組み立て作業にも参加した。

最先端の複雑な構造を持つ蛟竜号には乗組員にも広範な知識が求められた。船舶から油圧、そして組み立てに至るそれらの慣れない知識や技術は電子情報学を専攻していた唐さんにとってプレッシャーになった。「私たちは最初の見習い潜水員でした。専門家の方々は深海潜水の安全面を考慮して、私たちの能力に不安を持っていました。だから当時は一刻も早く一人前になろうと足りないところを補っていました」と唐さんは回想する。2年後、彼は船内乗組員として2人の技術者を引き連れて、初めて蛟竜号に乗って潜水した。その時の唐さんは操縦ミスが原因で潜水艇が故障しないかを恐れて非常に緊張し、操縦する前に脳内であらゆる動作を数回シミュレートしたという。

 

潜水に必要な物資を整理する唐さん

深海の魅力と厳しさ

蛟竜号で努力する中で唐さんは次第に成長していった。「暗闇と暗所の恐怖を克服する他、注意力と判断力と反応力を鍛える必要がありました。私たちは中国初の深海潜水員であり、基準となる目標も手本もおらず、絶え間ない努力によって自分を優秀な潜水員にさせていくしかなかったです。徐々にではありますが、私は深海潜水という過程を楽しむようになりました。体と心の疲労は克服しなければいけませんが、深海という未知の世界と奇妙な生物、そして豊富な科学研究の成果が私にまるで探検をしているような達成感を与えてくれました」

蛟竜号の目である円形の窓から乗組員は神秘的な海底の世界を見る。深海では蛟竜号のライトをつけても15までしか照らせず、そこから先は漆黒の世界が広がっている。人類の小ささを感じさせる光景だ。

「深海はとても広漠としていて、場所によっては不思議な生物が生息しています。蛟竜号に乗っているときはまるで地球の都市に降り立った宇宙船に乗っている感じです。そこは見渡す限り生物であふれ、サンプル採取のときにはアミメノコギリガザミやムラサキガイがよじ登ってきます。中国人が好きなナマコは一般的に黒くてとげとげしたイメージですが、私たちが深海で見たナマコは種類が豊富で、ピンクや紫や白いものもいてとてもきれいでした」

神秘的な海底とそこに眠る豊富な資源が蛟竜号を深海潜水させ、海洋探索と開発に引き立てる。唐さんたち潜水員はそのために想像を絶するような努力を払っている。毎回の潜水は潜水員の忍耐力を試す最大の実験だ。蛟竜号の作業時間は最長で12時間であり、その間2人の潜水員と1人の科学者は1平方程度の狭い船内に閉じ込められる。潜水員はロボットアームを正確に操作してサンプルを採取するために、常に数時間同じ姿勢を保つ。彼らはチョコレートやビーフジャーキーで飢えを満たし、休みなしに極度の緊張の中で任務を遂行する。

 

201710月、中国共産党第19回全国代表大会(党大会、19大)の代表として記者の質問に答える唐さん

共に記録を塗り替える仲に

10年7月、海事分野の専門家の指導の下、唐さんは蛟竜号を操縦して南中国海の水深3759の海底に到達し、ロボットアームで五つの星が描かれた中国の国旗を立て、全行程で故障を起こすことなく無事に任務を達成した。これは中国が米国、フランス、ロシア、日本に続いて3500以上の深海に有人潜水調査船を送る技術を持った5番目の国になったことを証明した。

11年7月には水深5188に到達して潜水記録を塗り替え、12年6月には7062に到達し、同型の有人潜水調査船による最大深度世界記録を更新した。09年から現在まで、蛟竜号は南中国海、太平洋のマリアナ海溝など七つの海域で152回潜水し、貴重な映像資料と海洋地質と生物サンプルの取得に成功した。唐さんはその全ての業務に参加している。

「業務に就いたばかりの時、まだ二十数歳の青春真っ盛りという歳で祖国の潜水事業のために奮闘できることを非常に光栄に感じ、誇りに思いました」。潜水事業との縁は唐さんにとって幸せな人生の旅だった。唐さんの次の目標は水深1万という難関の突破だ。1万の深海に到達した人間は現在まだ2人だけで、唐さんはその3人目になることを夢見ている。(高原=文 新華社=写真提供

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