貧困解消へ女子校の校長に 教育で資質と能力向上図る

2021-01-28 10:50:02

張桂梅さん(63)の一日の仕事は朝5時半から始まる。拡声器を持って校内を回り、生徒たちを起こすのだ。この高校では、生徒たちは5時半に起き、1時間の昼休みを挟んだ午前5時限と午後3時限の授業の他、夜間3時限の自習をし、11時半~12時に消灯し、月曜から土曜日まで毎日このようにする。生徒たちは勉強の他、余った時間が可能な限り圧縮され、食事も15分を超えてはならない。

このような光景は、中国の多くの経済が立ち遅れ、教育資源が欠乏している地域では珍しくない。ここの生徒はみな、このようなペースで自分のほぼ全てのエネルギーを勉強とテストに注ぎ込み、大学入試に合格して自身と家族の運命が変わることを願っている。

 

中でも張桂梅さんが設立した華坪女子高校は非常に成功し、非常に特殊でもある。成功というのは、同校が2008年の開校から昨年までの12年間で1804人の女子生徒を山から送り出し、大学に入学させたからだ。昨年の同校の受験生159人のうち、150人が大学本科の合格ラインを突破した。これは素晴らしい成果だ。特殊な点について、地元の貧困家庭の子どものみ受け入れる同校は、成績を入学のハードルにしないだけでなく、生徒の校内での勉強と生活に対し完全無償化を実施している。

女性の資質向上で貧困問題解決へ

張さんは1974年に姉について東北部から雲南省に渡り、辺境地域の開発を支援した。その後、彼女は西南部辺境の貧困地域にある山間部の教育事業に人生をささげた。96年に夫を亡くすと、張さんは同省大理市の良い労働環境を捨て、同省麗江市で深刻な貧困地域にある山間部の華坪県への異動願いを出し、県内で最も教師が不足し、環境が最も立ち遅れた民族中学校の教師となった。授業を行う中で、彼女はクラスにもともと多くない女子生徒のうち、学校に来なくなる生徒がいつもいることに気付いた。家庭訪問をすると、彼女たちの中途退学の理由がさまざまなことに気付いた。弟を学校に通わせるために両親から家で農作業をするか出稼ぎに行くよう頼まれた生徒もいれば、両親が結納金をもらって近いうちに嫁ぎに行く生徒もいた。

「1人の女の子を育てるということは、少なくとも3世代に影響を与えられます。教養があり責任感のある母親を育てられれば、山間部に住む子どもが中退することはなくなるでしょう。山間部の貧困問題を解決するには、女性の資質向上から着手しなければなりません」と張さんは話す。これにより、無償の女子校を設立するというアイデアが芽生えた。これに対し、張さんは自分なりの考えがあった。ある家を訪問した時のこと、そこの息子は中学2年生で都市部に行って補習クラスに参加できるのに、その姉は高校3年生なのに親に農作業の手伝いをさせられていたことに気付いた。彼女はその時、どんなに困難があっても女の子たちに学業を修めさせなければならないとやるせない気持ちになった。

 

張さんは朝5時に宿舎管理人の電動バイクに乗って学校に行く

彼女は2002年から、実現不可能にしか見えない夢のために駆けずり回った。資金調達の道のりは想像以上に困難を極め、5年間の夏休みと冬休みの期間を利用してようやく集まったのは1万元余りのみ。すでに希望を抱かなくなっていた頃、彼女は07年に中国共産党第17回全国代表大会(17大)の代表に選ばれた。北京で17大に参加した時、記者が彼女の取り組みを報道し、彼女の「女子校設立の夢」が人々に知られるようになった。その翌年、現地政府や各界の篤志家の支援の下、華坪女子高校は正式に設立された。

強く、人助けができる女性へ

開校から今に至るまで、同校の学校総合ランクは10年連続で麗江市のトップで、生徒たちの優れた入試結果は同校の高い評価につながった。しかし昨年、寄付金拒否のニュースで張さんと同校は世論の矢面に立たされた。

その年、同校の卒業生が、卒業して何年後かに夫と子どもを連れて寄付しようと母校を訪れた。しかし張さんはこの女性が専業主婦になったことを知ると、彼女の寄付を断り、「あなたのお金は受け取りません。当時、あれほど貧しい家のあなたを学校はなんとかして卒業まで支えました。それが今は専業主婦になっているなんて」と言った。

この話は社会で大きな論争を引き起こした。女性の生きがいに対する張さんの認識が狭量で一面的に過ぎると批判する人もいたが、山から出て運命を変えたいと切実に思っている多数の貧困女性にとって、「家庭に戻る」ことは良い手本とはいえないと同意する人もいた。中国の多くの立ち遅れている地域と同様、華坪の伝統的な観念も女の子は小さい頃に家の手伝いをし、大きくなったら嫁に行けば良いと考えている。まさにこのような女子教育を軽視した状況と意識を変えるために、張さんは華坪女子校を開校したのだ。この視点から見ると、彼女の態度は理解できる。

同校での生徒たちの時間は分刻みだ。朝5分以内に顔を洗い、10分間の早朝読書をし、体操するまで1分以内に整列する。講義棟へ出入りする際も、食堂へ行く際も、寮に戻る際もほぼ走る。そして張さんは生徒たちよりも早起きし、生徒がランニングしている時はいつも列のそばに張り付き、拡声器を手に「ついてきて、ついてきて、列から脱落しないで」と叫ぶ。

 

体に十数もの病気を抱える張さんは、関節痛のために毎日湿布薬を貼らないと文字が書けない

なぜ生徒の在校時間をこんなに隙間なく割り当てるのか。これについて張さんは、生徒は入学時に基礎力がほとんど不足しており、高校で新しい知識を学ぶだけではなく、受けなかった授業を補塡しなければならないと語る。そのため、生徒たちが素質を一刻も早く高め、さらに大きな世界を迎え、それに適応できるように一分も無駄にしてはならない。

同校の生徒は髪を長く伸ばしたり化粧をしたりすることが禁止されている。「彼女たちに、この社会の男女は平等であり、女の子は自分の才能で生きるべきだと知ってもらいたいのです。彼女たちには、見た目を派手に着飾るのではなく、落ち着きと自信の中から美しさやはつらつさを表せられるようにしてほしいです」

同校は毎年の大学進学率などを含む総合ランクが麗江市のトップだが、張さんはまだ納得しない。彼女の目標は、在校生徒全員が大学に入学し、うち約10%が全国の重点大学(政府に権威ある大学と認定された大学)に入り、さらに1人か2人が清華大学や北京大学(いずれも名門大学)に上り詰められることだ。「子どもたちの将来の人生が苦しいものであってほしくありません。彼女たちが社会進出する前に、彼女たちの能力が少しでも向上するのを助けられれば、その後の人生はいくらか順調になります。彼女たちが今後ますます強くなり、助けを必要とする人たちを助けられる能力を備えられることを願っています」

そのため、育てた生徒たちが医者、教師、警察官などの職業を選択し、または在学中や仕事の中でボランティア活動や貧困救済プロジェクトに積極的に参加したり、辺ぴで貧しい、その上危険な地域の開発に身を投じたりすることを知るたびに、張さんは心からうれしいと感じるのだ。(高原=文  新華社=写真)

 

人民中国インターネット版 2021128

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