第8回翻訳理論と実践国際シンポジウム開催 北京市

2017-11-08 14:07:28

  

第8回翻訳理論と実践国際シンポジウム開催 北京市

北京第二外国語大学の邱鳴副校長

  

 中国翻訳協会と北京第二外国語大学が共催し、北京第二外国語大学日本語学院が運営する「第8回翻訳理論と実践国際シンポジウム及び2017年全国日本語MTI(通訳翻訳修士課程)建設フォーラム」が5日、北京市で開催した。今回のシンポジウムでは、中国全土の大学日本語翻訳人材育成体制構築過程において、注目を集める問題点について研究討論することをその主旨としており、中国全土の大学における日本語翻訳専門学科の開設及び翻訳教育理論体制の構築と発展を共に推進していくことを目指している。人民網が伝えた。  

 今回のシンポジウムでは中日両国の専門家を招待し、「MTI育成プランとカリキュラム体系研究」や「MTI翻訳通訳トレーニングモデル、品質、管理とその評価の研究」、「MTI教育におけるICT(情報通信技術)の応用及び研究」、「MTI実践教育と人材市場」等の議題をめぐって討論が行われた。  

 北京第二外国語大学の邱鳴副校長はシンポジウムの開幕セレモニーで、翻訳学科の設立と2007年にMTI授業が開設されてからの10年間の発展を高く評価し、そのあいさつの中で、「日本語教育のレベルをどのようにして高め、教育内容と形式をどのようにして作り上げ、MTI翻訳人材の育成をどのようにして体系化するかが、今後引き続き注力して検討していきたい課題だ。日本語教育の経験と成果を業界の専門家や学者たちと共有・交流するための場にしたい」とした。  

 北京第二外国語大学日本語学院の楊玲院長は、MTIテーマフォーラムの司会を務めるとともに、MTIの沿革と発展状況について紹介した。翻訳専門学科の開設と発展において、現在直面している様々な問題について専門家たちとディスカッションを行った。  

 対外経済貿易大学の王立非教授は、「言語サービスとMTI教育の現状分析と思考」をテーマに、現在の中国言語サービスとMTI教育発展状況を重点的に分析し、「一帯一路」(the Belt and Road)における言語サービス市場の人材やサービス、資本に対する需要がすでに形成されている背景を踏まえた上で、言語サービス分野において「中国における『一帯一路』言語サービスの戦略計画が統一されていない」や、「言語サービス業界への参入基準がない」、「言語サービスの品質基準がない」、「言語サービスが一帯一路の海外進出政策の要求にマッチしていない」といった問題点を指摘した。そして王教授はMTI教育の品質に対し、進めている調査研究を基礎として、自身の考えや提案を述べ、「大学は従来型の翻訳人材育成の理念を捨て、翻訳人材育成のみならず、ダイバーシティーに富んだ『外国語プラスアルファ』の複合型言語サービス人材の育成が要となってくる。そのため、言語サービス専門学科増設の検討を提案する。一部の大学で試験的に取り入れ、ある程度経験を積んでから展開していき、複合性・応用性・革新性・創業性の4つが一体となった言語サービスカリキュラム体系の構築、また良質で優れたカリキュラム、特に実践とトレーニングのカリキュラムを構築していくことが必要だ」とした。  

 日本杏林大学大学院の塚本慶一教授はシンポジウムで日本の翻訳市場の現状を紹介した上で、「通訳人材は責任感・向上心・好奇心等の素養を備えるべき」と指摘し、「今後大学で翻訳教育を進めていく上で、市場のニーズをより参考にし、翻訳できるだけでなく、良質な翻訳ができる人材の育成が必要。AI技術の出現は、翻訳教育と翻訳業界に非常に大きな衝撃を与えただけでなく、大きな挑戦を強いられている。そのため、こうした現状に対応するため、どのように翻訳教育レベルを向上させ、良質な通訳人材の育成をしていくかという点が業界内で真剣に考えて行くべき課題だ」とした。 

 台湾輔仁大学クロスカルチャー研究所の楊承淑所長は、大学でどのようにして市場のニーズにより合わせた産学協力を進めていくかという点について、輔仁大学において実践している経験を紹介した。同大学クロスカルチャー研究所は3年前から積極的に大学が市場進出するためのルートを模索している。3年にわたる調査研究の結果、国際市場とのドッキングに成功し、国際医療翻訳と通訳関連産業研究協力プロジェクトが展開されている。日本の医療専門人材向けの特別育成カリキュラムを構築し、専門適用型人材を多数育成し、成功の道を切り開いた。楊所長は、「現在、大学の翻訳専門学科開設において、その同質化が深刻で、カリキュラム設定や授業内容のほとんどが従来のままで革新に欠けている。大学が体制による制限から飛び出し、差別化や品質向上による発展の路線を模索しようとするならば、市場ニーズを見定め、その専門と産業をつなぎ合わせていく必要がある」とした。  

 中日同時通訳界の専門家である蔡院森氏は、第一線で活躍する通訳者の視点から、今後の大学における日本語学科開設に対する見解と意見を述べた。蔡氏は自身の実践と経験を踏まえた上で、「翻訳専門教育は、更なる基礎教育の強化が必要。老子の『授人以魚不如授人以漁(人に魚を与えれば一日で食べてしまうが釣りを教えれば一生食べていける)』という言葉のとおり、学生に学習方法を学ばせることで、学生の学習能力育成も行うべきだ。翻訳専門の学生たちは、自分の言語資料データベースを作り、日常的な学習や実践の中で得た情報をそこにストックし続ければ、日本語学習レベルの向上だけでなく、仕事の効率アップにも大いに繋がるだろう」とアドバイスした。(編集TK)

  

 「人民網日本語版」2017年11月8日

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