質の高い発展へと進む 遼寧省を訪ねて

2020-02-21 12:21:32

 

北京週報日本語部ではただいま遼寧省を集中取材中!国有企業やハイテク企業などについて、本誌の植野友和記者が現場よりレポートを行った。

質の高い発展へと邁進する国有企業「瀋鼓集団」

 

 

9月5日は瀋陽市の国有企業「瀋鼓集団」にお邪魔して、工場を見学するとともに同社の技術革新イノベーションの取り組みについて話を伺いました。生産ラインは極めて効率化が進んでおり、そこで生まれる製品は多くの国に輸出されるほど競争力を持っていて、日本人がしばしば国有企業に持つ「非効率」というイメージとは全く異なるものでした。質の高い発展へと邁進する中国において、国有企業が極めて大きな役割を果たしていることを改めて感じさせられた1日でした。

中国のロボット産業をリードするハイテク企業「新松ロボット」

 

 

 

遼寧省集中取材2日目、北京週報日本語部のスタッフは瀋陽市のハイテク企業「新松ロボット」にお邪魔しました。工業用ロボットというと日本のお家芸という印象がありますが、中国におけるロボット産業は近年めざましい発展を遂げています。同社が作ったロボットは中国国内はもちろんのこと、世界各国の製造業企業に導入され、生産ラインの効率化に貢献しているのです。

「新松ロボット」は生産だけでなくロボットの運用管理でもすぐれた技術を持ち、同社の工場では自社生産のロボットによるオートメーション化が進められていました。つまり、ロボットがロボットを作っているのです!さらにそこで作られたロボットはさらに新たな生産ラインに導入され、またロボットを作る…という無限ループ。人間を必要としない工場が誕生する日も、そう遠くはないかも…!?

農村観光で成功を収める「大梨樹村」

 

 

北京週報遼寧省取材班は瀋陽を離れて一路、中朝国境の街丹東へ。その途中、丹東の手前約60キロほどの位置にある鳳城市大梨樹村へ立ち寄りました。

この村は、今でこそ美しい自然や豊富な観光資源で知られ、周辺地域だけでなく中国全土から多くの人々が訪れる遼寧省でも指折りの豊かな村となりましたが、30年前は貧しい山村だったのです。

発展のきっかけとなったのは、村人たちから「老書記」と親しまれたひとりの人物の呼びかけでした。その今は亡き「老書記」こと故毛豊美氏が合言葉としたのは、「干」(やろう!)。一生懸命働き、豊かさをその手で勝ち取ることの大事さを訴え続けたのでした。

今日大梨樹村を訪れると、山肌一体に美しく整備された果樹園や隅々まで人の手が行き届いた田畑から、村民たちがいかに奮起し、豊かな村作りのために汗を流したかをうかがい知ることができます。

また、村の人々の明るい表情や素朴だけれどゆとりのある暮らしぶりから、村民たちが幸福感に満ちた生活を送っていることが感じ取れます。これは大梨樹村がただ農業だけをなりわいとするだけでなく、農村観光の面でも成功を収めており、村の人々の懐を豊かにしていることが大きな理由として挙げられるでしょう。実際、村の大通りは夜遅くまで観光客が絶えることがなく、とても山奥の小さな村とは思えないほどの賑わいを取材スタッフは目の当たりにしました。また、日がとっぷり暮れてからも忙しく働く村民たちの姿がとても印象的でした。労働こそが豊かさの源であると熱く村人を説いて回った老書記の「干」の精神は、今日も村民たちの心にしっかりと根づいているのです。

日本では農村地域の過疎や高齢化が大きな問題となっていますが、それらは中国の農村も同じく直面している事象です。大梨樹村の成功例は、日中を問わず現代の農村が抱える難題を解くヒントがあるように感じました。

伝統医療「満薬」がイノベーションで現代に蘇る!「丹東薬業」

 

 

オランダなどから西洋医学が伝わる以前、日本では中国医学=中医を基礎として発展した漢方が医療の主流を占めてきました。その伝統は今日においても脈々と受け継がれており、日本の医療界では西洋医学と東洋医学をうまく組み合わせる、そんな新しい流れが広まっています。自然の恵みを薬として利用し、病を未然に防ぐことを重視する中医は、日本人にとってより身近なものになりつつあると言えるでしょう。

日本でいう漢方薬のことを、中国では「中薬」と呼びます。自然界に存在する植物や鉱物などの生薬を組み合わせて生み出された薬のことです。この呼び名を知っている方も、中国好きの方でしたらきっと少なくないことと思います。しかし、中国の少数民族の1つである満族の人々に受け継がれてきた「満薬」はどうでしょう?きっとほとんどの日本人のみなさんが初耳なのではないでしょうか。

本誌遼寧省取材班が訪れた丹東市の「丹東薬業集団有限公司」は、そんな「満薬」の生産で中国一を誇る先進的な医薬品メーカーです。同社は満族の伝統的医学理論を基礎としながら、現代の薬学やテクノロジーを活用して100以上の製品を生み出し、中国全土の人々の健康を支えています。

また、「丹東薬業集団有限公司」は人々に健康をもたらすだけでなく、満族の文化を守る上でも大きな貢献を果たしています。同社の取り組みにより、貴重な文化遺産である満族の民間医療の伝統は、今日再び人々に親しまれるものとなりました。

そもそも遼寧省は中国でもとりわけ満族が多く住む地域であり、満族の伝統文化が色濃く残っているのはもちろんのこと、「満薬」で使われる天然素材もこの地には豊富に存在します。丹東市で「満薬」を主力とする医薬品メーカーが生まれ、そして発展したのはある意味で必然だったと言えるでしょう。

同社によれば、「満薬」は中国南部でとりわけ売れ行きが良いのだそうです。また、中国国内に限らず、日本を始めとして韓国やドイツなどでも地元企業と提携を結び、製品を出荷しているとのことでした。

「一帯一路」共に歩む国有企業「中車大連」 その競争力の源は?

 

 

 

改革開放後、飛躍的な発展を遂げた中国には、さまざまな「世界一」が存在しますが、そのうちの1つとして鉄道が挙げられます。営業距離の点で中国の鉄道がナンバーワンであるのはもちろんですが、列車の運行速度においても、既に日本の新幹線は中国の高速鉄道に世界一の座を明け渡しました。さらに、中国の鉄道がすぐれているのは営業距離や速度だけに限りません。広大な国土を持つ中国には、沙漠や高山地帯などかつては鉄道の運行が難しいとされてきた地域も少なくありませんでしたが、今日そのような自然環境が厳しい地域にも中国は鉄道網を張り巡らせ、遂にすべての省と省を結ぶ鉄道を実現したのです。

まさに他国に例を見ないほどのめざましい発展を遂げた中国の鉄道産業。その大きな原動力となったのが国有企業の「中車大連」です。同社が主力とする製品は、厳しい自然環境でも時速160キロという中速度の運行を可能にした「復興号」。その緑色のボディから、中国の人々に「緑の巨人」の愛称で親しまれています。

そもそも1899年創業と長い歴史を持つ「中車大連」は、中国における「鉄道のゆりかご」として、中華人民共和国成立以降一貫して中国鉄道の発展を支えてきました。古くは蒸気機関車に始まり、以降ディーゼル機関車から地下鉄まで幅広いラインナップで製品の多元化を進め、今や同社の製品は22の国地域に輸出されるほどの発展を遂げています。大連の国有企業が生んだ列車が海外の並み居る車両メーカーとの競争に打ち勝ち、世界へと羽ばたいているのです。

国有企業である「中車大連」がこれほどまでに競争力を持つ理由としては、同社の列車がコストパフォーマンスの面で優れていることがあります。鉄道を導入したいと願う新興国や発展途上国にとって、性能が良く、厳しい自然環境にも適応し、何より価格面で優位性のある同社の製品は強く支持されたのは、ある意味自然なことです。世界最大の発展途上国である中国が生み出した鉄道システムは、交通インフラの面で立ち遅れた国々にとって間違いなく、発展の大きな後押しとなっています。

大連は遼寧省における対外開放の窓口であると同時に、中国が推し進める「一帯一路」構想で重要な位置を占める港湾都市です。この地で生まれた列車は「一帯一路」参加国へと輸出され、各国の発展に寄与しています。自国の利益だけを追い求めるのではなく、共に手を取り繁栄の道を歩む。「中車大連」は、まさに中国が世界に呼びかける「人類運命共同体」の精神を具現した国有企業と言えるでしょう。

サプライチェーンで世界と繋がる大連自動車埠頭

 

 

 

「一帯一路」構想における中国東北部の窓口大連は、天然の良港に恵まれた港湾都市として知られています。市内には大小さまざまな港がありますが、その中でもいま特に大きな発展を見せているのが遼寧自由貿易試験区内にある大連自動車埠頭です。付近には日産自動車の中国合弁会社東風日産の工場があり、また港湾設立の出資には日本郵船も加わるなど、日本との縁が非常に大きい港でもあります。

大連自動車埠頭における自動車の出入台数は、2018年には82万6000台を記録。これまでの累計では440万台に達しています。さらに現在、市場の発展と船舶の大型化に対応するために港の整備がより一層進められており、出荷台数は今後ますます伸びることが予測されています。

大連自動車埠頭の10数年に及ぶ発展は、協力ウィンウィンを基礎として中国のみならず東アジア、ひいては世界の自動車物流システムとサプライチェーンに大きなメリットをもたらしてきました。また同時に、中国が推進する東北部の産業振興においても、その基礎となるインフラとして欠かせない役割を果たしています。

中国だけでなく日本やヨーロッパ、アメリカ、中東など世界中の港と海路で繋がる大連。その重要性は対外開放を推し進める今日の中国において、ますます大きなものとなっているのです。

「北京週報日本語版」 2019916

関連文章