多彩なカードが溢れる社会に
カード消費の進化
レストランはプロモーションを取り入れ、カードによる消費を奨励し、歓迎されている |
しかし、当時の人々はやはりポケットに現金があればこそ安心できるという考えだった。そのため、給料の新しい支給方法はかえって面倒を引き起こすことになった。通帳も銀行カードも妻に渡さなければならなくなり、それまで毎月こっそり貯めてきた「へそくり」ももはや続けられなくなった、と愚痴をこぼす男性もあった。
キャッシュカードに慣れなかったのは、単に観念の問題だけでなく、登場したばかりのカードによる消費は決して便利とはいえなかったという事情もある。当初、カード用の端末が設置されていたのは大手デパートのみ。しかも各銀行のカードには互換性がなく、キャッシャーの手もとに異なる銀行の7、8台の端末が並んでいても、その中に自分の持っているカードの銀行のものがなければ、「カードを目の前にしてもただ嘆くだけ」しかなかった。そのうえ、銀行のネットワークの反応も鈍く、端末の前で発信を待ったり、サインしたり、かなりの時間がかかった。そのため、ほとんどの人は消費額が3、400元を超える場合にしか、カード払いを考えることはなかった。わずかなお金を払うために時間がかかって、会計の列に並んでいる人々にも嫌がられていることもあったからだ。こうして、初期のカードによる消費はある種のリッチで、ファッショナブルなイメージはあったものの、あまり実用的ではなかった。
張丹さんは買い物をする時、主にカードを使う |
カードによる消費奨励のために、北京では2003年とその翌年、抽選イベントが実施された。一等賞は、乗用車一台の5年間の使用権。同時に、カードが使用できる場所は、大手デパートからスーパー、ホテル、専門店、レストラン、美容室、ジム、レジャー施設などにまで拡大した。北京郊外の農家観光村でさえ、カードの使用できるところが出始めた。
現在では、給料の口座のキャッシュカード、医療保険のカード、有線テレビ使用料や保険料の支払いに使うカードなど、複数のカードを持つのも当たり前となった。カードを申請する際、多くの人は念のためにパスワードを設置するが、年配の人はパスワードを忘れてしまったり、間違えて覚えていたりして、面倒な事態も発生している。