社会を変える報道に達成感
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白岩松氏 プロフィール 1968年8月、内蒙古ハイラル(海拉爾)市生まれ。蒙古族。中国伝媒大学新聞学科卒業。現在、中国中央テレビ(CCTV)キャスター、ニュース解説員などを務める。中日メディア関係者対話に連続7回参加するなど、中日交流活動にも携わる。 |
第12期全国政協委員でニュース解説員の白岩松氏に、自身の「中国の夢」に対する理解を語ってもらった。(聞き手=沈暁寧)
――「中国の夢」をどのように理解していらっしゃいますか。
白岩松氏(以下白) 中国は30年余りの改革開放の実践を経てきて、私は「中国の夢」と中国の歴史が密接な関係にあり、「中国の夢」はここ百年の間次第に変化を遂げているということを発見しました。1840年のアヘン戦争以後、中国は長い悲惨な歴史を経験しました。このため、百年前の中国の夢は、国家の独立、自主、富国強兵といったもので、国家の夢がそのすべてでした。多くの人が個人の利益を犠牲にして、国家の夢を実現するために身を投じたのです。
現在、中国は長年の努力により、特に30年余りの改革開放を経て、百年前の国家の夢は、数字の上ではほぼ実現に近づいていると私は思います。例えば、GDP世界第2位などです。国家の夢がはっきり姿を現し、国がますます豊かに強くなり、自主権を行使するようになるにつれ、中国の夢の内容にはひそかに変化が起こり始めました。つまり、「国」から「家」への変化です。どのように国が得た利益を人々に分け与えるかということに変化したのです。そのため、「中国の夢」の総合的な意味は、単なる一つの国家の夢ではなく、国が強く豊かになった後、どのように人々にそれを分け与えるかという、歴史的過程だと私は思うのです。この2つが一緒になったものこそが、私の「中国の夢」に対する理解です。
――個人的な夢を教えていただけますか。
白 個人的に言えば、まず第1の夢は、将来自分の一生を振り返り、報道という仕事に就いたことを価値あるものだったと感じることです。社会は少しずつ進歩しており、さらに多くの優秀な若者が報道という世界に入ってくれることを望んでいます。2番目には、自分が健康であること。そして、常に穏やかな心でいられることです。今は周囲の環境に影響され、特に報道関係者は、穏やかな心でいられることは難しいですから。また、もう一つの夢は、現在はよき中年男になること、将来は、よきおじいちゃんになることです。
――現在の中国の報道業界では、現状と「中国の夢」実現との間には、どれくらいの隔たりがあると思いますか。そしてそれはどうやってなくすものでしょうか。
白 これは2つの面から考えなくてはならないと思います。報道関係者は報道という職業が社会を良くするのに役立つということを信じるべきで、方向感覚、責任感、建設力と推進力が必要です。十数年前と比べると、今の優秀な人材の一部は報道という仕事に就きたがらず、さらに収入が高い職業を選びがちであることを私は心配しています。報道という仕事は結局のところ、他の職業とは違います。ただお金を稼ぎ、生活費を得るためだけならば、良い職業だとは言えません。報道という仕事はどこの国でも収入がトップクラスに入るものではなく、下手をすると中から下クラス程度です。しかし、報道に関わる者には別の収入があります。それは、社会を変え、社会を動かしてゆくという小さな達成感なのです。
また別の面から言うと、報道業界が社会進歩の受益者になることを望んでいます。30年余りの改革開放の成果に、中国はさらなる自信を持つべきだと思います。私たち報道関係者は、何がプラス報道か、マイナス報道かという区別をつける必要がなくなり、ただ報道すればよいだけになり、報道の改革や実践を多く試みることができ、批判的な報道も前向きなものとみなされるようになってもよいのではないでしょうか。そうなれば、皆がだんだんと慣れてきて、それほどデリケートにならなくなります。つまり、いかなる問題も、時代との関係は双方向のものだと私は思っています。
――政協委員として、今回の全国政協会議でどのような提案を行い、どのような問題に注目していましたか。
白 私は今回、4本の提案を行いました。1つは中国の都市にある人文・自然景観公園の塀を早く取り壊して、公衆と公共空間との新しい関係をつくり出そうという提案です。
2番目の提案は、国務院の各付属機関、さらに各省・直轄市・自治区政府の記者会見制度を毎月一回に改めることです。こうすることで、情報は本当の意味で透明化します。 3番目の提案は「医者の日」を設けることです。これにより、医者という職業を尊重する社会環境がつくられ、優秀な若い人が医者を志すようになるでしょう。また一方で、医者もこの日に自らの社会責任と職業道徳について反省したり、考えたりすることができます。 4番目の提案は、全人代代表と全国政協委員は毎年12月に関係サイトに、自分がこの1年に行った職務を自主的に発表し、公衆からの監督を受けるようにするというものです。
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