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中国から見た北朝鮮の核と北東アの安全

北京大学国際関係学院教授 朱鋒

朱鋒教授
2月12日の核実験は朝鮮半島を再び危機に陥れた。当時の楊潔篪外交部長(外相)は同日直ちに駐中国北朝鮮大使を呼び、中国政府を代表して、北朝鮮の3回目の核実験に断固反対するとともに、北東アジアの安定と平和を脅かす北朝鮮の行動に対して強い不快感を伝えた。朝鮮半島の核問題をめぐる六カ国協議の武大偉・中国首席代表も、中国は北朝鮮の核実験に「最後の一分まで反対する」という談話を発表した。

変質させた3回目の核実験

中国は北東アジアの重要な構成国として、北朝鮮が核兵器の開発・保有に断固反対し、朝鮮半島の核問題の外交的、政治的な解決を実現するための6カ国協議を主宰していることは、中国の朝鮮半島非核化のプロセスに対する大きな貢献だ。2005年9月、同協議は北朝鮮とその他各国を説得し「共同声明」調印にこぎつけ、北朝鮮は核兵器の放棄を約束することによって、国際社会の段階的な制裁解除と対北朝鮮援助と関係正常化の実現を手に入れた。

北朝鮮の3回目の核実験は「六カ国協議共同声明」に違反しているのはもとより、長期間にわたって朝鮮半島の核問題の政治的、外交的な解決の実現を希求してきた中国にとっても、無情かつ深刻な打撃だった。北朝鮮が実施した今回の核実験について北朝鮮が主張する理由には全く根拠がない。なぜなら、北朝鮮が昨年12月13日に人工衛星を打ち上げた件について、国連安保理は北朝鮮制裁のための2087号決議を採択しているからだ。人工衛星打ち上げは北朝鮮が主張する正当な「主権」では全くなく、国連安保理は2006年、2009年にそれぞれ北朝鮮の人工衛星、長距離ミサイル発射実験を禁止する1718号決議、1874号決議を採択している。こうした背景下で、北朝鮮は核実験と長距離ミサイル発射実験を実施することによって、国際社会が求める北朝鮮の核放棄と大量殺傷兵器開発の停止という正義の呼び掛けに応えようとしている。これは金正恩(キム・ジョンウン)政権が政権の安定と権力継承の合法性誇示のために、「核保有国」の実質的な地位を核実験によって強化することをいとわず、さらに国際社会に北朝鮮が「核保有国」であるいう現実を受け入れさせようとしていることを意味している。

昨年4月、金正恩政権は憲法を改正し、北朝鮮は「核保有国」であることを正式に明記した。北朝鮮国内向けには、核武装は前指導者・金正日(キム・ジョンイル)総書記の三大遺産のひとつだと宣伝している。こうした事象はすべて、金正恩時代の北朝鮮がすでに核放棄の約束も意図も放棄することを公にし、国際社会に北朝鮮が「核大国」の地位にあること認めさせるために、敵対的な政策を採用する方向に転換することをいとわないと明白に物語っている。北朝鮮は3回目の核実験実施と同時に、六カ国協議への不参加と、北朝鮮非核化問題に関する二国間、多国間協議を問わず拒否することを宣言した。金正恩政権は一歩一歩、自らの既定の目標に向かって歩んでいるように見える。しかし、こうしたやり方、考え方は危険なだけでなく、北朝鮮に如何なる実質的な利益をもたらすことはあり得ない。

 「中国の役割」はどこにある

北朝鮮が3回目の核実験をした後、多くのメディアは、中国は北朝鮮に効果的な影響力を行使できなかった、あるいは、正常化している中朝関係が北朝鮮の「核冒険」を「鼓舞している」と指弾したが、このような見方は公正さを欠いている。  2002年10月に、第二次朝鮮半島核危機が勃発して以来、北朝鮮の核問題において、中国は一貫して「仲裁」と「対話促進」を推進する最も積極的な勢力であり、北朝鮮に「中国モデル」を学び、改革開放を実行する時間とチャンスを与えてほしいと希望した。特に、2011年12月17日、金正日総書記が突然逝去した後、新たな権力に交代する過程で、中国は、一方で、米国、韓国に対して北朝鮮との接触と対話を積極的に勧告し、一方で、関係各国が北朝鮮の権力移行に対抗的、あるいは破壊的な政策を取らないように警告した。2012年2月29日、米国と北朝鮮間の「二二九協議(北朝鮮がウラン濃縮や核実験・長距離ミサイル実験の一時停止に同意)」の調印に、中国は心血を注いだ。

2004年6月23日、中国の提唱によって北京で開催された朝鮮半島核問題6カ国協議。当時の中国側首席代表は当時外交部副部長(外務次官)だった王毅現外交部長(左から3人目)(新華社)

しかし、同年4月12日、北朝鮮が人工衛星を打ち上げ、「二二九協議」を元の木阿弥にしてしまった。4月16日、国連安保理で北朝鮮を非難する議長声明を採択した際、中国は賛成票を投じ、北朝鮮の言行不一致に強い不快感を表明した。

ポスト金正日時代、中国の対北朝鮮政策は主に以下の3つの面に集約される。一つは、北朝鮮の国内経済建設政策を積極的に支持・支援し、金正恩第一書記が打ち出した「弾丸と米は同じように重要」という新しいスローガンを支持し、北朝鮮が中国モデルの改革開放の道を歩むよう促してきた。そのため、中国は対北朝鮮援助の枠内で、政府の「知力援助」プロジェクトの増強に大いに力を入れ、中国政府の出資によって、長春、大連、瀋陽、丹東に北朝鮮政府職員の専門的な育成基地を設立した。また、中国の産業界も「北朝鮮進出」に興味を示し始めている。

もう一つは北朝鮮と韓国、米国との接触と対話を積極的に推進し、半島非核化を実現する外交政策の重点を六カ国協議から米朝・韓朝の対話と接触に利便と援助を提供する方向に転換した。同時に、中国は、北朝鮮が核実験を含む挑発行動を取らないように説得と影響力行使を続けている。中国政府が北朝鮮との政治的、経済的な協力を「挑発回避政策」とのリンクは、中国が北朝鮮に影響力を行使できる重要な切り札に違いない。  3つ目は、米・日・韓同盟の枠内における対北朝鮮政策の協調動向を注目し、3カ国が北朝鮮の権力の安定的な移行を実質的に破壊し、北朝鮮内部の情勢を悪化させる可能性のある行動を取らせないように努力することだ。  北朝鮮の3回目の核実験は、「朝鮮半島の核問題」と「北朝鮮問題」が不可分だという本質を浮き彫りにした。金正恩政権の国内体制の改革がなければ、長年患ってきた「主体思想」と「先軍政治」に依拠するという持病から立ち直れず、また、北朝鮮が積極的に国際社会と妥協し、国家発展の新たな道を探さなければ、「朝鮮半島の核問題」の解決にはいつまでも突破口が見つからない。北朝鮮の変革をいかに推進するかということは、中国一国だけでは実現できない。現在、朝鮮半島危機の深刻化という新たな現実に直面し、中国、米国、日本、韓国、ロシアなど諸国がより協力的、協調的な役割を果たす対北朝鮮政策を立案し、実行に移すことを呼び掛けている。

単純な制裁と圧力に懐疑的

現在、国連安保理が実行している対北朝鮮制裁は、北朝鮮の核脅威拡大に対処するために取らなければならない行動だ。しかし、単純な制裁と圧力だけで、有効かつ迅速に、現実的に核問題を解決できるかと言うと、依然として懐疑的にならざるを得ない。国際社会の北朝鮮に対する制裁と圧力はすでに数十年を経過しているが、朝鮮半島の安全保障情勢は依然として深刻だ。中国はすでに北朝鮮に明確な態度を表明している。国際社会も中国と共に、北朝鮮との接触、対話の道を模索する努力を重ね、できる限り北朝鮮の内在的な改変を促し、影響を与えるべきだ。こうしてこそ、直接的な軍事衝突の発生と北東アジアの経済的繁栄と安定の破壊など核問題による最悪の事態を避けることができる。北東アジアの繁栄と安定を積極的に維持することは、地域内のすべての国の共同責任だ。

2013年1月22日、ニューヨークの国連本部で、安保理が北朝鮮の人工衛星打ち上げに対する非難決議を全会一致で採択したのを受けて、対話と交渉による朝鮮半島問題の平和的解決に希望を表明する李保東中国国連代表(新華社)

今後の朝鮮半島の最大の不確定要素は依然として、北朝鮮の内部情勢と金正恩政権の内外政策だ。北朝鮮は真に国民経済の立て直しと、金正日時代に打ち出した「強盛国家への大門を開く」という目標を実現しようとすれば、必ず対内的に体制改革を推進し、対外的には、韓国、米国、日本などの国々との関係を緩和しなければならない。北朝鮮は「核挑発」を放棄し、核放棄の誠意と決意を示してこそ、はじめてその他の国々との交渉と接触のプロセスを再開することでき、その内在的な発展のために必要な建設的な外部環境を整えることができる。北朝鮮がひたすら核兵器で対抗することによって、その核兵器保有の合法性について国際社会の承認を迫り、対話と交渉に有利な新たな形勢を獲得しようとしているのであれば、北朝鮮に一層不安定な状態をもたらすだけだろう。北朝鮮による実質的な核放棄のプロセスがなければ、実り多い国際的な和解もあり得ない。

北朝鮮の将来は二者択一の葛藤から生まれる可能性が高い。一つは「核保有」の条件下で、内在的な改革による限定的な開放実現だ。しかし、それでは国際社会が北朝鮮に対する孤立化、圧力政策を放棄することはあり得ず、朝鮮半島情勢はこれからも緊張と動揺が続くだろう。もう一つは、「核放棄の交渉」のプロセスで、国際環境を改善し、国内の体制改革と対外開放を加速し、国家の安全保障と発展を確実に実現させる選択肢だ。核問題に対する姿勢が、相当程度、北朝鮮が結局どのような方法で「改革」を実現しようとしているのかを、試し、決定するだろう。ただ、どうであれ、全面的な核放棄がこうした改革の結果であることは確かだ。

 

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