若者に流行する新型自転車
北京はかつて「自転車王国」と言われ、1980年代の自転車総台数は500万台を超えたが、発行された自転車の登録証明番号に至っては、千万台まで達している。
私は1979年に『人民中国』で仕事を始めて以来、毎日自転車で北京の街を15キロ斜めに駆け抜けて通勤している。30年以上が経つが、私の目に映る北京の街の自転車は減り、自動車が多くなった。さらに電動自転車が増え、今では自転車族は希少種となってしまった。
しかし、ここ2年ほど、若い男女が目にも鮮やかな格好良い自転車に乗り、さっそうと行く姿を目にするようになり、彼らが通り過ぎるたびに、私の目はくぎ付けとなった。しかし不思議なことに、彼らの自転車にはブレーキシステムが見当たらない。私はある時、好奇心に耐えかね、彼らを追いかけて、その自転車はどうやってブレーキをかけるのかと聞いた。「この自転車はギアが固定されているので、漕がなければ止まるんです」と、彼らは教えてくれた。この種の自転車は「固定ギア」と呼ばれている。
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北京で4月に行われた民間の「グリーンサイクリング活動」にも、「固定ギア」自転車が多く見られた |
自分の「愛車」で遊ぶ田垠さん |
後に、私は「固定ギア」自転車の愛好者である会社員・田垠さんと出会った。24歳の彼は通勤の際、天気が良いと「固定ギア」を、天気が悪いと自動車を使っている。休みの日にも時に友人たちと共にこの自転車で遊びに出かけ、ガールフレンドとも「固定ギア」がきっかけで知り合った。彼いわく、中国の「固定ギア」自転車愛好者は、地域によって傾向が異なるとのこと。北京ではスピードを求める傾向があり、広東では技巧を競う傾向があるそうだ。
私の家の近くにさほど大きくない自転車屋さんがあるが、そこの主人の話では、「固定ギア」自転車は価格も安いため、よく売れるという。安いものは600元(1元は約16円)そこそこで買えるので、1カ月で20台近く売れる。買い手はみな20歳前後の若者で、当然高価な自転車もある。田垠さんは、冬はあまりに寒いので、「愛車」の炭素鋼の車輪が脆くなり、壊れやすいため、「固定ギア」自転車には乗らないという。車輪一つで5000元もかかるというのだ。
自転車は中国で、今や単なる乗り物ではなく、健康、娯楽、ファッションの手段となりつつある。
編集部記者・劉世昭
1948年四川省成都生まれ。 1979年『人民中国』のカメラマンとなる。かつて京杭大運河の取材のため、北京から浙江省杭州市まで5000キロ余を自転車で走破したことがある。 さらに徒歩で長江の三峡を取材し、最近は世界遺産の連載を担当。 34年間、自転車通勤を続けた総走行距離は20万キロを超える。 |
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人民中国インターネット版 2013年7月