世界各地の中国系経営者、いわゆる「華商」が一堂する「第9回世界華商大会」が、9月15~17日の3日間、関西の神戸・大阪で開かれた。初の日本開催で、中国本土の開催以外では過去最高の約3600人が世界各国・地域からやってきた。日本からは千人以上が参加した。
1991年にシンガポールから始まった世界華商大会は、2年おきに催されてきた。世界各地の「華商」にとって、もっとも盛大なビジネス集会だと言ってもよい。兵庫県知事と大阪府知事をはじめ関西政財界のトップのほとんどが開幕式に出席し、「華商」の経済力に対する日本側の関心の高さを示していた。
悲願だった神戸での開催
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阪神・淡路大震災を記念するため、毎年1月17日、神戸市の東遊園地では「1・17希望の灯り」が点灯する。48人の華僑・華人もこの地震で犠牲となった |
メーン会場となった神戸は、「世界華商大会」の誘致が悲願だった。誘致に努力してきた神戸華僑総会名誉会長の林同春さん(82歳)は「阪神・淡路大震災を日本人といっしょに乗り越えた神戸の華僑・華人の姿と、復興した町並みを、同胞に見てほしい」と語る。
9歳のころ、中国・福建省から神戸に渡ってきた林さんは、貿易商として成功した。戦火で消失した神戸中華同文学校の再建に私財を投じたり、中日国交正常化後、両国の若者がいっしょに車で中国を横断する旅を催したりするなど、戦後の中日友好促進に尽くしてきた。
48人の華僑・華人が犠牲になった1995年の阪神・淡路大震災では、神戸華僑総会の会長として、被災者支援に奔走した。あれから12年。開幕式で「一人一人の心が強く結びつくことが一番大切。大会で生まれる新たな絆を持ち帰ってもらいたい」と挨拶した。
「落地生根」
神戸の南京町は、横浜中華街、長崎新地中華街と並んで日本の三大中華街の一つ。南京町には神戸華僑歴史博物館があり、1868年の神戸開港以来の、中国人の渡来の歴史が展示されている。
館内には「落地生根」という大きな書が掛けられている。「落地生根」とは、一人の人間が、遥か故郷を離れ、海を越えて異国の地に渡り、その土地の人たちと睦みあい、その地の習慣にもなじみ、家業を興し、子や孫に囲まれて円満な家庭を築き、やがてはその地の土に帰することを言う。
明の時代、1405年から1433年にかけ7回にわたり、南洋やインド、アフリカにまで遠征した鄭和の大航海の後、商売や開拓のため多くの中国人が東南アジアなどへ移住し始めた。いま、世界の168カ国・地域に8700万人の華僑・華人が暮らしている。その経済力は2兆ドルとも言われ、「海外華人経済圏」を形成している。中国はこの30年間、改革・開放政策を進めてきているが、導入された外資のうち、6割以上が海外の「華商」からのものだという。
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