この伝説についてはいくつかのバージョンがあるが、中国で一般的に知られているのは次のようなもの。
弓の名手・后ゲイはある日、西王母(西方の崑崙山に住むとされる中国の伝説の女神)から飲むと仙人になれるという「仙薬」をもらった。しかし后ゲイは妻の嫦娥一人を残して仙人になるわけにはいかないと、その薬をしばらく保管しておくよう嫦娥に渡した。ところがあるとき、その薬が他人に奪われそうになり、嫦娥はあわててそれを飲んだところ、天に舞い上がってしまった。夫・后ゲイのことが気がかりだった嫦娥は、人間の世界にもっとも近い月に住むことにした。
嫦娥が天に舞い上がったとき、一匹のウサギを抱えていた。そのため、そのウサギも一緒に月に昇り、「玉兎」(月にいる白いウサギ)になった。玉兎はいつも嫦娥のそばに座り、杵でつついて不老不死の薬を作っている。 このほか、嫦娥は薬を盗んで月へ逃げたという説もある。
月についてはもう一つ、呉剛という人物の伝説も有名だ。
毎日遊び暮らしていた呉剛は、あるとき突然、仙人になりたいと家を飛び出した。しかし修行中に仙人を怒らせたため、月へ流刑となり、高さ500丈以上もある桂の木を切り倒しに行かされた。ところがこの木はいくら切り込みを入れても、自然と元通りになる力があり、永遠に切り倒すことができない。そこで呉剛は、今でも月で一時も休まず、桂の木を切り倒しているという。
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