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就職にたちはだかる壁

 

大学生たちは就職活動において、さまざまな壁にぶつかっている。自分の希望と社会の需要とのギャップに、戸惑う学生も少なくない。

 

地域間のアンバランス

 

中国の大学生たちはみな、卒業後は経済が発展している東部の沿海部で就職したいと考えている。まだ発展していない西部で働きたいと考える人は少ない。このため、大学生の就職は競争がますます激しくなる。

 

チャンスに溢れる東部

 

山東師範大学で行われた西部支援プロジェクトの説明会(新華社)

  山西財経大学で貿易経済学を専攻する劉永霞さんは、卒業後は長江デルタ地域で働こうと、上海、杭州、嘉興などの大・中都市で就職活動に奔走している。

 

50人いるクラスメートの大半は、北京、上海、広州、深圳といった主要都市での就職を希望しているという。もしこれらの都市で仕事が見つからなかったら、無錫や紹興といった主要都市の周辺の「二級都市」を選ぶ。中・西部の省都よりも東部の県城(省・自治区の下に位置する「県」の中心の町)で就職したいという人さえいる。

 

「山西財経大学は、東部で働く人を養成するために学生を募集しているのではないかと思うくらいですよ」と劉さんは話す。

 

大学生が就職活動でもっとも重視するのは、給与と昇進の可能性だ。これに関しては、東部のほうがまちがいなく条件は整っているだろう。

 

東部には、北京、上海、天津という三つの直轄市、深圳、珠海、廈門などの多くの経済特区が集中している。また江蘇、浙江、広東など、経済が発展している省もある。多国籍企業も、まずは東部から中国への進出をスタートさせる。このため、さまざまなチャンスや個人が発展する可能性に満ち溢れているのだ。

 

計画経済の時代は、西部で働いても、環境が比較的厳しいだけで、給与にそれほど差はなかった。しかし現在のような市場経済の時代は、東部と西部の発展が不均衡であるため、同等のポストでもその差は大きい。たとえば公務員の給料は、地域によって数倍もの違いがある。

 

しかも貿易やメディア、外国語などを専攻した大学生にとっては、西部には就職先が少ない。もし西部で就職するのなら、自分の専攻とは異なる仕事に就き、一から学ばなければならなくなる。そうなったら、大学の四年間で学んだことは、むだになってしまう。

 

このように考えると、大学生が東部で就職することは、過度に非難すべきことではなく、理性的な選択だといえよう。地域経済の発展が不均衡であることが、このような状況を生み出したのだ。

 

経済的プレッシャーから

工商管理の修士号を取得した高亜飛さんは、故郷である安徽省の農村に戻り、養豚場を作った。そして、村人たちといっしょに養豚専門合作社を立ち上げ、当地の養豚事業の発展を推進している(NEWSPHOTO)
 国内メディアは最近よく、次のように報道する。「辺ぴな農村出身の大学生の一部は、同郷の人たちが出し合ってくれたお金で大学に進学したのに、卒業後、故郷へ帰ろうとしない。そのため、立ち遅れた村はあいかわらず豊かになる推進力に欠け、村の教師はあいかわらず足りない」

 

しかしこういった大学生の道徳心を責めてはいけない。発展した地域で自分の発展を求めるのは、個人の自由なのだから。もちろん、貧困地域出身の大学生たちも、故郷へ戻って仕事をしたいと思っていないわけではない。ただ、彼らには大きな経済的プレッシャーがあり、それが彼らを東部に向かわせるのだ。

 

中国では1988年まで、大学の学費は無料だった。89年になると、年間200元という学費を形式的に徴収するようになった。96年からは、全面的に学費を徴収するようになり、最初の2000元から現在は平均5000元にあがっている。宿泊費用も、最初の270元から現在は1000元にあがり、これに生活費を加えると、4年間で一人あたり4万元ほどかかる。

 

一方、農村部の家庭の平均年収は約3600元。このため、貧困家庭の大学生の多くは、親戚からお金を借りたり、教育ローンを利用したりして学業を修める。卒業後は借金返済のプレッシャーを抱えるため、給料のより高い東部で仕事を探そうとするのだ。

 

西部での就職を奨励

 

大学を卒業後、農村で村人たちにキノコの栽培方法を教える馮進国さん
 大学生が東部に向かうことは非難すべきことではないが、国家としては、人材のアンバランスにより経済発展のアンバランスが深刻になるという問題を考えなければならない。政府はこれまでにさまざまな政策を出し、大学生を西部で就職させようと導いている。

 

2005年には「国家助学金」や「国家奨学金」の制度を整えた。「国家助学金」は貧困家庭の学生を対象に、毎月150元、一学年度で10カ月分を支給する。「国家奨学金」は毎年5万人を対象に、年間一人あたり4000元を支給する。これらは返済の義務はない。

 

しかし「国家助学金」や「国家奨学金」を受けることができる大学生は60万人にもみたず、年間8億元の経費でははるかに足りない。そこで、各大学もそれぞれ優遇措置や奨励制度を設けたり、学校の内外で働きながら勉強するチャンスを提供したりして、貧困家庭の大学生の経済的プレッシャーを和らげている。

 

このほか、1990年代以降、各地の地方政府や大学は、一連の西部支援プロジェクトを実施し、さまざまな優遇条件をつけて大学生たちが西部で就職するのを奨励している。

 

優遇条件はそれぞれ異なるが、一般的には、西部で一定期間働けば大学院に推薦する、大学院入試や公務員試験の際に点数をプラスするなどだ。大学生が西部へ行って就職するのは、ほとんどがこの優遇条件のためで、契約期間が満了すると、ふたたび東部に戻って進学したり就職したりする。

 

しかし動機はなんであれ、西部へ行こうという大学生は増えている。かつてに比べると倍以上だ。西部建設の推進に大きな役割を果たしていることはまちがいないだろう。しかもそれぞれ異なった目的で西部へ向かった大学生たちの多くは、思いもかけなかったことにそこで自分の価値を見出している。

 

西部支援プロジェクトに志願して西部にやって来たある女性は、就職が困難だったため、とりあえず西部に行って一年ほど働き、そのあとまた東部に戻って就職しようと考えていたと話す。しかし西部に来てみると、自分が思っていたほど立ち遅れても貧しくもなく、また自分のような大卒の人材は非常に重視され、各職場が争って手に入れようとしたことに驚いた。そこで彼女は、そのまま西部に残って仕事をすることに決めた。

 

就職希望地

1位 北京85%  2位 上海35%  3位 広州29%  4位 深圳26%  5位 南京21%    

6位 天津18%  7位 青島13%  8位 杭州8%    9位 大連4%




姫媛媛(25歳) 

  2004年、山東財経学院卒業。専攻は会計学
 

陝西省の出身なので、卒業後は省都の西安市で仕事を探しました。故郷にも近いですし、当時、西安市の発展は勢いがよく、経済開発区を四つも建設していたので、就職の機会が多いだろうと考えたのです。

 

実際そのとおりで、西安市で順調に仕事を見つけることができました。ある会社の会計職に就いたのです。そこで一年ほど仕事をしましたが、北京のほうが発展のチャンスは大きいと思い、上京しました。

 

しかし北京での就職はあまり順調ではありませんでした。最初に就職した会社は、入社してまもなく企業再編のために仕事がなくなりました。幸いなことに、友人がいまの会社を紹介してくれましたが。

 

現在の給料は、西安にいたときの二倍以上です。そのかわり、仕事量が多く、プレッシャーも大きい。でも、たくさん仕事をして、プレッシャーもあってこそ、人は成長できるのではないでしょうか。

 

Q 仕事を探すのは難しいと思いますか。

A 思いません。

Q あなたの理想の職業は何ですか。現在の仕事は希望通りですか。

A 私が理想とする職業は上級財務管理者です。いまはまだ、この目標には達していません。

Q 現在、大学生が就職難に直面している主な原因は何だと思いますか。

A 社会経験が乏しいうえに、自分の位置をしっかりと見定めることができていないからだと思います。

 



 

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