監督インタビューはこちらへ
効果音ありの発表会
|
発表会が行われたスタジオ | 映画の記者発表会に参加しました。日本でこの種のイベントに参加したことはあるのですが、中国では初めての経験。作品は『情謎』です。制作中は秘密主義が徹底され、人気女優スー・チーが主演する愛情サスペンスという以外、ほとんど情報が伝わって来なかっただけに、発表会には100名を超す記者が詰め掛けました。私も、発表会が日本のものとどう違っているのかなども含めて、とても楽しみに会場に向かいました。
発表会は、民間大手映画・テレビ番組制作会社である光線伝媒(ENLIGHT MEDIA)社のスタジオで行われました。日本では試写室か貸しホールが使われることが多いような気がします。ステージの後方は全面がスクリーンになっており、そこにポスターや予告編、ビデオメッセージなどを流しながら、発表会は進められました。
司会者が監督や出演者に質問する形で進められるのは、日本でも同じですが、その背景に効果音が使われるのは日本にはないスタイルです。日本のお笑い番組などで、後から編集でつけられるような「チャンチャン」とか「ポワ~ン」というような効果音が、出演者の答えに突っ込むように流されるのは新鮮です。
ショーン・ユーのプロ根性
この日は、監督のキャロル・ライ、プロデュースを担当したゴードン・チャンのほか、出演者のショーン・ユー、チェン・シューが登壇しました。予告編を上映し、監督や出演者が撮影秘話を紹介するなどの形で、3月8日の公開に向けて宣伝をするものでした。主演のスー・チーが所用のため姿を見せませんでしたが、ビデオメッセージが届けられました。
|
|
カジュアルなスタイルで登場したショーン・ユー |
司会者とも積極的にからみ笑わせる姿からは想像できなかったが、実はこの日は体調を崩していたという |
プロデュースを担当したゴードン・チャンは、「最初脚本を見せてもらったときに、これは面白いと思ったが、撮影は極めて難しいものになることが予想でき、私なら撮影できないと感じた」と紹介。もともとが脚本家出身の監督は、細かなストーリー展開が極めて重要な作品のため、難しい撮影になることを覚悟しながら、主演のスー・チーにはかなり演技的制限をかけたと振り返っていました。
一方、私はこの日初めて見たチェン・シューという俳優が印象に残りました。中国大陸部で大ヒットしたテレビドラマ『鉄梨花』に主演した人気女優です。ダンスの基礎もあり、国家話劇院で舞台俳優としてのキャリアを積んだだけあって、劇団のスター女優役を好演していると、監督も彼女の演技に自信を見せていました。美しく、劇団のスター女優という輝きを持ち、優雅な身のこなしができる俳優というのが選抜理由だそうです。確かにあいさつする時の立ち姿など、気品が感じられました。
|
|
優雅な身のこなしのチェン・シュー。話す言葉もはっきりしていてとても聞き取りやすかった |
登壇した4人のフォト・セッション。このあたりは日本と同じ |
また、スー・チーと共演できるならと、「ふたまた男」の役を引き受けたというショーン・ユーが、共演に緊張して酒を飲んで撮影に臨んだエピソードも披露するなど、精力的に作品を宣伝していました。聞くところによると、この発表会の後にはテレビや雑誌の単独インタビューに応じるなど遅くまで取材対応していたそうです。しかし、実は彼はこの日体調を崩しており、本来なら病院にいてもおかしくない状態だったと、後から知りました。
日本との違いといえば、発表会が終わった後、俳優に駆け寄って記念撮影をねだる女性が何人もいたのには驚きました。日本ならまずあり得ないことです。ファンの代表なども来場していたのでしょうか。その後、日本で言うところの「囲み」インタビューも行われました。中国で芸能ニュースをご覧になったことがある方なら、いろいろなメディアのマイクが差し向けられる中、スターが質問に答えるという例のスタイルをご存じのはずです。
|
発表会の後、ステージに上がって記念撮影をねだる人がいたのには驚いた |
|
囲み取材に応じる出演者 |
登壇した監督、プロデューサー、出演者の話を総合すると、『情謎』は、サスペンス風のストーリー展開で、女性の心の奥の愛憎を描いた作品ということのようです。この作品は、制作中の宣伝をほとんど行わないなど、秘密主義を貫いてきました。謎解きの部分がある作品だけに、ストーリーがもれることを嫌ったのでしょうか。それだけに、この日主演のスー・チーが姿を見せなかったのも、まさか広告業界で言うところのティーザー(じらし)戦術ではないだろうと、そちら方面に対する「疑念」もわいてくるのでした(笑)。そこで、時間をいただいて監督に単独インタビューしました。是非、次ページもご覧ください。
作品データ |
『情謎』(原題/大阪アジアン映画祭で上映時の邦題は『2番目の女 The Second Woman』)
プロデュース:ゴードン・チャン(陳嘉上)
監督:キャロル・ライ(黎妙雪)
出演:スー・チー(舒淇)、ショーン・ユー(余文楽)、チェン・シュー(陳数)、シー・メイチュアン(奚美娟)
時間・ジャンル:107分/愛情・サスペンス
ストーリー:双子の姉妹の妹・恵宝は舞台女優だが、ある日姉の恵香が代役で出演し主演男優の方亦楠と共演する。そして、それぞれが方と関係する中で姉妹の間に亀裂が生まれ、お互いがお互いを疑うようになる。そしてある夜、姉が行方不明となり、妹の行動は奇怪さを増していく…。3人の男女の間に起こる物語と劇中劇をシンクロさせつつ、サスペンスタッチで描く女の心の奥底に潜む愛憎に焦点を当てていくという、娯楽映画でありながら、ひと味違う風格を持つ作品。とりわけ、双子の姉妹と、劇中劇の登場人物を含め1人5役を熱演するスー・チーが注目される。また、姉妹を同時に愛する男をショーン・ユーが演じている。意外にも二人は初共演だという。監督は『恋の風景』『金魚のしずく』のキャロル・ライ。 |
|