神秘のシャングリラという魅惑的な名を耳にして久しい。その魅力とはいかなるものなのだろうか。
シャングリラ県はもともと中甸と呼ばれていた。標高約3400メートル、面積11613平方キロメートルの土地で、雲南省、四川省、チベット自治区の境に接する迪慶チベット族自治州の中部に位置する。チベット族を中心に、漢族、ナシ族(納西族)、イ族(彝族)、ペー族(白族)など10を超える民族、合計13万人が住んでいる。山林がびっしりと広がっているが、広さのわりにこの土地の住民は多くはない。
「シャングリラ」という言葉は、チベット仏教の経典に見えるシャンバラ王国にその源が求められ、チベット仏教の最高境地とみなされている。アメリカの作家ジェームズ・ヒルトンの小説『失われた地平線』に描かれた人間の楽園、桃源郷のようなシャングリラは、中甸の自然、文化、生活によく似た部分がある。このため、かの小説に描かれているシャングリラは、雲南・チベット高原にある中甸であると人々は信じている。歴史的にはチベット語で建塘と呼ばれ、言い伝えによると、四川省の巴塘、理塘と並んで、チベット王の三人の息子の領地だったという。1957年9月に迪慶チベット族自治州が成立して中甸は州都となり、2001年に名前をシャングリラ県とあらためた。
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