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伝説の桃源郷シャングリラ

 

湯堆村の黒陶

 

 さまざまな黒陶製品
 シャングリラ県を出て、茶馬古道を北西に向かっておよそ30キロメートルほど走ると、湯堆村という歴史ある黒陶製作の村がある。乾熱河谷地域(気温が高く乾燥した河谷地域)に位置し、140数世帯、人口700人を超える村である。村人全員がチベット族で、うち22戸が専門で黒陶を製作している。

 

1970年代から90年代にかけて、雲南省の文物・考古の専門家が相次いで徳欽、シャングリラの多くの村で早期石棺墓の黒陶副葬品を発掘、出土した。中でも「大鑑耳」陶製の壷は、現在湯堆村で焼かれている黒陶と共通するところが多い。これを見る限り、2000年あまりも前の春秋・戦国時代(紀元前770~同221年)に、この地の原住民がすでに黒陶の製作技術を身につけていたということが推測できる。

 

ニーシー(尼西)を通るとき、道路の両側にたくさんの黒陶製作の工房が目についた。中にさまざまな黒陶製品が並んでいる。「シャングリラ竜巴湯堆土陶」という店の前で足を止め、黒陶製作の過程を見学した。

 

黒陶の製作は簡単そうに見えるが、実は10以上もの工程があり、使用する道具だけでも50種類以上を数える。まず風化した砂や石を細かく砕いた石粉を、白い粘土と赤い粘土と混ぜて原料をつくる。次にその原料の土を天日で干し、陶製の杵で細かく砕く。最後に土をふるいにかけ、かき混ぜ、こねて円状の陶土にする。ここからようやくさまざまな形の器の製作に入る。焼く過程も風変わりである。窯に入れて焼くのではなく、地面と垂直に支えられた薪の上に架けて焼く。陶器を焼きながら、絶えず薪の周りにリンゴの木の枝や栗の木の枝を加える。さらに通気性をよくして燃焼を助けるため、高く積んだ薪を長い棒で突いたりしなければならない。やがて薪が燃え尽きると、陶器も出来上がる。続いて速やかにおが屑の灰の中に入れ、色が黒に変わったら灰から取り出す。5分ほど冷やしてから、松の木の枝で熱いヨーグルトのうわずみや重湯を手早く陶器の内壁に塗りつける。水や油などが滲みこむのを防止するためである。こうして黒陶が出来上がる。

 

陶器の白地を作る職人
 店の主人のゲサンダワさんが、黒陶について紹介してくれた。「以前作った黒陶は、鍋、火鉢、土鍋、お茶を煎じる壺など多くが日常用品でした。黒陶の何よりのすばらしさは、通気性がよいということです。料理やご飯を一晩中いれたままにしておいても、腐ることはありません。今では簡単な日常用品のほかに、さまざまな手工芸製品も作れるようになりました。それが観光土産の目玉商品となっています」

 

ゲサンダワさんは小さな黒陶の釜を手に、こんな話もしてくれた。

 

「このミニ釜の原型はわれわれチベット族の民家にある三つの口のある釜です。現在でもチベット族の家庭で愛用されています。可愛らしいお土産用品として売り出したところ、観光客に非常に好評でした。食器、炊事道具、茶器、酒器および香炉、酥油ランプ、お茶を煎じる壺などチベット族地区の生活必需品も黒陶で作られるため、非常に大きな需要があります。黒陶製作で、一人あたり年に30000元から40000元を稼ぐこともできます」

 

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