もう一つの事件は、深セン版の立退き拒否事件である。立退きを拒否した張さんは、一年以上にわたり協議を続けた結果、2007年9月末、1千万元以上の補償金を受け取ることで、和解が成立した。
重慶の事件と異なる点は、現地の人民法院が強制執行をせずに調停し、それが功を奏したことだ。これは明らかに、人民法院が『物権法』の趣旨を踏まえ、個人財産を平等に保護したことによるものであろう。またこれは中国が、法治国家に向かって大きく前進していることを示している。
立退きは、合意による立退きと収用による立退きの二つに大別される。法律的には、この二つの立退き拒否事件は、平等な当事者間の合意による立退きに該当することは明らかだ。こうした立退きは、契約自由の原則に基づいて、当事者間で契約を締結すべきである。
にもかかわらず現行の『都市家屋立退き管理条例』は、開発業者が契約を締結することなく政府主管機関から立退き許可を取得することができ、また、住民がそれに応じなければ、人民法院に強制執行を申し立てることも可能とされている。このため公権力の不当な介入こそ、立退き紛争の主な要因の一つと指摘されている。
このため中国建設部(建設省)は現在、『物権法』の趣旨に基づいて『都市家屋立退き管理条例』の改正を検討し始めたという。
この改正作業は、公共の利益の意義を明確化し、合意による立退きにおける政府機関の立場を公平・中立にし、収用手続を規範化することによって、公共の利益のための土地収用に際し、立退く人の十分な利益保護を実現するものとして期待されている。
訂正
10月号の本欄で、「固定期間労働契約」について「期間の定めのない労働契約」と記しましたが、「期間の定めのある労働契約」の誤りでした。訂正します。
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