駐日外交官が経験した対外開放30年(2)

 

帰国荷物は減る一方

1980年代、外交官が一時休暇や赴任期間満了で中国に戻る時には、各種家電品、プラスチック製品、ハンガー、カーテンなど一切合財が詰まった段ボールを計10個ほど持ち帰るのが普通だった。当時、改革開放政策によって国内経済にやや変化が表れていたものの、物資が不足している状況は全く変わっておらず、製品の品質は押し並べて低く、国内市場は売手市場のままだった。

状況は1990年代に入ると激変した。王氏は、「中国経済の急成長が続いたことで、駐日本外交官に便宜がもたらされたのです。帰国時の携帯荷物の数がそれまでに比べ激減し、爽快な解放感が得られました。必要なものは何でも国内に揃っており、値段も安く、日本からわざわざ苦労して持ち帰る必要など無くなったのです」と語る。

外交官は、「解放」を手に入れると同時に、「家族や友人への帰国土産に何を持ちかえれば良いか」という悩みも抱えることになった。これまでなら、どんな土産品でも、国内の人にとっては珍しいものだった。しかし、1990年代以降は同じようには行かなくなった。カメラ、ビデオカメラ、金製ネックレスのような高級品以外の一般生活用品は、もはや贈り物の対象にならなかった。このため、多くの人が、帰国土産に何が妥当かを公使館に問い合わせるようになった。

「中国脅威論」の元凶は心理面でのアンバランス

中国経済の持続的な急成長に伴い、中日経済の格差は絶えず縮まった。1980年代には日本の僅か8分の一だった中国の国内総生産(GDP)は、1990年代末には4分の一に増大した。日本人は驚きを隠せず、脅威に感じ、「日本経済の空洞化」議論で一時期盛り上がった。日本企業による中国工場の投資設立を非難する人が現れ、日本国内経済の「空洞化」への懸念を煽り立てた。また、日本市場への中国製品の大量参入によって市場シェアを奪われたと愚痴をこぼす日本企業も多く見られた。

アジアの経済地図は、中国が改革開放以来わずか20年間で一変した。「それまで長い間、中国経済は立ち後れた状態が続き、中国人は貧しかったのです。一方、日本はアジアでトップの座にあり、悠々と眼下を眺め、大きな優越感を持ち、腹の中で中国人を軽蔑していました。中国の躍進に直面した多くの日本人は、アジアトップという自国の地位を脅かされる不安を感じ、自信を喪失し困惑し、中国との付き合い方が分からず困惑する羽目に陥ったのです」と王氏は指摘する。

一部の人々は、心理面でのバランスを失い、現実を認めず、焦慮感や畏怖感さえ抱き、将来中国に報復されるかもしれないと懸念した。ここから、「中国脅威論」が日本に生まれたのだ。右翼政治家の一部は、ここぞとばかりに日本民族の心情を煽り立て、惑わかし、「日本がこの先、中国の属国に成り果てるかもしれない」とまで言い出し、中国に対して「ノー」と言うべきだと吹聴した。総理在任中に6年続いた小泉純一郎氏の靖国神社参拝は、中日関係の従来のバランスが失われ、両国の力関係に歴史的な変化が生まれ、日本側の危機感が深まるという大きな時代背景のもとで起こった。

中国人の財布に着目する日本

中国経済の大躍進と同時に、日本人自身も、中国経済社会の急成長が日本にも極めて多くの利益をもたらしたことを実感している。小泉純一郎前総理も、「中国の発展は、脅威ではなくチャンスだ」と認めざるを得なかった。 2006年の中日貿易総額は2千億ドル、2007年には2千5百億ドルに増加し、中国は米国に取って代わり日本にとって最大の貿易相手国となった。まさに「事実はすべてを物語る」といえる。

王氏は、日本はここ数年、中国人の豊かな財布に目を付け始めていると指摘する。中国が旅行市場への開放度を拡大するにつれ、中国人観光者は日本にどっと押し寄せ、日本で消費するようになり、日本の商店は笑いが止まらない状況という。中国人は従来現金しか使えなかったが、今ではクレジットカード払いが可能となり、日本の中国銀聯カード加盟店舗・ホテルが急増、1万店以上に達している。30年前の東京には、「中国人の入店禁止」という看板を入口に掲げた店さえあった。中国人観光客は現在、どの店でも大歓迎を受け、多くの日本人が彼らの購買力に驚嘆している。

中日両国間の経済貿易や人々の往来が過去にないほど密接となったことは、日本経済の再生と発展に大きな促進作用を果たしている。日本にとって、中国は米国と同様、「一方が風邪を引けば、もう一方がくしゃみする」存在であり、中日経済貿易の相互依存の高さが伺える。

日本自身の発展と地域的・世界的役割との関係において、日本が中国を頼りとすべき、或いは中国と調整すべき問題は少なくない。中国はもはや1960、1970年代の中国ではなく、中国の重み、地位、影響は日ごとに増大しており、中国との対立は中日両国にとって害あって益なしという事実を、日本は十分認識している。

 

駐日外交官が経験した対外開放30年(1)

 

「人民網日本語版」 2008年11月10日

 

 


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